イタリアの作曲家。ベルガモに生まれ、生地とボローニャの音楽院で学ぶ。オペラ作曲家を志し、20歳ごろ三曲のオペラを書いたが上演できず、失望して軍隊に入る。軍務のかたわら作曲を続け、25歳でオペラ作曲家として認められ、多産な作曲生活に入った。ロッシーニの亜流の二十数曲を発表したのち、1830年にイギリス王ヘンリー8世の妃アン・ブリンの悲劇を題材とする『アンナ・ボレーナ』をミラノで上演して空前の成功を収め、すぐにロンドン、パリ、ウィーンでも上演されて世界的名声を確立。続いて、ロマンチックな感傷の漂う田園喜劇『愛の妙薬』(1832)、歴史劇『ルクレツィア・ボルジア』(1833)、当時流行の狂乱の場をクライマックスとする『ランメルムーアのルチア』(1835)と相次いで傑作を発表、ベッリーニとともにロッシーニ引退後のイタリア・オペラの第一人者となった。
1837年、ナポリ王立音楽院長の席を争って敗れ、翌年『ポリウート』がナポリ当局の上演禁止処分を受けたこともあって、38年からパリに住み、40年にはフランス風の軽快な喜劇『連隊の娘』、壮大な悲恋物語『ラ・ファボリータ(寵姫(ちょうき))』、『ポリウート』を改作した『殉教者』を上演し、パリ楽壇の寵児となった。42年にはウィーンを訪れ『シャモニーのリンダ』を上演、熱狂的な歓迎を受け、宮廷楽長兼作曲家に任命される栄誉を受けた。43年パリでオペラ・ブッファの傑作『ドン・パスクアーレ』を上演したが、このころから健康を害し、45年卒中の発作に襲われ、闘病生活ののち故郷で没した。
まれにみる速筆で知られ、70曲以上のオペラを作曲。注文に応じて書き飛ばした駄作も多いが、前記の諸作は、歌唱技術の極限を駆使しつつ、流麗な旋律美の連続のうちに劇的興奮を盛り上げるベル・カント・オペラの代表的傑作であり、先輩ロッシーニ、後輩ベルディの作品とともに、19世紀イタリア・オペラの名作として今日も絶大な人気を誇っている。
[大久保一]
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イタリアのオペラ作曲家。ロッシーニ,ベリーニとともに19世紀初頭のイタリア・オペラ界に黄金時代を築いた。1818年,最初のオペラを発表して成功,イタリアからパリやウィーンにも活躍の場をひろげ,25年間に70曲近いオペラを作曲。国際的名声とともに職人的筆の速さを誇っているが,歌手のベルカント技法を際だたせる流麗・甘美な旋律と快適なリズムに劇的興奮を加味し,オペラ全体の劇的効果を高めることに天賦の才能をもっていた。《アンナ・ボレーナ》(1830),《ルチア》(1835),《ラ・ファボリータ》(1840)など,シリアスなオペラとともに,《愛の妙薬》(1832),《連隊の娘》(1840),《ドン・パスクアーレ》(1843)など,コミックなものにも優れた作品を残しており,ほかに若干の歌曲や宗教曲,器楽曲もある。
執筆者:武石 英夫
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出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報
…西ヨーロッパ諸国との貿易が拡大すると,ビザンティン時代以来外国人商人の居留地として知られていたガラタGalata地区が発展し,その隣のベイオウルBeyoğlu地区ともども新しい商業・文化の中心となり,モスクの光塔(ミナレminare,ミナレット)の林立する旧市街と好対照をなした。新市街にはヨーロッパ各国の大使館(現在は領事館)が軒を並べ,外国人商人や,これと結んだ非ムスリム少数民商人たちがモダンな店を構え,またイタリアの作曲家ドニゼッティGiuseppe Donizetti(Gaetanoの兄)などの〈御雇外国人〉も多数居住した。政府は彼らの協力を得て帝国の西欧化に取り組み,ガラタサライ・リセーGalatasarayı Lisesi(1868創立),ダーリュッフュヌーンDârüffünun(1863創立,イスタンブール大学の前身)などの西欧型教育機関を設立した。…
…ドニゼッティの代表的オペラ。正式名《ランメルモールのルチアLucia di Lammermoor》。…
※「ドニゼッティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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