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サロート Sarraute, Nathalie

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

サロート
Sarraute, Nathalie

[生]1900.7.18. ロシア,イワノボ
[没]1999.10.19. フランス,パリ
フランスの女流作家。ロシアのユダヤ系の家庭に生れ,2歳のときフランスに移住。オックスフォード大学,パリ大学にて文学と法律を学び弁護士となったが,1939年に最初の小説『トロピスム』 Tropismesを発表,41年より作家活動に入った。処女作ならびにサルトル序文を寄せた『見知らぬ男の肖像』 Portrait d'un inconnu (1947) は,1950年代に入って,ヌーボー・ロマンの先頭に立つ作品としてあらためて高く評価され,小説概念の変革を試みる評論集『不信の時代』L'Ère du soupçon (56) とともに,若い作家に大きな影響を及ぼした。絶えず変化する人間心理の微細な動きを,直接その未分化の状態のままとらえ,伝統小説の型を打破り,新しい人間描写の方法を示した。ほかに,小説『プラネタリウム』 Le Planétarium (59) ,『黄金の果実』 Les Fruits d'or (63) ,『あの彼らの声が……』 Vous les entendez? (72) ,『言葉の用法』L'Usage de la parole (80) ,自叙伝『子供のころ』 Enfance (83) など。

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百科事典マイペディアの解説

サロート

フランスの女性作家。ロシア生れ。パリ,オックスフォード両大学で文学・法律を学び,弁護士を開業。生物が光に向かおうとする性質を意味する語〈トロピスム〉にちなんだ処女作《トロピスム》(1938年)以後《プラネタリウム》《見知らぬ男の肖像》を発表。

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世界大百科事典 第2版の解説

サロート【Nathalie Sarraute】

1902‐1999
フランスの女流小説家。ロシアに生まれ,幼時にフランスに移住,法律を学んで弁護士となった。心象スケッチ集《トロピスム》(1938)は無視されたが,サルトルが次の《見知らぬ男の肖像》(1948)に序文を寄せ,アンチ・ロマン(反小説)の出現を告げたため注目され,評論集《不信の時代》(1956)で性格,筋,心理などの伝統的概念を否定して,ロブ・グリエらとともにヌーボー・ロマン(新小説)の代表者と目された。《マルトロー》(1953)などの一見心理主義と見える作風は,中産階級客間での浮薄なやりとりの風刺にすぎないようであるが,意識下の牽引,反発,接近願望,嫌悪などの交錯が,あたかも輪郭のおぼろな内面に懸濁し散乱する微粒子の不随意的な運動としてとらえられ,深部の実存のありようを形象化してみせている。

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大辞林 第三版の解説

サロート【Nathalie Sarraute】

1902~1999) フランスの女性小説家。ロシア生まれ。現代人特有の揺れ動く精神状況と不安を描く。ヌーボー-ロマンの代表者の一人。小説「プラネタリウム」「黄金の果実」、評論「不信の時代」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

サロート
さろーと
Nathalie Sarraute
(1902―1999)

フランスの女流小説家。ヌーボー・ロマンを代表する一人。ユダヤ系染料工場主の娘としてロシアに生まれ、両親の離婚に伴い、スイス、フランス、ロシアを往復した。母親もコロレンコ編集の雑誌に寄稿し、何編も小説を発表している。ナタリーは最終的にパリに亡命した父親のもとでフランスの教育を受け、ソルボンヌ大学で英文学、オックスフォード大学で歴史、ベルリン大学で社会学を学んだあと、パリ大学法学部を卒業して、夫レーモンとともに弁護士となった。処女作『トロピスム』(1939)は、ジャコブとサルトルの激励を受けた以外完全に黙殺されたが、続いて『見知らぬ男の肖像』(1949)、『マルトロー』(1953)、『プラネタリウム』(1959)を発表してしだいに注目され、同題の小説の評価が集団的な衝動によって異常に高まり、やがて徐々に低下し、完全な無視に至る経過を地震計のようにたどった『黄金の果実』(1963)で、三島由紀夫の『金閣寺』と争い、フォルメントール賞を受賞した。いずれの作品においても、人間の心理の潜在的な動きを、微細な粒子が散乱する粥(かゆ)状物質のようなものとしてとらえ、ヒマワリの向日性のように、外界の刺激に応じてそれらの微粒子が不随意に方向を変える屈動性、すなわち生物学用語でいう「トロピスム」のなかに、現代人特有の不決断と不安の精神状況を描き出している。評論集『不信の時代』(1956)でその理論を展開したが、小説『生と死の間』(1968)、『あの彼らの声が……』(1972)、『子供のころ』(1983)では、いっそう抽象化を進めた。戯曲も6編ある。90歳を越えてもなお『ここでは』(1995)、『開けてちょうだい』(1997)を発表して、驚嘆すべき健筆をふるった。[平岡篤頼]
『菅野昭正訳『トロピスム』(1965・新潮社) ▽菅野昭正訳『プラネタリウム』(1961・新潮社) ▽白井浩司訳『不信の時代』(1958・紀伊國屋書店) ▽平岡篤頼訳『生と死の間』(1971・白水社) ▽菅野昭正訳『あの彼らの声が……』(1976・中央公論社)』

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世界大百科事典内のサロートの言及

【心理小説】より

…それは対象から独立した意識は存在せず,〈自転車の意識とは自転車のイメージである〉というフッサールの現象学とも符合する。とはいえ,今なお,作中人物の心理分析に関心を集中しているN.サロートや中村真一郎のような作家も健在で,ことに前者の《プラネタリウム》(1959)は,意識と無意識の相互干渉を解説せずに具象化した,現代に可能な唯一の心理小説と見なせよう。【平岡 篤頼】。…

※「サロート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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