日本大百科全書(ニッポニカ) 「シマアジ」の意味・わかりやすい解説
シマアジ(海水魚)
しまあじ / 縞鰺
島鰺
white trevally
[学] Pseudocaranx dentex
硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。日本海側では新潟県から、太平洋側では津軽(つがる)海峡から九州にかけての沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、台湾など、東太平洋を除く世界の温帯海域に広く分布する。体は長卵円形で側扁(そくへん)し、背腹の外郭はほとんど同様に湾曲する。吻(ふん)は眼径より著しく長い。目は小さく、脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)は未発達。大形魚では上顎(じょうがく)前端は下顎を越えて突出する。上下両顎に1列の鈍い円錐歯(えんすいし)が並び、ときどき上顎の前端で2列になる。鰓耙(さいは)は上枝に11~14本、下枝に24~26本。背びれは2基で、第1背びれは8棘(きょく)で、第2背びれよりも高く、鰭膜(きまく)が発達する。第2背びれは1棘23~28軟条。臀(しり)びれの前方に2本の遊離棘があり、その後ろに1棘21~23軟条がある。背びれと臀びれの最後の軟条はその直前のひれからすこし離れているが、鰭膜でつながる。側線の前部は緩く湾曲し、第2背びれの12~14軟条下まで伸びる。直走部の長さは湾曲部の長さの60~85%。側線の湾曲部には57~78枚の鱗(うろこ)があり、直走部には前部に24~27枚の鱗および後部に24~30枚の稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)がある。目の下と前部、上顎の後端は無鱗。胸部には鱗がある。体色は背部が淡緑色から光沢のある青色、腹部は銀白色。体側の中央を通る幅広い鮮明な黄色縦帯があり、これがシマアジの和名の由来になっている。鰓蓋(さいがい)の上縁に黒斑(こくはん)がある。主として水深80~200メートルの大陸棚上や斜面の底層に生息するが、地域によっては幼魚や成魚は沿岸域でも見られる。海底の砂を口で掘り返して魚類、軟体動物、甲殻類などを食べる。産卵は晩秋から冬で、分離浮性卵を産む。全長1メートルに達するが、普通は30~40センチメートルくらいのものが多い。アジ類中もっとも美味とされ、日本産魚類のなかでも高級魚に属し、刺身、すし、塩焼きなどにされる。小型定置網や小型巻網で採捕した幼稚魚(体重25~250グラム)を種苗として、30~40センチメートルの大きさに育てて出荷する養殖が行われている。
近縁種としてホソシマアジP. platessaとミナミシマアジP. mertensiiが日本から報告されたことがあるが、魚類研究者の具志堅宗弘(ぐしけんそうこう)(1926―2018)の1983年(昭和58)の論文によれば、これらは本種の成長段階の形態的な差異に基づいて命名されていたものである。その後、山岡耕作(やまおかこうさく)(1949― )らは本種に遺伝的に異なる2タイプがあることを報告(1992)しているが、2023年(令和5)時点では分類学的な解決はなされていない。
[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]
釣り
沖釣りではタイやヒラマサ釣りなどの際、それに混じって釣れるが、遊漁船がシマアジを専門にねらうのはごくまれである。しかし、磯釣り(いそづり)ではヒラマサとともに好対象魚として人気がある。5.4~6メートル級磯竿(いそざお)に両軸受型ドラッグ・リールか、大型スピニング・リールをセットし、道糸は10号から16号、ハリス8~10号。ワイヤ43番をハリスに使うこともある。鉤(はり)は伊勢尼(いせあま)型10~15号など。釣り方はウキ釣り、宙釣り、胴付きの枝バリのブッコミ釣りがある。一般的には水深のあるポイントを宙釣りでねらうのが無難であるが、魚の泳層がかなり上層にあるときはウキ釣りが有利ともいえる。寄せ餌(えさ)はイワシ、鉤へのつけ餌もイワシ一尾づけにするが、ときには数尾をつけることもある。
[松田年雄]