サミュエルソン(英語表記)Samuelson, Paul

デジタル大辞泉 「サミュエルソン」の意味・読み・例文・類語

サミュエルソン(Paul Anthony Samuelson)

[1915~2009]米国経済学者。近代経済学を数学的分析方法で解明し、新しい進路を開いた。1970年、ノーベル経済学賞受賞。著「経済分析の基礎」「経済学」など。サムエルソン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サミュエルソン」の意味・わかりやすい解説

サミュエルソン
Samuelson, Paul

[生]1915.5.15. インディアナ,ゲーリー
[没]2009.12.13. マサチューセッツ,ベルモント
アメリカ合衆国の理論経済学者。フルネーム Paul Anthony Samuelson。1935年シカゴ大学卒業,1941年ハーバード大学で博士号取得。その間の 1940年にマサチューセッツ工科大学 MIT経済学部教授に就任。1947年第1回クラーク賞を受賞。第2次世界大戦中から政府関係機関の顧問として財政経済政策に関与し,ジョン・F.ケネディ大統領のもとでは特別経済顧問として政策立案に貢献した。サミュエルソンの経済学的立場は,マクロ的所得分析とミクロ的価格分析とを新古典学派的立場から拡大,統合しようとするものであった。また経済理論の数学解析的分析に果たした役割も大きい(→新古典派総合)。現代最高の理論経済学者の一人で,博士論文をもとにした主著『経済分析の基礎』Foundations of Economic Analysis(1947)で第2次世界大戦後の近代経済学の一方向を決定づけるとともに,初めてジョン・M.ケインズの所得分析を本格的に導入。ほぼ 3年ごとに改訂版が出版され,日本をはじめ各国で広く用いられている『経済学』Economics: An Introductory Analysis(初版 1948,第13版 1989)によっても戦後の経済問題の考え方に大きな影響を与えた。経済学のあらゆる分野になんらかの影響を及ぼし,1970年にノーベル経済学賞を受賞。ロバート・ドーフマン,ロバート・M.ソローとの共著線形計画と経済分析』Linear Programming and Economic Analysis(1958)のほか多くの編著,論文があり,諸論文は論文集 5巻(1966~86)に収められている。

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改訂新版 世界大百科事典 「サミュエルソン」の意味・わかりやすい解説

サミュエルソン
Paul Anthony Samuelson
生没年:1915-2009

20世紀を代表するアメリカの経済学者。インディアナ州に生まれ,1935年シカゴ大学卒業,36年ハーバード大学修士,41年博士。マサチューセッツ工科大学(MIT)助教授(1940),準教授(1947)を経て,66年以来同大学のインスティチュート・プロフェッサー。主著《経済分析の基礎Foundations of Economic Analysis》(1947)は経済主体の行動を数学的に解析した古典で,経済学における数学の使用を不動のものにした。《経済学Economics》(1948,14版1980)は300万冊14版を重ね,20ヵ国語以上に翻訳された,経済学の最も標準的な教科書である。彼の名とともに知られる経済学の定理は数多く,《サミュエルソン論文集》全4巻(1966-77)には,消費者理論,生産者理論,厚生経済学,資本理論,国際経済学,財政学,金融論,人口論,経済学説史,数学,統計学など,経済学のあらゆる分野にわたる論文が収められている。〈経済学における最後のジェネラリスト〉と自他ともに認めるゆえんである。実物的経済理論をケインズ的財政政策で補完する〈新古典派的総合neo-classical synthesis〉の立場に立つ。1947年ジョン・ベイツ・クラーク・メダル受賞。70年ノーベル経済学賞受賞。アメリカ経済学会,エコノメトリック・ソサエティ,国際経済協会の会長を歴任。
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百科事典マイペディア 「サミュエルソン」の意味・わかりやすい解説

サミュエルソン

米国の近代経済学者。インディアナ州でユダヤ人家庭に生まれる。1940年マサチューセッツ工科大学教授,1985年名誉教授。数学を駆使して従来の経済理論を整理し,主著《経済分析の基礎》(1947年)ではヒックスの安定条件論を発展させ,動学的安定条件論を展開した。また乗数理論と加速度原理を結合して経済変動の過程を分析するマクロ経済学厚生経済学にも貢献。ケインズ経済学と新古典派経済学を総合する新古典派総合の創始者である。近代経済学の標準的教科書《経済学》は,世界中の大学で用いられた。1970年ノーベル経済学賞。
→関連項目安井琢磨

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世界大百科事典(旧版)内のサミュエルソンの言及

【安定条件】より

…この調整過程にしたがえば,一財の市場で需要曲線が右下がり,供給曲線が右上がりの標準的なケースでは,価格は時間とともに需給曲線の交点が与える均衡価格に収束することが知られる。 多数財の市場における安定性は最初J.R.ヒックスによって需要関数と供給関数の形状を用いての静学的方法によって分析されたが(静学的安定条件),P.A.サミュエルソンは先に述べたような形で調整過程の動学方程式を定式化し,安定のための十分条件を求めた(動学的安定条件)。彼の結果は後にK.アローやL.ハーウィッツらによって発展させられ,安定条件についてより適切な経済的な解釈が与えられるようになった。…

【景気循環】より

…投資乗数と,加速度原理,すなわち所得ないし産出量の増加が投資を誘発する関係の二つを結合して得られる乗数・加速度モデルは,線形モデルとして示される場合が多い。その代表がP.A.サミュエルソンのモデルである。またL.A.メツラーの在庫循環のモデルもこの型のものである。…

【財政学】より

…ここでは長期的にインフレないしデフレをともなうことなく資本と労働の完全利用と完全雇用を維持するためには,いかなる財政手段を通じて成長率をコントロールするかが問われた。
【新古典派総合の財政学】
 1960年代の後半になると,P.A.サミュエルソンがケインズ派のマクロ経済学の理論によって完全雇用が実現されたならば,古典派のミクロ経済学の理論は完全雇用経済では現実的妥当性をもつ有効な理論であるとし,ケインズ理論と古典派理論を総合した新古典派総合の経済学を主張した。財政学の分野では,マスグレーブRichard Abel Musgrave(1910‐ )が《財政理論》(1959)でこの立場を主張した。…

【市場均衡】より

…ワルラスの後継者V.パレートは,ワルラスの基数的な効用理論をより一般的な序数的効用理論によっておきかえることに成功し,スウェーデン学派のK.ウィクセルは,ワルラスによって扱われた資本,利子,貨幣の分析を多方面に発展させた。また1940年を前後してJ.R.ヒックス,P.A.サミュエルソンは一般均衡理論の体系に比較静学の方法を導入し,同じころ,W.レオンチエフは産業間の相互依存をデータ分析が可能な形に具体化した産業連関理論(産業連関表)を開拓した。以後の均衡分析の発展では,均衡解の存在についての厳密な証明,安定分析,動態経済の分析,ゲーム理論との対応の研究などに重要な貢献が多い。…

【社会的厚生】より

…しかし分配の公正に関する価値判断そのものは経済学が定めうるものではないとしても,社会において関心の対象とされる価値判断が資源配分に対していかなる帰結を生むかを調べることは,依然として〈科学的〉研究の興味ある課題である。バーグソンAbram Bergson(1914‐ )およびP.A.サミュエルソンにより提唱された社会的厚生関数social welfare functionは,このような研究プログラムを形式化した道具概念として導入されたものである。これは各個人への厚生分配の態様に応じて社会的厚生水準を指定する実数値関数であって,その対応規則のうちに分配に関する価値判断が結晶化されているものとされる。…

【新古典派総合】より

…J.M.ケインズ以前のいわゆる新古典派経済学とケインズ経済学(ケインズ学派)を総合して考える現代経済学の正統的な立場を表した言葉であり,1960年代にP.A.サミュエルソンがその著名な教科書《経済学》によって広めたものである。新古典派経済学によれば,経済学は一定の資源をいかに有効に配分するかということをその課題とする。…

【比較文学】より

…各国文学の間の国際的影響,交流,対応関係に関する研究。
[発生]
 ヨーロッパ諸国における近代的文学研究は,まず,18世紀末から興ったナショナリズムの風潮を受けて,各国文学それぞれ個別に,独立一貫した流れとしてとらえようとする方向に進んだ。これが,一国の文学の発展を順に時代を追ってたどる,いわゆるイギリス文学,フランス文学,ドイツ文学などの方法であり,現在に至るまで文学研究の正統主流の位置を占めている。…

※「サミュエルソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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