日本大百科全書(ニッポニカ)「スオウ」の解説
スオウ
すおう / 蘇方
蘇枋
蘇芳
Brazil wood
[学] Caesalpinia sappan L.
マメ科(APG分類:マメ科)の落葉低木または小高木。高さ4~15メートル。若枝には微毛が生え、すこし刺(とげ)がある。葉は互生し、2回偶数羽状複葉で長さ約30センチメートル、小葉は左右不同の長楕円(ちょうだえん)形、革質で光沢がある。3~5月、円錐(えんすい)花序をつくり、黄色の5弁花を開く。雄しべは10本、花糸の下半部に綿毛がある。豆果は扁平(へんぺい)な楕円形で長さ6~10センチメートル、紅色を帯びた革質で、中に種子が3、4個ある。中国大陸南部、インド、マレーに広く分布する。材は堅く、心材は暗紅色で莢(さや)とともに染料にするが、色があせやすい欠点がある。日本における古代の主要な赤色染料で、奈良時代以前に導入され、『延喜式(えんぎしき)』には「蘇芳染め」が載っている。
類似植物で赤色染料のとれるものにブラジル産のペルナンブコ(ブラジルボク)C. echinata Lam.があるが、1500年、南アメリカに上陸したポルトガル人はこの植物がインド名でBrazilというスオウと同じものと考え、上陸した地名をTerra do Brazil(ブラジルの木の国)とした。これがブラジルの国名の起源になったといわれる。
[小林義雄 2019年10月18日]