イギリスの数学者、物理学者。数学および流体力学、光学、音響学など多方面にわたる業績がある。8月13日アイルランドのスクリーンで牧師の子として生まれる。ブリストル・カレッジを経て、ケンブリッジ大学に学び(1837~1841)、1849年同大学の数学科ルカス教授職についた。初め流体力学の研究にかかわり、粘性流体の数学的理論の発展に貢献した。その名は今日、流体力学の基礎方程式(ナビエ‐ストークスの運動方程式)に残っている。摩擦の研究を経て、1850年、粘性流体中を球体が運動するときの抵抗に関するストークスの法則を導出、これはナビエ‐ストークスの方程式からストークス近似により導かれたもので、粘性率測定の理論的基礎となった。これにちなんで動粘性率のCGS単位に彼の名がある。また流体が回転対称的な運動をする場合にストークスの流れの関数を導入した。1852年蛍光が紫外線によって引き起こされることを発見、蛍光の波長が吸収光の波長に等しいか、それよりも長いことを述べたストークスの法則は有名である。また太陽や星の化学組成をその光のスペクトルから決定することを提唱し、スペクトル分析への道を開いた。光行差、ニュートン環、回折、偏光、厚板の色、X線などの研究に重要な業績がある。数学では微分方程式、積分方程式に関する成果が多く、級数の収斂(しゅうれん)性の研究もある。ベクトル解析におけるストークスの定理は著名。また地球上の重力分布に関する研究は測地学に貢献した。1885~1890年ロイヤル・ソサイエティー会長、1887~1891年下院議員。1903年2月1日ケンブリッジで死去した。
[常盤野和男]
イギリスの内科医。ダブリン大学欽定(きんてい)教授の医師を父として生まれる。1823年エジンバラ大学を卒業し、ミース病院の内科医となり、1845年父と同じ大学教授となる。『聴診器の使用法』(1825)、『胸部疾患の診断と治療』(1837)、『心臓と大動脈の疾患』(1854)などの名著がある。彼の先輩内科医チェーンJohn Cheyne(1777―1836)と彼の名を冠したチェーン‐ストークス呼吸(1854)は、呼吸の期間と呼吸停止期間が周期的交互に現れる異常呼吸型で、心不全、尿毒症、脳幹障害、麻酔剤中毒などのときにみられる。またアダムスRobert Adams(1791―1875)と彼の名を冠したアダムス‐ストークス症候群(1846)は、洞房や房室伝導障害などで心拍動がおこらず、心室の自動開始に若干の時間を要するので、そのためにおこる脳循環不全による発作的意識障害の状態をいう。彼は、医師としてはまれな、プロシアの勲章Pour le Mériteを受けている。
[古川 明]
動粘度の単位。記号はSt。動粘度(あるいは運動粘性係数)は、流体の運動を理論的に扱うときに用いられる係数で、流体の粘度を密度で除した形で表される。粘度の単位はグラム毎秒毎センチメートル(g/s・cm)であるから、動粘度の単位は平方センチメートル毎秒(cm2/s)になる。国際単位系(SI)での動粘度の単位は平方メートル毎秒(m2/s)である。名称はイギリスの物理学者G・ストークスにちなむ。現在では、ストークスはCGS単位系に属する非SI単位とされている。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
イギリスの物理学者。アイルランドのスクリーンに牧師の子として生まれ,ダブリンの学校を卒業後,イングランドに渡り,1837年ケンブリッジのペンブローク・カレッジに入学,41年に数学学位試験に首席で合格した。49年以降終生ケンブリッジのルーカス教授職にあり,この間85-90年にはローヤル・ソサエティ会長,また87-92年大学を代表して国会議員を務めた。彼の研究は多方面にわたるが,1842-45年には流体力学に取り組み,非圧縮性の流体運動,摩擦のある流体運動の微分方程式を示した。45年には弾性論についての研究もある。以後おもに光学の研究に移り,光の媒質としてのエーテルを流体と弾性体の両方の性質でとらえることにより,光の弾性波動論の立場から光行差を説明,その後も回折,偏光,蛍光,色,複屈折などに関する実験的研究に取り組み,不十分な設備の中で,数多くの精密な測定を成功させた。こうしたストークスの研究により,フランスの数理物理学がイギリスに受容され,ケルビンやマクスウェルの研究に大きな影響を与えた。
執筆者:河村 豊
動粘度(動粘性率)の単位で,記号はSt。1St=1cm2/s=10⁻4m2/s。CGS単位であるので,国際単位系(SI)の単位と併用しないほうがよい。動粘度は流体の粘度を密度で除したものであるから,粘度のCGS単位ポアズ(P=g・cm⁻1・s⁻1)と密度のCGS単位であるグラム毎立方センチメートル(g・cm⁻3)とから,1St=1P/(g・cm⁻3)=1cm2/sのように得られる。名はイギリスの物理学者G.G.ストークスの名にちなんでつけられた。1cSt=0.01Stも使われることが多い。
執筆者:大井 みさほ
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動粘度の単位であるストークの複数形.語源が人名のG. Stokesであるため,わが国では単位の名称として誤用されることが多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…動粘度は流体の粘度を密度で除したものであるから,粘度のCGS単位ポアズ(P=g・cm-1・s-1)と密度のCGS単位であるグラム毎立方センチメートル(g・cm-3)とから,1St=1P/(g・cm-3)=1cm2/sのように得られる。名はイギリスの物理学者G.G.ストークスの名にちなんでつけられた。1cSt=0.01Stも使われることが多い。…
…G.G.ストークスによって見いだされたもので,次の二つがよく知られている。(1)粘性流体中をゆっくりと進行する球に働く抵抗に関する法則。…
※「ストークス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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