バイヤー(読み)ばいやー(英語表記)Johann Friedrich Wilhelm Adolf von Baeyer

精選版 日本国語大辞典 「バイヤー」の意味・読み・例文・類語

バイヤー

(Johann Friedrich Wilhelm Adolf von Baeyer ヨハン=フリードリヒ=ウィルヘルム=アドルフ=フォン━) ドイツの有機化学者。天然藍の主成分であるインジゴ(青藍)の構造および合成法を研究し、ドイツ染料工業の基礎を確立。一九〇五年ノーベル化学賞受賞。(一八三五‐一九一七

バイヤー

〘名〙 (buyer) 買手。特に、外国人の貿易買付け人。〔外来語辞典(1914)〕

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デジタル大辞泉 「バイヤー」の意味・読み・例文・類語

バイヤー(Johann Friedrich Wilhelm Adolf von Baeyer)

[1835~1917]ドイツの化学者。有機化合物の構造を研究、合成法を開拓し、インジゴをはじめ多くの合成染料を作り出した。1905年ノーベル化学賞受賞。

バイヤー(buyer)

買い手。特に外国から買い付けに来た貿易業者。
[類語]買い手買い主買い方

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイヤー」の意味・わかりやすい解説

バイヤー
ばいやー
Johann Friedrich Wilhelm Adolf von Baeyer
(1835―1917)

ドイツの化学者。有機合成化学の推進者の一人、とくにインジゴの合成で有名。ベルリンの生まれ。ハイデルベルク大学ブンゼンに学び、ついでケクレに学んだ。思想的にはとくに後者の影響が大きい。ベルリン実業学校、シュトラスブルク大学、ミュンヘン大学などで教育と研究の仕事に従事。教育の面ではフィッシャーマイヤーウィルシュテッターグレーベリーベルマンなど、後のドイツ有機合成化学の分野で活躍する優秀な人材を数多く育てた。

 研究の面では、有機化合物の構造理論を基礎に、その応用としての合成法の開拓を行ったところに、彼の進歩性がみいだされる。そして彼の弟子たちは、有用染料の合成という目標に向かって、その考えをさらに拡大しつつ多くの新合成法を発見し、有機化合物の構造と反応性についての知識をさらに豊富にした。同時に多数の合成染料をつくりだし、ドイツ染料工業の発展の牽引(けんいん)車となった。すなわち、工業の発展にとって研究が不可欠であることを身をもって証明したといえる。

 バイヤーの研究業績は論文数が300余にも上り、領域は多方面に及んだ。取り扱った化合物を染料関連物質のなかから数種に限ってあげると、ニトロベンゼントリフェニルメタン、フタレイン、キノリンなどの基本骨格をもった環状化合物がある。そのほかに、テルペンアルセノベンゼン、含窒素複素環などの有用化合物群もみられる。それらのなかでもっとも有名なのは天然染料藍(あい)(インジゴ)の人工合成である。1865年にその可能性をみいだして以来、関連物質の構造確定をしつつ、1870年にイサチンから、1880年にはオルトニトロ桂皮(けいひ)酸からの合成に成功するまでに10年以上の年月を要した。構造理論の面では互変異性(1882)および炭素環の張力説(1885)がある。1905年に以上の業績に対してノーベル化学賞が贈られた。

[川又淳司]

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改訂新版 世界大百科事典 「バイヤー」の意味・わかりやすい解説

バイヤー
Johann Friedrich Wilhelm Adolf von Baeyer
生没年:1835-1917

ドイツの有機化学者。ベルリンに生まれる。ベルリン大学の数学・物理科を中退し,1856年ハイデルベルク大学のR.W.ブンゼンのもとで実験化学を志す。翌年同研究室のA.ケクレのもとで研究,58年ケクレとともにベルギーのガン大学に移り,ヒ素化合物の研究で,ベルリン大学より博士号を受ける。60年ベルリンの工業学校で教職についた後,64年ベルリン大学,72年シュトラスブルク大学,75年J.リービヒの後任としてミュンヘン大学の教授を歴任。1905年〈有機色素およびヒドロ芳香族化合物の研究〉に対して1905年度ノーベル化学賞が授与され,19世紀後半から20世紀にかけての有機合成化学史上に大きな影響をおよぼした。278の論文の中で最大の業績は,天然染料インジゴの構造を明らかにし,1880年最初の合成に成功したことである。約20年後,合成インジゴの工業的製法が完成され,大量生産が進み,有機化学技術およびドイツ化学工業に画期をもたらす基礎となった。尿酸やフタレイン,ニトロソ化合物などの多くの物質の挙動に興味をもち,理論そのものには無関心であったが,ベンゼン核構造の提起や不安定なポリアセチレンの研究から,環式炭化水素の〈原子価張力説〉を唱えたことは,ケクレの古典的構造理論を一歩進めたといえる。E.フィッシャー,V.マイヤー,R.ウィルシュテッター,K.グレーベ,C.T.リーバーマンなどすぐれた有機化学者を育てた。
執筆者:

バイヤー
Herbert Bayer
生没年:1900-85

オーストリア出身のデザイナー,画家,写真家,建築家。ハークHaag生れ。1921年ワイマールバウハウスに入り,絵画,タイポグラフィーなどを学び,25-28年デッサウのバウハウスでタイポグラフィーとグラフィック・デザインを教える。そのとき,視覚伝達の心理的・生理的な局面にも注目して社会的な文化としてのデザインの方向を示唆する。38年アメリカに移住。ニューヨークを中心にデザイン,芸術の活動をつづけるが,第2次大戦後,コロラド州アスペンAspenに住み,その後アスペンにおけるデザイン会議,音楽フェスティバルなどの開催に貢献。一連のアスペンの施設の建築設計も彼の手になる。
執筆者:

バイヤー
Ferdinand Beyer
生没年:1803-63

ドイツの作曲家。ピアノの初歩教則本,いわゆる《バイエル・ピアノ教則本》の作曲者として知られる。作曲家としては今日ほとんど忘れられた存在であるが,ピアノのためのサロン風小品や編曲などが残されている。上記ピアノ教則本の日本への導入は,1880年(明治13)に音楽取調掛(東京芸術大学音楽学部の前身)の招きで来日したアメリカの音楽教育家メーソンLuther Whiting Mason(1828-96)が20冊を持ち込んだことに始まる。以後,日本の初等音楽教育の中心となってきた。
執筆者:

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化学辞典 第2版 「バイヤー」の解説

バイヤー
バイヤー
Baeyer, Johann Friedrich Wilhelm Adolf von

ドイツの有機化学者.ベルリンに生まれる.ハイデルベルク大学でR.W.E. Bunsen(ブンゼン)について化学を学んだが,有機化学への興味のためF.A. Kekulé(ケクレ)のもとで研究し,1858年ベルリン大学で学位を取得.1860年ベルリンの実業学校の教師,1871年シュトラスブルク大学教授,1875年ミュンヘン大学教授となった.フタレイン染料を発見し,o-ニトロケイ皮酸よりインジゴを合成し(1880年).その構造を決定した(1883年).そのほか,尿酸誘導体やポリアセチレンの研究がある.友人のKekuléの構造論を支持して,実験の理論的根拠とした.1885年炭素の四面体説にもとづいて,炭素原子価の間の張力が少ないほど環状化合物が安定すること(張力説)を提唱した.講義よりも実地の研究にもとづいて教育を行い,E.H. Fischer(フィッシャー),C. Graebe(グレーベ),V. Meyer(マイヤー),R. Willstätter(ウィルシュテッター)など傑出した化学者を育成した.有機化学と化学工業の発展に対する貢献により,1905年ノーベル化学賞を受賞した.

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DBM用語辞典 「バイヤー」の解説

バイヤー【buyer】

製品やサービスの購入者のこと。ダイレクト・マーケティングでのバイヤー(購入者)をつぎのように区別される。(1)アクティブ・バイヤー(活発な購入者)1年あるいは18ケ月以内に購入している人。(2)マルチ・バイヤー(多頻度購入者)2回以上購入した人。(3)フォーマー・バイヤー(以前の購入者)アクティブ期間を過ぎた人。(4)ホットライン・リスト(最新購入者)新しくリストに加えられた名前。(5)1000円、2500円、5000円、1万円など特定の価格ラインに反応するバイヤー(価格ライン購入者)。(6)ギフト・バイヤー(ギフト購入者)誰かにギフトするために購入した人。(7)プレミアム・バイヤー(おまけ付き購入者)プレミアムの提供につられて購入する人。(8)クレジットカード・バイヤー(クレジットカード購入者)注文をクレジットカードで支払った人。(9)カタログ・バイヤー(カタログで購入した人)。(10)テレビ・バイヤー(テレビ・ショッピングで購入した人)。(11)インターネット・バイヤー(ウェブページで購入した購入者)。(12)スペースアド・バイヤー(雑誌や新聞の広告で購入した人)。一度購入したメディアで購入する傾向があるので、どのメディアで購入しいてるかを分析することが重要。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイヤー」の意味・わかりやすい解説

バイヤー
Baeyer, (Johann Friedrich Wilhelm) Adolf von

[生]1835.10.31. ベルリン
[没]1917.8.20. シュタルンベルク
ドイツの有機化学者。 1858年ベルリン大学で学位取得,同大学私講師 (1860) 。ハイデルベルク大学で R.ブンゼンに学び (58) ,次いで A.ケクレに師事して大きな影響を受けた。ヘント大学 (58) ,ゲベルベ研究所 (60~72) を経てシュトラスブルク大学教授 (72) ,ミュンヘン大学教授 (75) 。インジゴの合成 (80) と構造決定 (83) ,フタレイン系染料の発見,尿酸誘導体,ポリアセチレン,オキソニウム塩の研究,炭酸同化作用の研究 (70) ,環状有機化合物の構造についての張力説 (85) ,ベンゼン構造の集中式の提案 (87) など多彩な研究をし,門下に E.フィッシャーや R.ウィルシュテッターなど有名な有機化学者を輩出した。有機染料とヒドロ芳香族化合物の研究による有機化学および化学工業に対する貢献によって 1905年ノーベル化学賞を受賞した。

バイヤー
Bayer, Herbert

[生]1900.4.5. ハークアムハウスルック
[没]1985.9.30. カリフォルニア,モンテシト
オーストリア生まれのアメリカのグラフィック・デザイナー,画家,建築家。ワイマールのバウハウスで学び,同校の教授となった。のちにベルリンで印刷術と地図学を学び,1938年アメリカに移住。広告,展示のデザインで活躍した。

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百科事典マイペディア 「バイヤー」の意味・わかりやすい解説

バイヤー

オーストリア出身のデザイナー。ハーク生れ。バウハウスで学び,のち教授となる。モホリ・ナギらとともに新しいディスプレーや印刷美術,タイポグラフィー,フォト・モンタージュなどを発表。1938年から米国で活動した。代表作に書体〈ユニバーサル・タイプ〉(1926年),カンディンスキー展のポスター(1926年)などがある。

バイヤー

ドイツの有機化学者。ブンゼン,ケクレに学び,1875年ミュンヘン大学教授。有機合成に関する研究を広く行い,1880年天然染料藍(あい)の色素成分であるインジゴの合成に成功,その構造を決定し,工業的製法を研究。炭素化合物の構造の安定度についてバイヤーの張力説を提唱。1905年ノーベル化学賞。

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流通用語辞典 「バイヤー」の解説

バイヤー【buyer】

小売商、卸売商の仕入れ担当者。バイヤーは、店の仕入れ政策にもとづいて、担当商品の仕入れ計画を立て、適切な商品を、適時に、適量、適切な仕入先から、適切な方法で仕入れを行う責任を有する。マーチャンダイザーの方針にもとづき、仕入品目の選定、仕入量・納品期日の決定、調達先(取引先)の決定し、一定の権限内で計画し、その計画を実行し、販売と利益の責任を担う。バイヤーは、売場経験をもち、担当する商品知識があり、マーケティング発想(トレンドの読み)ができ、数字に強く、倫理観をもっていることが必要とされる。

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世界大百科事典(旧版)内のバイヤーの言及

【インドール】より

複素環式芳香族化合物の一つで,2,3‐ベンゾピロール,1‐アザインデン,1‐ベンズアゾールなどと呼ばれる。1866年J.F.W.A.vonバイヤーがインジゴの構造研究の際はじめて見いだし,インジゴにちなみ命名された。コールタール,ジャスミン油などの花精油,哺乳類排出物などの中に存在する。…

【塗料】より

…85年イギリスのパークスAlexander Parkes(1813‐90)はこれを塗料に利用する特許を取得した。1872年,ドイツのJ.F.W.A.vonバイヤーはフェノールとホルマリンにより不溶性物質(フェノール樹脂の発端)を発見し,イギリスのW.スミスが初めてグリセリンと無水フタル酸からグリプタル樹脂(アルキド樹脂)を1901年工業的につくりだした。これを油で変性して塗料に適するようにしたのはさらに10年後であった。…

【バウハウス】より

…このころからバウハウスの卒業生が教授陣に加わりはじめる。タイポグラフィーと広告の部門を築いたH.バイヤー,家具に新境地をひらいていたM.L.ブロイヤー,彫刻のシュミットJ.Schmidtらである。 バウハウスはワイマール時代には建築の部門をもっていなかったが,27年グロピウスは建築部門を設けるとともに,スイス人の建築家マイヤーHannes Meyer(1889‐1954)を招いた。…

※「バイヤー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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