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シンクロトロン放射 シンクロトロンほうしゃsynchrotron radiation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シンクロトロン放射
シンクロトロンほうしゃ
synchrotron radiation

高エネルギー電子が磁場中で円運動または螺旋運動をするとき,軌道中心方向の加速度を受けて電磁波放射する現象,または放射する電磁波。磁気制動放射またはシンクロトロン軌道放射ともいう。電子の速さが真空中の光速度に近いとき放射される電磁波は,電子の進行方向に集中し,かたより(偏波,偏光)は磁場の方向と垂直である。またスペクトルは連続スペクトルで,強度が極大になる波長は電子のエネルギーの 2乗および磁場の強さに反比例する。電子シンクロトロン中の電子からは,軌道の接線方向にきわめて指向性のよい強力な偏光した放射線が出ており,可視部から X線に及ぶ広い波長領域で連続スペクトルが得られる。したがって,このシンクロトロン放射は X線から真空紫外領域での分光学的研究に盛んに用いられている。なお,電子シンクロトロンのほかに,高エネルギーの粒子を蓄積させる蓄積リングからも同様な放射線を取り出すことができ,電子シンクロトロンからの軌道放射よりも著しく強く,かつ安定な光源として利用されている。星間空間では宇宙線電子が星間磁力線と相互作用して宇宙電波を出す。またかに星雲のような超新星の残骸中では高速電子のシンクロトロン放射は可視領域にも及ぶ。

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世界大百科事典 第2版の解説

シンクロトロンほうしゃ【シンクロトロン放射 synchrotron radiation】

真空中を光速に近い速度で運動する荷電粒子が,磁場により円軌道を描くときにエネルギーの一部を電磁波として放出する現象およびその電磁波のこと。シンクロトロン軌道放射あるいはその英語synchrotron orbital radiationを略してSOR(ソール)とも呼ばれる。1940年代後半に初めて観測され,その後,高エネルギーの円形電子加速器の重大なエネルギー損失機構として,素粒子あるいは高エネルギー物理学実験にとって有害と考えられていた。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

シンクロトロンほうしゃ【シンクロトロン放射】

荷電粒子が光速に近い速さで磁力線のまわりを円運動をしているとき放出される電磁波。シンクロトロンにおいて観察されるが、活動銀河核やパルサーなどの天体はこの機構によって電波を発している。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シンクロトロン放射
しんくろとろんほうしゃ

高エネルギーの電子が磁場中で円運動あるいはらせん運動するとき、軌道の曲率中心の方向へ加速度を受け、それによって電磁波が放射される。この電磁波は電子シンクロトロンで初めて観測されたので、その加速器の名にちなんでシンクロトロン放射とよばれる。放射強度は荷電粒子の質量が小さいほうが大きく、電子と陽電子の場合がもっとも大きい。相対論的効果のために電子の円形加速器から得られるシンクロトロン放射は次のような特徴をもつ。(1)広い波長域にわたって連続なスペクトル分布をもっている。短波長側は急激に立ち上がり、長波長側はなだらかな尾を引いている。ピークの波長は
  λP[Å]=2.35×R[m]/E3[GeV]
で与えられる(Eは電子エネルギー、Rは軌道半径)。(2)指向性が高く、軌道の前方、接線方向を中心に半角がmc2/Eの円錐(えんすい)中に集中する(mは電子の質量、cは光速度)。(3)高度の偏光性がある。軌道面に平行な放射は、電気ベクトルが軌道面に平行な直線偏光であり、軌道面から上下に傾いた方向では楕円(だえん)偏光である。なお、これらの諸特性は理論的に計算できる。さらに(4)高周波加速のために、一定間隔で繰り返される、きわめて短いパルス光である。
 多くの電子を長時間周回させる円形加速器は電子ストーレッジリングとよばれ、シンクロトロン放射を光源として利用する場合に用いられる。電子エネルギーが数百メガボルトのときは放射スペクトルは極紫外線から軟X線の波長域にあり、数ギガ電子ボルトでX線の波長域になる。これらの放射の強度は同じ波長域の他の光源に比べて桁(けた)違いに大きい。一方、天体でも高エネルギーの電子が磁場の作用でシンクロトロン放射を生じ、その電波やX線の成分が観測されている。[菊田惺志]

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世界大百科事典内のシンクロトロン放射の言及

【X線】より

… 連続X線を得る方法として,日本を含む先進国では電子シンクロトロンの利用が進んでいる。電子シンクロトロンで加速された電子から電子軌道の接線方向に波長が連続し,きわめて平行性のよい強力なX線がパルス状に放射されるのを利用するもので,これをシンクロトロン放射とか放射光X線と呼んでいる。日本には筑波の高エネルギー物理学研究所に硬X線領域まで発生できる放射光施設があり,1982年秋からテスト的利用が開始されている。…

【太陽電波】より

…フレアではエネルギーの高い電子が作られるが,これらの電子が磁場をもつプラズマ中を運動することによって放射する強い電波がバーストとして観測される。高エネルギー電子が黒点上層の磁力線のまわりを旋回するときにだすシンクロトロン放射は,センチメートル波帯バーストの有力な放射機構と考えられており,またコロナの中で高速電子流が作るプラズマ振動は,メートル波帯で観測される種々の型のバーストの放射機構と考えられている。このように一部のエネルギーの高い電子によって放射される電波を非熱的放射と呼んでいる。…

【電波天文学】より

…この種の電波源は高い周波数でも電波が強く,銀河面に沿って分布するなどの特徴を有し,星の誕生する領域を示す指標として使われている。 第2は,高エネルギーの電子の運動が磁場のために曲げられて発生する加速度によって放射される電波で,粒子加速器で起こる同じ原理による発光にちなんでシンクロトロン放射,あるいは熱運動をする電子からはほとんど放射されないことから非熱的電波と呼ばれる。 非熱的電波源としては次のようなものがある。…

【光】より

…電子シンクロトロンなどの加速器では磁場によって電子の軌道を曲げるが,このときの加速度によって軌道の接線方向へ,紫外線を中心とする連続スペクトルの軌道面に平行な偏光が放出される。これをシンクロトロン放射といい,この光の発生は加速器の性能を限定する因子であるが,最近は,光源として積極的に利用されている。【三須 明】
〔光と文化〕

【光の思想史】
 光は古来文学,哲学,宗教において比喩として用いられる。…

【放射線源】より

…高エネルギー物理の研究には電子や陽子をGeV(109eV)からTeV(1012eV)ときわめて高いエネルギーに加速することができるシンクロトロンや線形加速器などの高エネルギー加速器が利用される。シンクロトロンで加速されたり,線形加速器からストレージリングに入射して貯蔵したGeV程度のエネルギーをもつ電子が行う円運動に伴って放出される電磁波放射線をシンクロトロン放射光(SOR)と呼ぶ。SORは赤外から硬X線領域にまたがるきわめて強力で安定な放射線であり,線源として種々の応用が考えられている。…

※「シンクロトロン放射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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