イギリスの詩人,劇作家。オックスフォード大学を出たのち,ヨーロッパ大陸に旅し,やがてペンブルック伯家の家庭教師を経て,宮廷詩人のサークルに出入りするようになった。恋愛ソネット集《ディーリア》(1592)は,イギリスにおけるペトラルカ風ソネットの大流行のまっただ中に世に問われ,作者の詩人としての実力を明らかにした。《憂いを払う眠りよ》などのソネットは,今日でもしばしば詞華集を飾るものである。《ランカスター,ヨーク両家の抗争》(1595-1609)は,えんえんと8巻にわたって語りつがれる史詩。《ムゾフィラス》(1599)は対話形式による学問論。セネカ風の悲劇《クレオパトラ》(1594)は,エジプト女王の生涯の最終場面だけを扱って,ある種の劇的凝縮が見られる。宮廷で上演される仮面劇の作者としても重宝がられたが,《韻の弁護》(1603)というまじめな詩論も世に問うた。
執筆者:川崎 寿彦
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イギリスの化学者。1813年王立協会会員、1831年キングズ・カレッジ化学教授。1836年ボルタ電池を改良し、最初の実用的な二液式電池であるダニエル電池を発明した。その後ミラーと共同で、電解槽中隔膜によって分離された両電解質溶液の濃度をそれぞれ測定する実験から、1844年に正・負イオンの移動する能力に違いがあることを確かめ、それを説明するために上下二つの正・負イオンの列が互いに半当量ずつずれていくという電気分解の機構に関するモデルを提唱した。これはその後の電気化学研究、自由イオン説への理論的出発点をしるすものであった。露点温度計の発明もある。
[宮下晋吉]
『旧約聖書』の「ダニエル書」の主人公。ダニエルは、ヘブライ語で「神はわが審判者」の意味。ユダ貴族の家に生まれ、エホヤキム王第3年の最初の捕囚のときバビロニアに移されるが、異教の権力と圧迫に抗して敢然と戦い、終始祖国イスラエルの回復を期待し続けた。とくに、終末的な神の国の勝利を幻に描き出し、神の支配の実現と悪(あ)しき権力の破滅を人々に預言した。旧約黙示文学の傑作に数えられるが、はたして「ダニエル書」のいうとおり、ダニエルが実在の人物であるかどうかは不明である。むしろ、古代イスラエルに残る伝承を用いて、黙示文学としての目的に沿って創作された人物とみるのが正しい。
[山形孝夫]
ソ連の小説家、翻訳家。イディッシュ語で書くユダヤ人作家の息子として生まれ、対独戦に従軍、負傷。モスクワ師範学校卒業後一時教員生活、のち詩の翻訳に専念。『こちらはモスクワです』(1961)、『贖罪(しょくざい)』(1963)などの短編をシニャフスキーと同じルートで西欧へ流しニコライ・アルジャクの筆名で発表。1965年シニャフスキーとともに逮捕され、翌年5年の重労働に処される。公判では罪の一部を認めたが獄中でこれを撤回した。88年12月30日死去。
[青山太郎]
『内村剛介編、染谷茂訳『現代ロシヤ抵抗文集第2 こちらはモスクワです』(1970・勁草書房)』
イギリスの詩人。オックスフォード大学中退後、詩作により貴族諸家の庇護(ひご)を得て生計をたてた。宮廷の職についたこともある。物語詩『ロザモンドの訴え』(1592)、セネカ風の悲劇『クレオパトラ』(1594)、詩人の使命を説いた対話詩『ムゾフィラス(愛詩家)』(1599)、愛国的な叙事詩『内乱』(1595~1609)などを書いたが、フランスの詩人デポルトを模したソネット集『ディーリア』(1592)が代表作。内容は常套(じょうとう)的であるが、流麗な表現が美しい。ほかに詩論『韻の弁護』(1603)など。
[藤井治彦]
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イギリスの化学者,気象学者.1812年ロイヤル・インスティチューション化学教授W.T. Brandeの講義を受け,研究分野に関心をもつ.気象学研究や鉱物収集などの地質学研究を行い,1820年にダニエル湿度計とよばれる露天湿度計(dew-point hygrometer)を発明し,1823年ロイヤル・ソサエティ会員に選ばれ,Rumford Medalも授与された(1832年).1831年ロンドンのキングス・カレッジにはじめて設置された化学の教授となる(~1845年).M. Faraday(ファラデー)を信奉し,1830年代には電気化学研究を進めた.とくにボルタ電池の分極による寿命低下について研究し,1836年には2液式構造をもつダニエル電池を発明した.1841年にはロンドン化学会の副会長を務めた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
イスラエルの賢者で伝説的人物。少年期にバビロンに捕囚されたが,その知恵と夢解きの能力によりネブカドネザル2世に重用され,アケメネス朝のキュロス2世の治世の初めまでさまざまな預言を行った。彼の預言を収めた旧約聖書の「ダニエル書」は,黙示文学と呼ばれる。
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…ヘブライ語とアラム語の部分からなる。1~6章はネブカドネザルの宮廷で教育を受けたダニエルとその3人の友人,シャデラク,メシャク,アベデネゴという知恵に富み律法に忠実な若者の物語。ダニエルによる王の夢の解き明かし(2~4),ベルシャザル王の宴会の際壁に現れた文字の解き明かし(5),偶像礼拝を拒否し,炉に投げ入れられた3人の友人(3)と,王礼拝を拒否して獅子の穴に投げ入れられたダニエルの試練と奇跡的救出(6)が記される。…
…石棺の浮彫には,クリスモンと月桂冠を飾った十字架の両側に,2人の眠る兵士(イエス・キリストの墓を見守るためにつかわされた兵士)を配し,〈復活〉の図像であることを示唆する表現が見いだされる。また新約聖書の〈ラザロの復活〉,旧約聖書のダニエルやヨナの物語などが〈復活〉の予型として用いられることもある。墓を訪れる2人または3人の聖女たちによってこの主題を間接的に表す方法は,西欧中世において早くから用いられた。…
…こうして太陽と関連づけられたライオンは,エジプトでは人面でライオンの体をもつスフィンクス,アッシリアでは有翼のライオンとして神格化され,いずれも力と知恵の象徴となった。これらの神格化はキリスト教にとり入れられてダニエルのテトラモルフtetramorph(《ダニエル書》7章参照)のような表象に用いられた。 中世になるとライオンはキリスト自身の象徴とされるようにもなる。…
…隔膜によって仕切られた2室の一方に硫酸銅CuSO4水溶液と銅Cu板,他方に硫酸亜鉛ZnSO4水溶液と亜鉛Zn板を入れた電池で,1836年J.F.ダニエルの考案になる。起電反応は Cu2++Zn―→Cu+Zn2+で,起電力は約1.1V。…
※「ダニエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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