バーミンガム(読み)ばーみんがむ(その他表記)Birmingham

翻訳|Birmingham

デジタル大辞泉 「バーミンガム」の意味・読み・例文・類語

バーミンガム(Birmingham)

英国イングランド中西部の工業都市。中世から金物工業が行われ、産業革命とともに金属・機械などの工業が発達。人口、行政区99万(1991)。
米国アラバマ州中北部の工業都市。1871年に製鉄の町として建設され、鉄鋼業や商業が盛ん。人口、行政区23万(2008)。バーミングハム

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「バーミンガム」の意味・読み・例文・類語

バーミンガム

  1. ( Birmingham )
  2. [ 一 ] イギリス、イングランド中央部の工業都市。付近に石炭・鉄鉱石を産し、イギリス第一の製鉄業地として発展した。現在は自動車・電機・食品などの工業が盛ん。
  3. [ 二 ] アメリカ合衆国南東部、アラバマ州の工業都市。合衆国南部最大の製鉄業の中心地

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーミンガム」の意味・わかりやすい解説

バーミンガム
ばーみんがむ
Birmingham

イギリス、イングランド中部、ウエスト・ミッドランズ大都市県の工業都市。人口97万7091(2001)。首都ロンドンに次ぐイギリス第二の大都市。ミッドランズ地方The Midlandsの中心都市でもあり、北西の工業都市ウルバーハンプトンとの間にブラック・カントリー(黒郷)とよばれる一続きの工業集積地域を形成している。発展の原動力は、産業革命期に石炭と鉄鉱石に恵まれたミッドランズ地方(とくにブラック・カントリー)がイギリス有数の製鉄・金属工業地帯として成長したためである。ジェームズ・ワットがマシュー・ボールトンの協力により最初の蒸気機関の製作に成功したのは、1762年バーミンガムにおいてであった。

 急速な工業化、都市化に伴ってスラム街が増加し環境悪化が進行したが、事態が劇的に改善されたのは第二次世界大戦後である。すなわち、大戦中、兵器産業があったためドイツ軍の爆撃で破壊されたが、戦後、被害地区を次々に再開発し、古く汚い市街地の大半が一掃された。今日、大企業の事務所が集まるビジネス街、ミッドランズ地方全体を商圏・サービス圏とする中心商店街や卸売市場、劇場、美術館、図書館、大学などが諸官庁とともに都心部を形成する。都心からやや離れた地区に工場地帯が広がり、鉄鋼業は衰えたが、自動車、オートバイ、自転車、電気機械、ガラス、金属、食品などの諸工場が立地する。市の工業発展の跡をたどる資料に富む科学・工業博物館、優れた絵画を収めるセントラル博物・美術館、18世紀建造の聖フィリップ教会などがある。

[久保田武]

歴史

バーミンガムは、市場を有した都市として早くから形を整えていたが、中世から近代初頭にかけては拡大が停滞していた。ところが18世紀後半以降、製鉄・金属・機械工業を主軸に、イギリス産業革命の中心地の一つとして飛躍的な発展を遂げていった。17世紀末に1万5000であった人口が、18世紀末には7万に、20世紀初頭には52万へと急増したことに、その拡大ぶりがよく示されている。18世紀からの工業化を推進したのは、グループ「月の会」Lunar Societyをつくっていたジェームズ・ワット、マシュー・ボールトン、ジョゼフ・プリーストリーなどをはじめとする非国教徒を中心とした知識人たちであった。工業生産に必要な原料や製品の大量輸送は、1772年に開通したバーミンガム運河によって可能となり、さらに19世紀に入ると鉄道もいち早く敷設されて生産力の増大に大きく寄与した。

 都市としての急速な拡大の陰で、政治的権利の伸長は遅れ、下院への議員選出権獲得は1832年の第一次選挙法改正を待たなければならなかったが、政治的意識の高い市民は多く、19世紀のイギリスを代表する政治家であるジョン・ブライトやジョゼフ・チェンバレンも、バーミンガムを基盤として政治活動を行った。チェンバレンは1873~76年に市長となり、スラムを一掃するなど近代的都市への改造に貢献した。20世紀に入ってからも、都市計画や一方通行道路の導入など、他の都市に先駆けて実験的試みが行われた。第二次世界大戦で空襲によりかなりの被害を被ったものの、戦後は順調な復興を遂げた。

[木畑洋一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バーミンガム」の意味・わかりやすい解説

バーミンガム
Birmingham

イギリスイングランド中部,ウェストミッドランズ地域の中心都市。バーミンガム地区を構成する。ロンドンに次ぐイギリス第2の都市。ロンドンの北西約 177km,トレント川セバーン川,エーボン川の谷に取り巻かれたバーミンガム丘陵上に位置する。イギリスのほかの大都市に比べて歴史は新しく,集落が形成されたのはアングロ・サクソン時代になってからと考えられる。1166年勅許状を得て市場町となったが,14世紀初めまでは見るべきものもない小さな町にすぎなかった。15世紀末頃から金属製品の製造が盛んになり,刃物類や,のちには銃器,装身具類,真鍮製品などの生産で知られるようになった。18世紀には運河により南スタッフォードシャー炭田と結ばれるとともに,ジェームズ・ワットと市の工業家マシュー・ボールトンの共同経営会社による蒸気機関の製造が始まり,産業革命の中心的都市として工業が飛躍的に発展した。その後もイギリスの製造業の中心地として自動車,金属,機械工業が主要産業となった。工業の発展に伴って人口が急増し,市街地が無計画に拡大したため,20世紀に入って都市計画が実施された。第2次世界大戦後は周辺部への人口流出がみられるようになり,1960年以降,市の過剰人口を吸収するため外部にレディッチ,テルフォードの二つのニュータウンが建設された。しかし 1970年代以降,イギリスの製造業の衰退とともに雇用人口の減少が続き,経済が停滞した。今日では,従来の重工業以外に電子工学,プラスチック,化学など多岐にわたる工業に力が注がれ,宝飾品,銀製品などの伝統産業も有名。市の中心はビクトリア広場で,これに面して市庁舎やイタリア・ルネサンス様式の市会議事堂があり,議事堂の時計台は市のシンボルとなっている。バーミンガム博物館,科学産業博物館,シェークスピア記念図書館,メーソン・カレッジとして発足したバーミンガム大学,アストン大学などがある。郊外に国際空港があり,隣接して大規模な見本市会場ナショナル・エキシビション・センター(1976)がある。地区面積 264km2。地区人口 100万1200(2005推計)。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「バーミンガム」の意味・わかりやすい解説

バーミンガム
Birmingham

イギリス,イングランド中部,ウェスト・ミッドランズ州(旧,ウォリックシャー)にある工業都市。地名は〈ベオルンマンド族の村ham〉に由来。人口98万(2001)で,面積とともにイギリス第2位,またコナーベーション(連接都市圏)の人口は200万を超える。セバーン,トレント,エーボンの各河谷にはさまれたミッドランズ高原上に位置し,スタッフォードシャー,ダービーシャーの炭田や付近の鉄山,および充実した運河・道路・鉄道網を背景に,ミッドランズ工業地域の中核をなす。現在,鉄鋼業は衰退し,伝統ある金属工業や自動車,電機,化学などの工業が発達する。

 集落の起源は古くアングロ・サクソン時代にあり,1166年には市場開設の特許状が出されて,皮革,羊毛交易の中心地となるが,本格的な発展は金属加工業の成立する15世紀以降である。とくにピューリタン革命では議会軍に1万5000本の剣を供給したことは有名である。産業革命期にはバーミンガム運河の開削,J.ワットとM.ボールトンの協力によるソーホー金属工業の建設(1762),酸素発見者J.プリーストリーやガス灯発明者W.マードックらの活躍などにより,大工業都市へと成長した。また19世紀後半には市長を務めたJ.チェンバレンらの尽力により,スラム改造や水道・ガス事業が推進され,さらに選挙法改正など国政にも大きな影響を与えた。1891年と1911年には大バーミンガム計画に基づく市域拡張が行われている。第2次世界大戦中は兵器産業の中心となったため,ドイツ軍の空襲で打撃を受けた。市街はビクトリア広場を中心に展開し,バロック様式のセント・フィリップ大聖堂や,宗教改革以後のイングランドで初めて建設されたカトリックのセント・チャド大聖堂,シェークスピア図書館,バーミンガム大学などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「バーミンガム」の意味・わかりやすい解説

バーミンガム

英国,イングランド,ウェスト・ミッドランズ州の中心都市。ロンドンの北西約180kmに位置し,ロンドンにつぐ第2の都市。運河で北海,大西洋に通じ,鉄道の集中する水陸交通の要地。ミッドランズ炭田に位置,近接して鉄鉱山もあり,産業革命期のワットと企業家ボールトンによるソーホー金属工業の建設などを契機に大工業都市に発展。鉄鋼,その他金属,機械,自動車,航空機,車両,化学などの工業が数多く立地し,周辺地区を含めてブラック・カントリーと呼ばれる重工業地域をなす。大学(1900年創立),13世紀の聖マーティン教会がある。第2次大戦中ドイツの猛爆撃を受けた。107万3045人(2011)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「バーミンガム」の解説

バーミンガム
Birmingham

イギリスのミッドランド地方の工業都市。産業革命とともに金属工業を中心にする多くの企業が立地し,周辺の地帯を含めて「ブラック・カントリ」の異名がつけられた。また19世紀における急進主義の運動にこの都市が果たした役割も大きい。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「バーミンガム」の解説

バーミンガム
Birmingham

イギリスのウェスト・ミッドランズ州にある工業都市
ロンドンにつぐ大都市で,製鉄業で世界的に有名。産業革命以後,付近のスタッフォードシャー・ダービーシャーから石炭・鉄を豊富に産出したため,製鉄業を中心に発展し,運河・鉄道の便により付近の工業地帯の中心として繁栄した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「バーミンガム」の解説

バーミンガム

ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのOVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」に登場する宇宙戦艦。地球連邦軍のバーミンガム級戦艦。全長398メートル。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のバーミンガムの言及

【最小作用の原理】より

…質点はその作用積分が各時刻において最小となるような軌道を描くという力学原理。解析力学の枠組みにおけるもっとも一般的な形に述べられる運動法則,すなわちハミルトンの原理が現れる以前,直観的に運動法則を述べる試みとして,1744年P.L.M.deモーペルテュイによって最初に提出された。ここで作用積分とは,質点の運動量p(t)をその描く軌道q(t)に沿って積分する,のことを意味していた(tは時間)。…

※「バーミンガム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android