ベルギー生まれのフランスの推理作家。推理ものに限らず、心理小説、純文学、大衆文学など、活躍の幅は広い。名探偵メグレMaigret警部の創作者。6歳のころから創作を始め、1922年にパリに移民してからのちも、1日80ページのテンポで、たちまちのうちに300編の長編を書き上げたという驚異的多作家である。31年、メグレ警部が最初に現れた『ロアール館』を発表後、ほぼ1か月に1冊の割合で立て続けに18冊のメグレものを書いた。このなかには、彼の初期の傑作とされる『或(あ)る男の首』(1931。別名『モンパルナスの夜』)も含まれる。その後、作者はメグレものに飽きて、しばらくは他の犯罪小説や心理小説などを書いたが、この間にメグレものが世界的評判を得るに至り、40年代からはふたたびこの執筆を始め、72年までに112編にも達している。
シムノンの作品は本格推理ではなく、罪と罰や、良心などを中心に据えた心理ものの色が濃いので、彼を犯罪心理小説作家だとする意見も多い。『雪は汚れていた』(1948)はそういった面での佳作の一つである。メグレものは、警察側からの捜査展開を描くことによって、その後発達した警察捜査小説に影響を与えていることも見逃せない。73年ごろから、シムノンは病気を理由にほとんど創作活動を行っていない。
[梶 龍雄]
『G・アンリ著、桶谷繁雄訳『シムノンとメグレ警視』(1980・河出書房新社)』▽『三輪秀彦訳『雪は汚れていた』(ハヤカワ文庫)』▽『長島良三他訳『メグレ警視シリーズ』全50冊(1976~80・河出書房新社)』
ベルギーの小説家。作品はフランス語で書かれ,フランスで発表されている。リエージュに生まれ,生活のため書店の店員,次いで新聞記者となったが,1921年よりジョルジュ・シムGeorges Simのペンネームで小説を発表した。処女作はリエージュの町の風俗小説であったが,その後多くの筆名を使い,推理小説,心理小説を書いた。22年居をパリに移し,ヨットを入手してヨーロッパ中を旅行した。旅行中着想を得てメグレ警部を創造し,31年からファイヤール書店とひと月に1冊書く契約を結んだ。メグレ物はフランス語圏にとどまらず世界的な成功を収めた。33年メグレ物を中断して書かれた《向いに住む人たち》の頃からその人物描写,心理分析は文学的にも高い評価を受けた。特にアンドレ・ジッドの賞賛を受け往復書簡も多い。第2次世界大戦後45年から55年までアメリカに住み,以後はスイスに居を移した。73年70歳の誕生日にシムノンは引退の声明を出し創作の筆を折った。50年間の作品数は400点以上に及ぶ。
執筆者:松原 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新