スリランカのポロンナルワの西方約30kmにそびえる標高約180mの岩山で,5世紀末期のカッサパ1世が居城としていたという。ライオンが宮殿を背負う形をとるところから獅子の山(シンハ・ギリ)と呼ばれ,現名はその転訛である。岩山の西側岩壁の中腹からやや上方にある数個のくぼみに,カッサパ1世のころと考えられる壁画がある。散華する豊麗な貴婦人を痕跡も含めて総数22体を横に並べた単純な図柄である。豪華な宝冠をいただき,上半身裸体で種々の装身具を着け,腰布をまとった下半身を雲中に没している。アジャンターの壁画と同様に,しっくいの下地が乾いてから描くテンペラ画の技法による。彩色は黄と赤を主とし,緑や褐色も用いる。顔や肉身は黄を塗った上に赤で強い隈取を施し,速筆の力強い線で輪郭をくくる。アマラーバティーの浮彫の人体表現との類似やアジャンター壁画との関連性も考えうるが,大胆な描線や鮮やかな彩色は独自のものである。
執筆者:肥塚 隆
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スリランカ(セイロン)のポロンナルワの西約30キロメートルの樹林地帯にそびえたつ、高さ約180メートルの岩山。「獅子(しし)の山」を意味し、壁画で有名。カッサパ王Kassapa(在位478~496)が父王を殺害し、その配下の仕返しを恐れて城を築いた。その周囲に堀や土塁を巡らし、頂上には岩をうがって築いた宮殿や貯水槽の跡がある。岩山の西の中腹の細長いくぼみに、厚く漆食(しっくい)を置き壁画が描かれている。極彩色で、上半身を雲の上に現し、豪華な装身具を身に着けた女人の群像である。宗教画か、単なる風俗画か、またいつごろの作か確証はないが、インドのアジャンタやバーグの壁画との関連から、5世紀末ごろの制作と考えられている。1982年に「古代都市シーギリヤ」として世界遺産の文化遺産に登録されている(世界文化遺産)。
[永井信一]
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…輪郭線に沿って隈取りをほどこし,白によってハイライトを強調して立体感を出すところに表現上の特色がある。また,スリランカのシーギリヤには雲中の天女群像の優品があり,バーグ石窟のそれは褪色がはげしく,断片的ながらバーダーミ,エローラ,シッタンナバーシャルなどにもある。 細密画は11世紀ごろから,東インドの仏教,グジャラート地方のジャイナ教の経典挿絵として始まった。…
※「シーギリヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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