きわめて薄い絶縁膜をはさんで二つの超伝導体を接合したとき,電子対が絶縁膜を通り抜けることにより,二つの超伝導体の秩序パラメーターの位相差の正弦に比例する電流が流れる現象。1962年イギリスのジョセフソンBrian David Josephson(1940- )によって理論的に予言され,翌年,実験で確かめられた(この業績により,ジョセフソンは1973年度のノーベル賞を受賞)。
ジョセフソン効果は,超伝導の担い手である電子対のトンネル効果によって生ずるものである。一つの超伝導体の中のすべての電子対の波動関数は,ただ一つの共通の位相をもっている。二つの超伝導体の位相をθ1とθ2とするとき,絶縁膜(トンネル障壁)を単位時間内に通過する電子対の数,すなわち超伝導トンネル電流Iは,
I=Icsin(θ1-θ2)
と表される。ただし,Icはトンネル確率と電子対密度に依存する定数である。外部回路を用い,接合を通して流す電流をゼロから増していくと,電流値に応じて位相差が変化し,電流がIcをこえると接合をはさんで電圧が生ずる。また接合に磁場をかけた場合には,流れる電流に光学におけるフラウンホーファー回折のパターンと同じ形の干渉効果が見られる。
二つの超伝導体の間に一定の電圧Vを与えると,接合には振幅がIc,角振動数が2eV/ℏの交流が流れる(eは電気素量,ℏはプランク定数hを2πで割ったもの)。この現象は交流ジョセフソン効果と呼ばれる。複数個の接合の干渉効果は,微小磁場の検出器と,ジョセフソンコンピューターに応用され,交流ジョセフソン効果は電圧標準として使われている。
執筆者:小林 俊一
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超伝導トンネル電流に関連する物理現象.B.D. Josephson(1940年~)が,21歳でケンブリッジ大学の大学院生時代に,指導教授からの演習問題を解く途中で導き出した.ジョセフソン効果として,1973年,ノーベル物理学賞を受けている.厚さが1~5 nm 程度の非常に薄い絶縁体を超伝導材料によりはさんだ二つの接合部分には,クーパー対による超伝導電流(ジョセフソン電流とよばれる)と常伝導電流および変位電流が流れる.低温状態ではジョセフソン電流成分のみが観測され,この二つの接合により形成される素子は,電流が流れているにもかかわらず,電圧が0の超伝導状態となっている.これを直流ジョセフソン効果という.電流が増加し,臨界電流とよばれる値を超えると全電流をジョセフソン電流だけでは補えず,常伝導電流が流れ,電圧を伴う常伝導電流と変位電流成分が生じる.変位電流は印加電圧と磁束量子の比で決まる周波数で振動する現象で,マイクロ波に相当する高い周波数の電磁波を発生する.[別用語参照]ジョセフソン素子
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…この効果は超伝導体のエネルギーギャップの存在を実験的に証明し,その大きさを決定する有力な手段となった。もう一つは,62年,B.D.ジョセフソンが予言した効果(ジョセフソン効果)で,クーパー対と呼ばれる特定の電子対が酸化膜の両側の超伝導体間を移動する現象である。このとき生ずる流れは超電流と呼ばれ,前者と異なる特性を示す。…
※「ジョセフソン効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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