改訂新版 世界大百科事典 「スチルベン」の意味・わかりやすい解説
スチルベン
stilbene
1,2-ジフェニルエチレンに相当する炭化水素。(E)-体(トランス体)と(Z)-体(シス体)の2種類の異性体がある。かつては(Z)-体をイソスチルベンと呼んだ。(Z)-体は(E)-体にくらべて不安定である。(E)-体は,融点124.5~124.8℃,沸点306~307℃の無色の結晶。水に不溶,ベンゼン,エーテルに易溶。最も簡便な合成法は,ジオキサン中での四塩化チタンと亜鉛によるベンズアルデヒドの還元的二量化である。
(Z)-体は,融点5~6℃,沸点135℃(10mmHg)の,無色透明の芳香を有する液体。水に不溶,ベンゼン,エーテルに易溶。キノリン中でα-フェニルケイ皮酸と銅クロマイトとを混合して加熱すると得られる。
(E)-体に紫外線を照射すると(Z)-体に異性化する。スチルベン骨格は天然物に見いだされるほか,染料(スチルベン染料)にも含まれる。また,合成女性ホルモンのジエチルスチルベステロールは(E)-スチルベンの誘導体である。
執筆者:小川 桂一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報