化学辞典 第2版 「タンパク質の構造」の解説
タンパク質の構造
タンパクシツノコウゾウ
structure of protein
【Ⅰ】一次構造(primary structure of protein):タンパク質分子を構成するアミノ酸の配列順序.タンパク質はきわめて複雑な高分子であるが,個々の固体より単離されたある1種類のタンパク質をとれば,構成アミノ酸の数,種類はもとより,配列順序まで一定である.1955年,F. Sanger(サンガー)によってインスリンの一次構造が決定されて以来,現在までに数千種類に及ぶタンパク質の一次構造が決定されている.生体内でこのアミノ酸の配列順序を決定するのは,デオキシリボ核酸(DNA)分子の塩基配列である.【Ⅱ】二次構造(secondary structure of protein):タンパク分子中のペプチド結合のカルボニル基とアミド基間の水素結合によって形成安定化される構造.αヘリックス,β構造などが知られている.旋光分散,円偏光二色性あるいは重水素交換法などにより,それら構造の比率が推定されている.【Ⅲ】三次構造(tertiary structure of protein):タンパク質分子はそれぞれ固有の立体構造を有するが,それはポリペプチド鎖がアミノ酸側鎖間あるいはポリペプチド鎖とアミノ酸側鎖間の疎水結合,水素結合,静電結合,ファンデルワールス結合などの非共有結合により,折りたたまれ重なり合うことによる.これはタンパク質の三次構造とよばれ,タンパク質の機能発現ときわめて密接な関係を有する.三次構造の安定化にはジスルフィド結合が関与することもある.【Ⅳ】四次構造(quaternary structure of protein):タンパク質分子が,ある一定の相互関係で数個集合して複合体を形成している場合,この分子間の相互作用にもとづく構造を四次構造といい,構成要素であるタンパク質分子をサブユニットという.たとえば,ヘモグロビンは2個のα鎖,2個のβ鎖,合計4個のサブユニットが複合体を形成すると,α鎖あるいはβ鎖にはない機能(ヘム間相互作用,Bohr効果)を獲得してヘモグロビン本来の機能を発現する.このように,タンパク質が四次構造を形成するとより高次な機能を獲得することが多い.[別用語参照]アロステリック酵素【Ⅴ】高次構造(higher-order structure of protein):タンパク質の二次構造,三次構造,四次構造をまとめてタンパク質の高次構造という.高次構造が破壊されると,タンパク質の機能が消失する変性という現象をはじめとして,酵素が酵素前駆体から活性化される際,酵素が基質を結合する際,アロステリック酵素にエフェクターが結合する際など,高次構造の変化が起こる場合が多い.タンパク質の機能発現ときわめて密接な関係を有する.[別用語参照]タンパク質の変性
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報