バティ(英語表記)Gaston Baty

改訂新版 世界大百科事典 「バティ」の意味・わかりやすい解説

バティ
Gaston Baty
生没年:1885-1952

フランス演出家リヨンの裕福な家庭に生まれ,ドイツに留学して表現主義をはじめとする最先端の演出理論を学び,その成果を1920年にジェミエの主宰する〈冬のサーカス〉での群衆劇《オイディプス王》や《大田園劇》で発揮する。ついでルノルマンクローデルの演出でも成功し,22年〈幻想劇団〉を組織し,オデオン座,シャンゼリゼ小劇場,モンパルナス座に拠って,自作の舞台装置陰影に富んだ照明と効果的な音楽によって観客を詩的雰囲気に没入させることを目ざす。戯曲より演出を優先して演劇を〈再演劇化〉するというその主張は反論も招くが,ギャンチョンの《娼婦マヤ》(1924)や《罪と罰》(1933),《ボバリー夫人》(1936)など小説の脚色真価をみせ,理論書《仮面と香炉》(1926)とともに現代演劇観の先駆となった。晩年は舞台優先の主張をさらに徹底するため故郷リヨンの伝統的人形劇再興に力を注いだ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バティ」の意味・わかりやすい解説

バティ
ばてぃ
Gaston Baty
(1885―1952)

フランスの演出家。リヨン近郊のカトリック信仰に厚い旧家に生まれる。リヨン大学卒業後、ミュンヘン大学に留学して芸術史を学び、ラインハルトメイエルホリドなどの演出法や、クレイグ、アッピアの演劇理論に共感。1919年ジェミエの演出助手となり、翌年パリのサーカス劇場で民間伝承の劇化『大田園劇』を演出、22年独立して劇団「幻想の仲間」を創設。友人シモン・ガンティヨンの『娼婦(しょうふ)マヤ』で大成功を博し、30年モンパルナス座に本拠を移す。後年同劇場はモンパルナス・ガストン・バティ座といわれた。照明など舞台造形面を重視し、ルイ・ジューベらと「4人連盟(ル・カルテル・デ・カトル)」を組み、新演劇活動の一翼を担った。

[石澤秀二]

『ガストン・バティ著、坂丈緒訳『演劇の真髄』(1942・白水社)』

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百科事典マイペディア 「バティ」の意味・わかりやすい解説

バティ

フランスの演出家。リヨン大学からミュンヘンに遊学。ラインハルトの影響をうけ,スペクタクル性と音楽性の濃い演劇を唱道,コポージュベなどの戯曲第一主義と対立した。《罪と罰》《ボバリー夫人》など脚色多数。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バティ」の意味・わかりやすい解説

バティ
Baty, Gaston

[生]1885.5.26. ペリュサン
[没]1952.10.13. ペリュサン
フランスの演出家。ドイツでフリッツ・エルラーらに学び,表現主義の影響を受けてパリに帰り,F.ジェミエに見出されて,1919年「大田園劇」などをサーカス小屋で上演。その後シャンゼリゼ座を経て,劇団シメーヌを設立,『娼婦マヤ』や『ボバリー夫人』で舞台装置,照明,音楽の効果を重視するすぐれた演出を行なった。晩年には郷里の南フランスで人形劇の再興に尽した。

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世界大百科事典(旧版)内のバティの言及

【サモス[島]】より

…東西に長く(45km),西に行くほど山が深くて高い。北岸のバティとカルロバシ,南岸のピタゴリオ(最近までティガーニと呼ばれていたが,古代の哲学者ピタゴラス出身の故郷として改名された)がおもな港で,ピタゴリオが古代のサモス市にあたる。オリーブ,ブドウの栽培が盛んでサモス産ブドウ酒は有名である。…

【フランス演劇】より


【20世紀】
 20世紀フランス演劇をその変革の相においてとらえれば,大別して三つの時期を認めることができる。第1は,1913年,J.コポーによる〈ビユー・コロンビエ座〉創設から,両大戦間におけるL.ジュベ,C.デュラン,G.ピトエフ,G.バティの4人の演出家による〈カルテル四人組〉の時代,第2は,J.L.バローによるカルテルの遺産の発展と並行して50年代に起きる三つの事件,すなわちJ.ビラールによる〈民衆演劇運動〉と〈演劇の地方分化〉の成功,E.イヨネスコ,S.ベケット,A.アダモフ,J.ジュネらの〈50年代不条理劇〉の出現,そして〈ブレヒト革命〉であり,第3の時期は,68年のいわゆる〈五月革命〉によって一挙に顕在化した社会的・文化的危機の中で,演劇が体験した一連の大きな〈異議申立て〉(A.アルトーの徴の下に広がった〈肉体の演劇〉を中核とする)とその結果である。
[演出家の時代――コポーと〈カルテル四人組〉]
 演出家で集団の指導者をフランス語でアニマトゥールanimateurと呼び,20世紀を〈アニマトゥールの世紀〉と称するが,コポーはアニマトゥールの枠組みそのものを提示した人物である。…

※「バティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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