スポーツ心理学(読み)すぽーつしんりがく(英語表記)sport psychology

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

スポーツ心理学は、スポーツに関する諸問題を心理学的に解明し、スポーツの実践や指導にあたって役にたつ知見や技術を提供しようとする科学である。スポーツ心理学では、運動競技だけに限らず、広い意味でのスポーツについて研究を行っている。その関連領域としては産業心理学や体育心理学があるが、前者は身体運動を労働としてとらえており、後者は教育の手段としてとらえている点で、スポーツ心理学とは研究の立場を異にしている。[上田雅夫]

歴史

ヨーロッパやアメリカでは、20世紀初頭に、すでにスポーツに関する心理学的研究が行われていたが、とくに盛んになったのは1920年以降である。1965年には国際スポーツ心理学会が組織された。
 わが国では、この領域の研究は、スポーツ心理学としてよりは体育心理学として発展してきた。第二次世界大戦前はスポーツの実践は盛んであったが、スポーツの心理学的研究はあまり行われなかった。戦後、学制改革が行われ、大学にも体育が必修科目として設置され、すべての大学に体育担当教員が配置されることになったが、これを契機に、体育に関する科学的研究が盛んに行われるようになった。1950年(昭和25)には日本体育学会が創設され、続いて60年には体育学会のなかに体育心理学専門分科会が設置され、体育心理学の研究が体系的、組織的に行われるようになった。[上田雅夫]

研究対象と課題

体育心理学の主たる研究対象としては、身体運動の心理学的メカニズム、体育教材の心理学的特性、教育の対象である児童・生徒の心身の発達、運動学習、練習とその条件、運動の心身に及ぼす影響、身体活動と精神保健、指導法、効果の評価、指導者の資質および条件などがあげられる。体育教材としてスポーツが多く用いられることから、体育心理学専門分科会でもスポーツに関する心理学的研究が取り上げられるようになった。また、1964年にオリンピック第18回大会を東京で開催するにあたって、選手強化対策の一環としてスポーツ科学委員会が設置され、そこにスポーツ心理学小委員会が設けられたことが、わが国のスポーツ心理学の発展を促進するのに大いに役だった。このようなスポーツに関する心理学的研究の高まりを背景にして、国際スポーツ心理学会からの呼びかけもあって、1973年に日本スポーツ心理学会が設立されることになった。
 スポーツ心理学の研究課題としては、スポーツの心理学的特性、知覚・運動学習および練習、適性、作戦、スポーツにおける競争と協力、スポーツ集団、スポーツと年齢、コーチング、スポーツにおける不適応とその対策などがある。なお最近になって、身体運動そのものを心理学的に研究する領域として、運動心理学が提唱されるようになった。また健康への関心の高まりを反映して、健康スポーツ心理学の立場からの研究が行われるようになった。[上田雅夫]
『松田岩男・藤田厚・長谷川浩一編著『スポーツと競技の心理』(1979・大修館書店) ▽日本スポーツ心理学会編『スポーツ心理学概論』(1979・不昧堂出版) ▽日本スポーツ心理学会編『スポーツ心理学Q&A』(1984・不昧堂出版) ▽日本スポーツ心理学会編『コーチングの心理Q&A』(1998・不昧堂出版) ▽竹中晃二編『健康スポーツの心理学』(1998・大修館書店) ▽上田雅夫監修『スポーツ心理学ハンドブック』(2000・実務教育出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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