サトウヤシ(その他表記)sugar palm
Arenga pinnata (Wurmb.) Merr.

改訂新版 世界大百科事典 「サトウヤシ」の意味・わかりやすい解説

サトウヤシ
sugar palm
Arenga pinnata (Wurmb.) Merr.

ヤシ科高木で,砂糖をとるヤシとして有名である。幹は高さ15~30m,直径40~65cm,黒色で,表面はたいへん粗い。葉は羽状全裂で長さ6~12m,羽片は細長く,先端は切頭歯状で裏面灰白色。穂状花序は長さ1~3m,花は雌雄同株果実は核果で扁球形,長さ3~5cm,黄褐色に熟し,なかに2~3個の種子がある。インドからマレーシアに分布し,アジアの熱帯に広く栽培されている。属名Arengaマレー半島の古い現地名。花序の液汁から砂糖,ヤシ酒,酢をつくり,新芽の褐毛は点火用ほくち,若葉原住民のタバコの巻紙用にする。葉鞘(ようしよう)の黒い繊維はロープや刷毛をつくり,幹の内部の髄からデンプンをとり,幹は水道管とする。また果実の果皮部は,冷やして砂糖をかけて食べると美味である。砂糖をとるには花序の花軸を切り,流れ出る甘い液を,切口に結びつけた竹筒に集める。この液に石灰を加えて煮沸し,できたものが粗製の赤砂糖である。またこの液を4,5日発酵させて,蒸留するとヤシ酒ができる。

 奄美大島以南には本種の仲間のクロツグA.engleri Becc.を産する。クロツグは高さ2~4mの低木で,幹は黒い繊維で密におおわれている。葉は長さ3mぐらいで裏面は灰白色。肉穂花序葉腋ようえき)からでて橙色,多くの枝を分岐する。果実は球形,橙色に熟し,径約2cm。観賞用とするほか,茎のシュロ毛は結束用または縄索をつくる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトウヤシ」の意味・わかりやすい解説

サトウヤシ
さとうやし
sugar palm

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)クロツグ属の1種Arenga pinnata Merr.の和名。また、オウギヤシ、サトウナツメヤシ、チリーヤシなど、砂糖をとるヤシの俗称。やし酒(ツデーtoddy)にもするので酒ヤシtoddy palmの名もある。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サトウヤシ」の意味・わかりやすい解説

サトウヤシ(砂糖椰子)
サトウヤシ
Arenga pinnata; sugar palm

ヤシ科の高木。インドおよびマレーシア原産。高さ 20mにもなり,大きな羽状葉をつける。花序は葉腋から長く垂れ下がる。雌雄同株で,通常は雌雄花とも同一の花序につく。花には特有の臭気がある。つぼみの頃花序の軸を切って滲出する液を集め,石灰を加えて煮沸して粗製の糖をとり,また発酵させてやし酒 palm wineを造る。幹の内部にデンプンがあり,サゴヤシ同様デンプンをとるが品質は劣る。

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世界大百科事典(旧版)内のサトウヤシの言及

【ヤシ(椰子)】より

…葉鞘につつまれた新芽は柔らかく,東南アジア・マレーシア地域には野菜として利用される種が多数ある。若い花序を切ると糖液を分泌する種(サトウヤシが代表的)では,糖みつを採取したり,アルコール飲料を作るのに用いられる。果実が食用あるいは油脂源とされるものは多いが,なかでもココヤシ,アブラヤシナツメヤシ(イラスト)の3種が有名で,熱帯の重要な栽培作物となっている。…

※「サトウヤシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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