植物性文様の呼称の一つ。2本に分かれた渦巻の分岐点を中心に扇形にひらいた形をいう。これは古代エジプトのロータス系の文様が起源だとされ,各地域・時代でさまざまに展開した唐草文様の重要なモティーフになっている。パルメット文はかつて忍冬(にんどう)文と呼ばれたこともあったが,現在では必ずしも忍冬(スイカズラ)の模倣によって生じたのではなく,空想的な植物文様とみる方が有力となっている。エジプトでは扇形が左右対称で動きが少なかったが,それをリズミカルな植物文様としたのはギリシアである。ギリシア陶器や墓碑の浮彫に描かれたパルメットは,有機的なふくらみを持ち,萼(がく)の部分の渦巻ものびやかである。ギリシアのパルメット文様はかなり写実的な傾向があり,ぎざぎざの切れ込みのあるアカンサス文様も出現した。西アジアではパルメットの葉の部分を長くしたり,巻きこんだり絡ませたりすることによって多種類の文様を作り出した。エルミタージュ美術館蔵の銀器やクテシフォン出土のストゥッコ装飾板など,ササン朝ペルシアの遺品をはじめとしてひろく工芸品の装飾に愛用され,またザクロやブドウをともなった美しい唐草文様をもつくり出している。仏教美術でも造形感覚はまだギリシア的ではあるが,紀元前3世紀古代インドのアショーカ王石柱柱頭の浮彫装飾にすでに使われている。よりインド化された形としては葉の先端を内側に巻きこんで蕨手(わらびで)形になったものがサーンチー第1塔の欄楯浮彫などにみられる。半パルメットを連続してつないで唐草にしたものは,石彫台座や仏像の光背などにみられるが,葉を反転させる形で表現されている。パルメット文様が中国へ入ってきたのは現存する遺例からすると5世紀以降北魏と思われるが,実際はもっと早かったようである。敦煌石窟の北魏以降の壁画には多数のパルメット文様がみられる。これらの形には西域の影響とともに伝統的な雲文や虺竜(きりゆう)文の影響が見られ,パルメット唐草はしだいに飛天や神獣また蓮華とパルメットが一体化して中国的に展開していく。唐代になるとパルメットはそれ自体花のように豊麗な形になり,いわゆる宝相華(ほうそうげ)文様が生まれる。こうしたパルメット文様は朝鮮半島を経て日本へ伝わった。古墳時代の馬具の装飾文様に用いられているのが最古であろう。法隆寺の軒平瓦には三葉形や四葉形の半パルメットがみられる。仏像の光背や宝冠にも半パルメットの唐草が多用されているが,薬師寺聖観音像宝髻(ほうけい)のパルメットはとりわけ簡素で美しい。正倉院御物の工芸品にも密陀彩絵小櫃をはじめとして,多種多様のパルメット文様がみられる。
執筆者:長田 玲子
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…南フランスのカンヌに生まれ,ナチ占領下のパリから南フランスに逃げてきた映画人たちに接して映画や演劇に関心をもち,舞台や映画に端役出演したのちパリのコンセルバトアール(国立音楽演劇学校)に学び,卒業後,舞台でカミュの《カリギュラ》(1945)の主役を演じて人気を不動のものにし,さらにラディゲの小説を映画化したクロード・オータン・ララ監督の《肉体の悪魔》(1947)でブリュッセル映画祭の最優秀男優賞を受賞して国際的なスターとなった。その後クリスティアン・ジャック監督《パルムの僧院》(1948),《花咲ける騎士道》(1952),ルネ・クレール監督《悪魔の美しさ》(1950),《夜ごとの美女》(1952),マルセル・カルネ監督《愛人ジュリエット》(1951),ルネ・クレマン監督《しのび逢い》(1954),クロード・オータン・ララ監督《赤と黒》(1954),ジャック・ベッケル監督《モンパルナスの灯》(1957),ロジェ・バディム監督《危険な関係》(1959)などに出演し,洗練された洒脱な演技と個性の魅力で圧倒的な人気を集めた。1951年以降はジャン・ビラール主宰の国立民衆劇場(TNP(テーエヌペー))に属して演劇に情熱をそそぎ,《エル・シド》《ハンブルグの王子》《ロレンザッチオ》などの名舞台を演じ,またハウプトマンの叙事詩を映画化した《ティル・オイレンシュピーゲルの冒険》(1956)を記録映画作家ヨリス・イベンスと共同監督している。…
※「パルメット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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