ハナズオウ(読み)はなずおう

改訂新版 世界大百科事典 「ハナズオウ」の意味・わかりやすい解説

ハナズオウ (花蘇芳(方))
Cercis chinensis Bunge

春,葉に先立って紅紫色の美花が咲くため,広く観賞用として庭園に栽培される中国原産のマメ科植物。日本へは江戸時代に渡来。高さ約4mほどの小高木となる落葉樹樹皮はほとんど灰色。葉は心形で長さ4~8cm,先は短くとがる。表は光沢があり,裏面はやや緑白色。花は前年の枝上の節に束になってつき,長さ約2cm。ふつうのマメ科植物の蝶形花とよく似ているが,旗弁は両わきの翼弁よりも内側につき,この3枚がそり返っている。おしべは10本あり,離生する。果実は細長い長方形で,両端はとがり,一方に狭い翼ができる。長さ5~7cmで,中に2~5個の種子がある。

 和名は花の色が蘇芳染の色に似ることからスオウバナと呼ばれていたものが,変化したという。樹皮は漢方では紫荆皮(しけいひ)と呼ばれ,解毒月経不順に用いられる。ハナズオウ属Cercis英名はredbud,Judas-tree。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナズオウ」の意味・わかりやすい解説

ハナズオウ
はなずおう / 花蘇芳
[学] Cercis chinensis Bunge

マメ科(APG分類:マメ科)の落葉低木または小高木。普通は高さ3~4メートル。葉は互生し、円心形で長さ5~8センチメートル、先はとがり、基部は心臓形、全縁で両面はほとんど毛がない。4月下旬、葉に先だって、枝の節々に紅紫色で長さ1.5~1.8センチメートルの蝶形花(ちょうけいか)を固めて開く。雄しべは10本で、離生する。果実は線状長楕円(ちょうだえん)形で扁平(へんぺい)な莢(さや)になり、長さ5~7センチメートル。種子は2~6個ある。中国原産。名は、インド、マレー原産のマメ科植物であるスオウを用いた蘇芳染めに花色が似るのでつけられた。日当りのよい適潤地でよく育つ。繁殖は実生(みしょう)、挿木株分けによる。北アメリカ原産のアメリカハナズオウC. canadensis L.は小高木で、花は淡紅色、葉の裏面に毛がある。まれに植栽される。

小林義雄 2019年11月20日]


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