日本大百科全書(ニッポニカ) 「デザルグ」の意味・わかりやすい解説
デザルグ
でざるぐ
Gérard Desargues
(1593―1662)
フランスの建築家、数学者。リヨンの生まれ。1639年『円錐(えんすい)と平面との交わりについての研究草案』を書いた。この書物は、透視法をつくったルネサンス時代の画家たちの流れから発展したもので、技術者たちに向けて書かれているうえに、新しい概念が数多く導入されているため、用語においても特異なものが多い。しかし、そのなかには、線束、面束、無限遠点、無限遠直線などの概念が導入され、円錐曲線についても新しい定義があり、対合(たいごう)定理や極と極線との関係のような射影幾何学の基本概念も含まれ、射影幾何学の始まりの書物であるといわれている。また、こんにち「デザルグの定理」とよばれる射影幾何学における定理は1648年に発表されたものである。
デザルグの思想は、その優れた後継者パスカルによって発展させられ、『草案』はデカルトの『幾何学』La Géométrie(1637)が出て2年後に出版されたにもかかわらず、彼の思想の完全な結実をみたのは19世紀に至ってからであった。
[茂木 勇]