改訂新版 世界大百科事典 「タバリー」の意味・わかりやすい解説
タバリー
al-Ṭabarī
生没年:839-923
中世イスラム世界を代表する歴史家,コーラン学者。タバレスターンのアームルに生まれ,バグダードで没。若くしてバグダードに出て法学を学び,フスタートなど諸市を巡り,ハディースを収集した。バグダード帰還後はシャーフィイー派的立場からハンバル派と厳しく対決しながら,著述活動に専念し,《諸預言者と諸王の歴史Ta'rīkh al-rusul wal-mulūk》《タフシール》などを著した。前者は初期イスラム史学史を代表する史書であるとともに最初の年代記である。世界の創造,前イスラム時代の諸民族の歴史を述べた後,イスラム時代に入ってからは,年代記の形で915年までのイスラム国家の発展・展開を述べたもので,神学的歴史観に立ち,後世の年代記作者の範となった。その叙述方法は,自分の考え・判断を極力抑え,特定の事件に関するあらゆる伝承を伝承史家別に列挙するというもので,この点,後世の研究者にとって史料集としても有益である。
執筆者:花田 宇秋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報