各戸にテラスをもつ低層の連続建住宅。一般には耐火構造または準耐火構造で、専用庭をもち、第二次世界大戦後、主として公営住宅や公団住宅などの公共住宅(賃貸住宅および分譲住宅)として供給されてきたことなどから、伝統的な木造長屋とは区別される。テラスハウスが日本で数多く建設されたのは1950年代後半で、1955年(昭和30)に発足した日本住宅公団(現、都市再生機構)では1958年に5000戸を上回る実績をもっているが、その後、住宅需要の著増、地価の上昇、用地不足などを背景とする土地利用の集約化と住宅の中高層化の流れのなかで、土地利用効率の悪い低層住宅建設は激減し、1960年代後半には大都市圏での供給はほとんどなくなった。しかし、オイル・ショック以後の価値観の変化と、住宅の量的充足から、1970年代後半より低層住宅は都市住宅の質的改善の一手段としてふたたび注目されることになり、従来の低密なテラスハウスと異なる低層高密住宅の建設が公共住宅でも民間住宅でも増加した。とくに専用庭だけでなくコモンスペースcommon spaceとよばれる共用庭をもつ住宅はテラスハウスと区別してタウンハウスtown houseと名づけられ、構造も枠組壁工法(ツーバイフォー工法)による木質系のものが普及している。
[髙田光雄]
正面を連続させた横ならびの集合住宅。単に〈テラス〉ともいう。各戸はそれぞれ街路に向かって玄関をもち,全体が街区を形成する都市住居の形式で,イギリス近世の典型的住居である。テラス(台地)状に整地した敷地に,標準化された型式で建設されたため,この呼称が生まれた。1630年ロンドンのコベント・ガーデンの広場周辺に建設されたものがこの型式の祖型といわれ,以後ロンドン,バースをはじめ多くの都市に建設された。テラス・ハウスは集合住宅全体の正面を宮殿のように構成するものが多く,またスクエアsquareと呼ばれる広場を囲むものが多かったため,都市景観を引き立てた。また集合住宅でありながら各戸の独立性が高いので,その面からも好まれた。
執筆者:鈴木 博之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(2013-11-28)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ヨーロッパ都市の構成とそのなかに建つ住居の形式は,中世末期に確立されて以後,本質的には19世紀に産業革命が都市化の波を引き起こすまで,変化することなく持続する。
[ルネサンスから近世――オテル,アパルトマンとテラス・ハウス]
ルネサンス住宅建築の課題は,中世以来の左右非対称の平面構成を古典主義的な左右対称の壁面構成と両立させることであった。アルベルティはフィレンツェに建つパラッツォ・ルチェライPalazzo Rucellai(1446‐51)の正面壁面にローマのコロセウムに由来するオーダーとアーチの組合せのデザインを応用し,ルネサンス的な意匠をもつ都市邸宅の端緒を開いた。…
…単にアパートメントといえば欧米ではこのフラット形式の住戸を指すことが多い。イギリスでは17~18世紀ごろまでは,共同住宅の高級なものは,縦割りで裏庭付きのテラス・ハウスが主流であったが,19世紀初めごろから,大陸で一般的となっていたフラット形式が増え,この語が用いられるようになった。テラスハウスでは,馬車の出入りのための裏庭が不可欠のため,空間の利用度に限界があったが,フラットは中庭を囲んで造られ,高層化も可能で,比較的高密度とすることができた。…
…住宅における廊下の活用はイギリスのルネサンス建築で復活し,連絡通路としての歩廊のほかに,ロング・ギャラリーlong galleryと呼ぶ長大な歩廊型の室が生まれ,はじめは武術の道場として用いられたが,後にはもっぱら美術品展示室として利用された(ギャラリー)。17世紀のイギリスでは,コールズヒルColeshill(1650ころ)のような完全な中廊下式の住宅が生まれ,18世紀のテラス・ハウスでは,廊下兼階段室の独立が通例のものとなり,各室の独立が確立されていたが,大陸諸国で廊下の利用による各室の独立が達成されたのは,19世紀に入ってからであった。近代建築の普及にともない,機能主義と経済主義の観点から,20世紀中期には一時期,中廊下がむだなスペースとして軽視されることもあったが,近代運動の衰退とともに再び廊下の効用が正当に評価されるようになっている。…
※「テラスハウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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