ネナシカズラ(英語表記)Cuscuta japonica Choisy

改訂新版 世界大百科事典 「ネナシカズラ」の意味・わかりやすい解説

ネナシカズラ
Cuscuta japonica Choisy

ヒルガオ科のつる性完全寄生植物一年草で,茎は針金状に長く伸び,他植物に巻きつく。種子から発芽したときには根があるが,他植物に寄生しはじめると基部は枯れ,名前のように〈根なし〉になる。全体は黄白色で紫色の細点があり,葉は退化して鱗片状。秋に短い穂状花序に,白くて小さい花を密集してつける。花は合弁で,鐘形の花冠を有し,おしべは5本。果実蒴果(さくか)で扁球形,普通は2~4個の種子を有する。キク科,マメ科,タデ科その他各種の植物にからみつき,吸盤で栄養を吸収する。日本全域および東アジアの温帯に広く分布する。この種や,ごく近縁で中国に分布するハマネナシカズラC.chinensis Lam.の全草は菟糸(とし),また種子は菟糸子と呼ばれ,強精,解熱解毒などに用いられる。

 またマメダオシC.australis R.Br.はハマネナシカズラに似た細いつる状の寄生植物で,マメ科植物に多く寄生するのでこの名がある。日本全国,東南アジアからオーストラリアに広く分布している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネナシカズラ」の意味・わかりやすい解説

ネナシカズラ
ねなしかずら / 根無葛
[学] Cuscuta japonica Choisy

ヒルガオ科(APG分類:ヒルガオ科)の一年生つる草。イタドリ、クズ、ヨモギなどさまざまな植物に寄生する。地上に生えたあと、つるを伸ばして寄主に巻きつき、寄生根を寄主の維管束に挿しこむと根を失って寄主から養分を摂取し、成長する。つるは黄褐色、鱗片(りんぺん)葉がある。8~10月、小さな白色花を穂状に集めて開く。花冠は鐘形で5裂し、花柱は1本。丘陵から山地川原や野原に群生し、日本全土、および朝鮮半島、中国、アムール地方に分布する。漢方で種子を「菟糸子(としし)」と称し、薬用とする。

 ネナシカズラ属は世界に約200種、日本には帰化したものも含め5種分布する。寄生生活をする植物で、ネナシカズラ亜科に属すが、ネナシカズラ科Cuscutaceaeとして独立させる考えもある。

[高橋秀男 2021年6月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネナシカズラ」の意味・わかりやすい解説

ネナシカズラ(根無蔓)
ネナシカズラ
Cuscuta japonica

ヒルガオ科の一年草。東アジアに分布し,日本各地に自生する。緑葉はなく低木や草などにからまって寄生する。茎は針金状のつるとなり無毛,淡黄色でときに紫褐色の斑点がある。長さ約 2mmの鱗片状の葉がある。8~10月に,淡い青白色の小花をやや穂状につける。花冠は鐘形で,長さ約 4mmあり上部は5裂する。果実は楕円状卵形で,熟すると上半部がふたとなってとれ,径約 3mmの種子数個を出す。種子を粉末にして酒に入れて飲むと,強壮,強精,利尿に効果があるといわれ,茎をすりつぶしたものは,にきびの民間治療薬として用いられる。近縁のマメダオシ (豆倒し)ハマネナシカズラ (浜根無蔓)を含めてネナシカズラと総称することもある。

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百科事典マイペディア 「ネナシカズラ」の意味・わかりやすい解説

ネナシカズラ

ヒルガオ科の一年生の寄生植物。北海道〜九州,東アジアに分布し,山野にはえる。地下の根は発芽の時だけ生じ,のちに寄主にまつわり,吸根を出し,養分を吸収して生長。茎は赤色を帯びた黄色で,葉は退化し鱗片状となる。8〜9月淡黄白色の小花を穂状に密に開く。花冠は鐘形で,浅く5裂。果実は卵形で熟すと上部のふたがとれて種子を散らす。近縁のマメダオシは茎が細く,花も小さく,果実は平たい球形となる。近年,北米原産のアメリカネナシカズラが各地に帰化している。

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