湿式製錬法における鉱石から金属成分を溶出する工程(リーチング工程)に,特殊な微生物がもつ金属溶出に効果的な能力を活用して,金属成分を有利に回収しようとする技術。採鉱や鉱山排水処理にも応用されている。用いる微生物の主役が,鉱山の坑内水のような環境に生育し,硫黄や鉄(Ⅱ)を酸化するチオバシルス・フェロオキシダンスThiobacillus ferrooxidansなどの細菌bacteriaであるためこう呼ばれる。しかし近年,細菌以外の微生物の役割も重視され,微生物製錬microbial leaching,生物湿式製錬biohydrometallurgyなどとも称される。本技術は低品位鉱,高品位鉱いずれにも適用できるが,最近の厳しい鉱業事情および本技術の工程と管理が簡単である特徴から,経済的に処理できない低品位鉱や廃石に,また採掘時に坑内に掘り残された残鉱に適用するのに関心がもたれている。現在,ウラン鉱山や銅鉱山で実用化されており,低品位廃鉱石や残鉱からウランや銅を回収している。廃鉱石の場合は不透水性の人工床や大地に鉱石を積み重ね,上から微生物を含む溶出液を連続的に散水し,堆鉱石中で微生物を増殖させ,金属を溶かし出す。残鉱の場合は鉱床の上部から溶出液を散水し,鉱床内で溶出液を還流させながら微生物を増殖させ,金属を溶出する。流出液から金属を回収する方法は対象金属で異なる。銅鉱石では銅が硫酸銅として溶出されるため,流出液を鉄くずなどと接触させるだけで沈殿銅として回収できる。しかし,本技術は完成されたものとはいえず,微生物がいかにして金属を溶出するかについてもまだ十分解明されていない。さらに,微生物の金属溶出能力を増強させる方法や微生物を異常環境(高酸性,高熱,高金属イオン濃度など)へ適応させる方法などの基本的問題も未解決であり,遺伝子工学的手法など新しいアプローチが試みられている。
執筆者:冨塚 登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
微生物精錬ともいう.微生物を利用して,鉱物,鉱石中の有用金属を溶出して精錬する方法.微生物は硫黄酸化細菌Thiobacillus,鉄酸化細菌Ferrobacillusである.生育に必要な炭素源は空気中の二酸化炭素で,これを同化するために硫黄および硫黄化合物の酸化,あるいは FeⅡの FeⅢへの酸化によって遊離したエネルギーを利用する.微生物による鉱石,鉱物からの金属イオンの浸出については,微生物の作用により生成した代謝産物(硫酸,硫酸第二鉄など)による間接的な作用説と,微生物が直接鉱石中の金属に作用して浸出する説とがある.低品位鉱(銅含有量0.5% 前後),残鉱石,選鉱,製錬の困難な鉱石,および精鉱から種々の浸出法と微生物の作用によって有用な金属を溶出する.銅の場合,浸出液を鉄くずの入った収銅槽に導き,鉄と銅を置換させて沈殿銅(金属銅として70~90%)を回収する.アメリカのユタ州内の鉱山で,選鉱廃さいから銅の回収が実際に行われている.銅以外にウラン,マンガン,モリブデン,亜鉛,ニッケルなどの金属の回収について可能性がある.[別用語参照]硫黄細菌,鉄細菌
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この場合に粗砕きした鉱石を大きなタンクに入れて空気吹込みによる酸化とかくはんを行いながら金属元素を溶かし出すバットリーチングvat leaching,鉱石をヤード(貯鉱)に堆積し,これに薄い酸やアルカリの溶液を循環・散布するヒープリーチングheap leaching,鉱体に多数の割れ目を入れ,直接に水や酸を循環させるインプレースリーチングなどの方法がある。また坑内に生息する鉄酸化バクテリアなどを育成し,その働きを利用するリーチング法はバクテリアリーチングと呼ばれる。【井上 外志雄】。…
※「バクテリアリーチング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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