改訂新版 世界大百科事典 「ネナシカズラ」の意味・わかりやすい解説
ネナシカズラ
Cuscuta japonica Choisy
ヒルガオ科のつる性完全寄生植物。一年草で,茎は針金状に長く伸び,他植物に巻きつく。種子から発芽したときには根があるが,他植物に寄生しはじめると基部は枯れ,名前のように〈根なし〉になる。全体は黄白色で紫色の細点があり,葉は退化して鱗片状。秋に短い穂状花序に,白くて小さい花を密集してつける。花は合弁で,鐘形の花冠を有し,おしべは5本。果実は蒴果(さくか)で扁球形,普通は2~4個の種子を有する。キク科,マメ科,タデ科その他各種の植物にからみつき,吸盤で栄養を吸収する。日本全域および東アジアの温帯に広く分布する。この種や,ごく近縁で中国に分布するハマネナシカズラC.chinensis Lam.の全草は菟糸(とし),また種子は菟糸子と呼ばれ,強精,解熱,解毒などに用いられる。
またマメダオシC.australis R.Br.はハマネナシカズラに似た細いつる状の寄生植物で,マメ科植物に多く寄生するのでこの名がある。日本全国,東南アジアからオーストラリアに広く分布している。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報