テニールス(英語表記)David Teniers

デジタル大辞泉 「テニールス」の意味・読み・例文・類語

テニールス(David Teniers)

[1582~1649]フランドル画家の父。ルーベンス師事風景画歴史画を多く描いた。
[1610~1690]フランドルの画家。宮廷画家兼絵画館長となり、ブリュッセル定住諧謔かいぎゃく寓意ぐういをこめた風俗画を多く描いた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「テニールス」の意味・読み・例文・類語

テニールス

  1. ( David Teniers ダビッド━ ) フランドルの画家。画家であった同名の父から絵を学んだ。レオポルド=ウイレム大公の宮廷画家・美術品収集管理官としてブリュッセルで活躍。風俗画に優れる。(一六一〇‐九〇

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「テニールス」の意味・わかりやすい解説

テニールス
David Teniers
生没年:1610-90

フランドルの画家。アントワープに生まれブリュッセルに没する。父親に師事し,1633年に親方画家となり,37年にヤン・ブリューゲルの娘と結婚。作品は概して小規模だがその数は多く,題材農民・市民の風俗,宗教,風景,静物等多岐にわたる。ブリューゲル一族の伝統に連なるとともに,初期には同世代のブラウエルの強い影響を受けたが,表現はより穏やかで塗りもしだいに滑らかさと透明感を増し,やがて画面は独特の銀灰色調を示すようになる。このような特質ゆえに,テニールスは彼が通常ブラウエルに次ぐ代表者と目されている農民風俗画においてよりも,市民風俗画や風景・静物表現のほうでより精彩を放つといえる。47年以後ネーデルラント総督レオポルト・ウィルヘルム大公の注文を受けるようになり,51年には宮廷画家兼収集管理官に任命されて宮廷のあるブリュッセルに移転,ベネチア絵画を中心とした大公の大コレクションの銅版画カタログの下絵とする縮小模写と,ギャラリー内部を記録したキャビネット・ペインティングの制作をおもに手がけた。65年にはアントワープのアカデミーの創立会員となった。なお,同名の父(1582-1649)は長らく忘れられていたが,エルスハイマーの優れた追従者かつ同時期オランダのレンブラント前派の並行現象として,近年注目を集めつつある。テニールス一族はほかにも数人の画家を生んだ。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テニールス」の意味・わかりやすい解説

テニールス
てにーるす
David Teniers

同名のフランドルの画家父子。(1)父(1582―1649) アンベルスの人。エルスハイマーおよびルーベンスの影響を受け、神話的主題のほか風景、風俗を描いたとされるが、彼の作を確証できる現存作品は少ない。(2)子(1610―90) アンベルス生まれ。父およびブロウエルに学ぶ。1632年アンベルスの画家組合に登録。51年レオポルド・ウィルヘルム大公の宮廷画家兼絵画館長としてブリュッセルに定住。作品は風俗画が多く、市場、街頭、室内、居酒屋など市井の生活を諧謔(かいぎゃく)と寓意(ぐうい)を込めて描いた。代表作に『ウィルヘルム大公のブリュッセルの絵画館』(ブリュッセル王立美術館)、『三人の奏楽する農夫』(ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク)がある。

[野村太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テニールス」の意味・わかりやすい解説

テニールス
Teniers, David

[生]1610.12.15. 〈洗礼〉アントウェルペン
[没]1690.4.25. ブリュッセル
フランドルの画家。同名の父 (1582~1649) に学ぶ。息子 (38~85) および孫 (72~1771) も同名の画家。 1632または 33年アントウェルペンの画家組合に登録。 51年レオポルド・ウィレム大公の宮廷画家,ならびに大公の美術品の管理者となりブリュッセルに定住。 65年アントウェルペンのアカデミーの設立に貢献。初期には A.ブラウエルの影響を受けたが,やがて温和で繊細な自己の作風を確立。風俗,風景,静物,肖像など題材は広範囲にわたり,2000点以上の多くの作品を残したが,特に農民の生活や都会の庶民の日常生活の情景を描いた風俗画にすぐれた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「テニールス」の意味・わかりやすい解説

テニールス

17世紀フランドルの代表的風俗画家の一人。アントウェルペン生れ。ヤン・ブリューゲルの女婿で,1651年レオポルト・ウィルヘルム大公の宮廷画家となる。特に農民の生活描写を好んだ。代表作に《農民の結婚》(1637年,マドリード,プラド美術館蔵),《レオポルト・ウィルヘルム大公の絵画室》(1651年ころ,ウィーン,美術史美術館蔵)などがある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のテニールスの言及

【フランドル美術】より

…遠近法を強調した16世紀の空想的建築画はネーフスPieter Neefs(1578ころ‐1656か61)らの教会室内画に継承される。また多くの絵画や彫刻,工芸品の並ぶ収集家の収集室を描いた絵画(キャビネット・ペインティング)は17世紀フランドルの特産物で,たとえばブラウエルの影響下に農民画家として出発したD.テニールスも,のちに主君ネーデルラント総督の収集室を描いている。巨匠たちの作品がしばしば外国宮廷の注文で制作されたのみならず,群小画家の作品も重要な輸出品目であった。…

※「テニールス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android