日本大百科全書(ニッポニカ) 「スーパー301条」の意味・わかりやすい解説
スーパー301条
すーぱーさんびゃくいちじょう
Super 301 Provisions of the 1988 Omnibus Trade Act
アメリカで制定された「1988年包括通商・競争力法」の条項の一つ。不公正な貿易政策をとる国を特定し、制裁措置を振りかざしながら譲歩を迫るための手続を定めている。具体的には、アメリカ通商代表部(USTR)がアメリカ製品の輸出を妨げている国と政策を特定し、それを改めるよう交渉し、交渉後一定期間内に満足できる成果が得られない場合は、関税引上げなどの報復措置がとられる。
このような一方的な措置は、世界の貿易ルールを定めた世界貿易機関(WTO)協定の精神に違反していると国際的に強く批判されているが、アメリカ市場は巨大であり、理不尽と考えても交渉や譲歩を拒み続けられる相手国は少ない。
日本については、1989年にスーパーコンピュータ、人工衛星、木材加工品の3分野が「不公正」と特定された。日本政府は反発したものの、結局は交渉に応じ、日本側が譲歩して決着した。当初は2年の期限付きで制定されたため一時廃止されたが、クリントン政権が大統領令によって1994年3月(期限2年)と、1999年4月(期限3年)に復活させた。期限が終了した2001年に失効している。
[岡田幹治]
『ジャグディシュ・バグワティ、ヒュー・パトリック編著、渡辺敏訳『スーパー301条――強まる「一方主義(ユニラテラリズム)」の検証』(1991・サイマル出版会)』▽『横田茂編『アメリカ経済を学ぶ人のために』(1997・世界思想社)』