大学事典 「トリニティ・カレッジ」の解説
トリニティ・カレッジ[アイルランド]
アイルランド共和国の首都ダブリンにあるアイルランド最古の大学。宗教改革の余波が続く1592年,エリザベス1世の勅許状により,入植者・官吏・国教会の子弟の高等教育の場として設立された。オックスフォードとケンブリッジ両大学をモデルに,植民地におけるプロテスタントの橋頭堡であるとともに,アイルランドの学術・高等教育の拠点となるようにとの期待を担ってのことであった。18世紀を通じて宗派主義への批判が高まり,アイルランドにおけるカトリック教徒の差別撤廃が進むとともに,門戸をカトリック教徒や非国教徒の子弟にも開放した(1793年)。ただし,教授職,フェローシップ,スカラーシップ(エリート研究生)などの保有は1873年までプロテスタント信奉者のみに制限された。女性の入学が認められたのは1904年である。
歴代の卒業生の中にはジョナサン・スウィフト,エドマンド・バーク,オリヴァー・ゴールドスミス,オスカー・ワイルド,サミュエル・ベケットなどがいる。基礎学術から伝統的な法学,医学,神学(宗教学),さらには最新の生命諸科学まで主要な学問分野を網羅して,1万数千人の学生(うち大学院生約5000人)を収容し,オックスブリッジに比肩する水準の大学との定評を得ている。当大学図書館蔵の『ケルズの書』(聖書の手稿写本)は世界で最も美しい本と言われている。
著者: 安原義仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報