円錐管系統のリップ・リード楽器の名。語義は〈小さな角笛〉。古くは中世からバロック時代にかけて,この名の木製吹奏楽器があった。今日,近代的な金管楽器として存在するコルネットは19世紀起源で,昔の同名楽器と直接の関係はない。
(1)古楽器のコルネットcornet(t) ツィンクZinkともいう。丸棒または八角棒のような形で,直管のものと少しくねったものがある。歌口はカップ状が普通。前面の管壁に指孔が縦に並んでおり,その開閉で音を定める。教会でも世俗的合奏でも用いた。
(2)近代以降のコルネットcornet 郵便馬車などの信号用であった小型のポストホルンを改良し,弁をつけた金管楽器。弁の方式が楽器自体の別称にもなり,コルネタ・ピストンまたはピストンともいう。トランペットより音は柔らかく甘い。歌口はカップ状でやや深い。変ロ調が基調のものが多いが,他の調のものもある。当初ダンス・バンドで愛用され,やがて吹奏楽に入った。イギリス様式のブラス・バンド(金管楽器と打楽器だけのバンド)では,10人ほどのコルネットが主役を占める。管弦楽での使用は現在まれであるが,一時期はトランペット以上に重用されたこともある。
執筆者:中山 冨士雄+関根 裕
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コルネットとよばれる楽器には次の2種類がある。
(1)cornet(英語) Kornett(ドイツ語) cornet à pistons(フランス語) cornetta(イタリア語) ホルン系の金管楽器。「コルネット」の語は、ホルンを意味するコルノcornoに、小ささを示す語尾をつけたもの。トランペットに似た形で音域も同じであるが、トランペットに比べて円錐(えんすい)管の占める割合が大きく、倍音が少ない柔らかな音が出る。19世紀に郵便馬車の発着の合図に使われていたポストホルンにバルブ装置をつけてつくられ、一時はトランペットをしのぐ勢いであった。ポストホルンは中世の狩猟用ホルンを小形にしたものである。
(2)cornett(英語) Zink(ドイツ語) cornet à bouquin(フランス語) cornetto(イタリア語) ツィンクともよばれる管楽器。動物の角(つの)にいくつかの指孔をあけたペルシアの楽器が、10世紀ごろヨーロッパに伝えられ、木や象牙(ぞうげ)でつくられるようになったもの。19世紀まで用いられたが、とくにルネサンス、バロック時代(15~18世紀)には、その柔らかな音色を生かして、歌の伴奏を中心として教会音楽に盛んに使われた。
[前川陽郁]
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…中国で軍楽等に用いられた角(かく)や,ユダヤ教のショファル等がそれで,前者は仏画の奏楽場面にも登場し,日本の阿弥陀来迎図にまで及んでいる。洋楽のホルン,コルネット等も金属製になってはいるが,角から来た名であり,ビューグルは〈牛飼いの角笛〉という意味のフランス古語に由来している。これらの多くは放牧,狩猟,警備,軍事等に関連して信号用などに,あるいは宗教や呪術に関連して用いられてきた。…
※「コルネット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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