宝相華文(読み)ほうそうげもん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「宝相華文」の解説

宝相華文
ほうそうげもん

仏教系の文様の一種。宝相とはバラ科に属する植物の中国名で,これを文様としたものとも,蓮華文の変化したもの,またはアオイ科のブッソウゲを文様化したものともいう。優美に文様化された植物の装飾文様で唐花,瑞花ともいう。中国では,初唐の時代から用いられ,唐代に盛行。日本では飛鳥時代に盛行した忍冬文 (にんどうもん) に代って奈良時代に広く用いられ,平安時代以降にも愛用された。有職文様となった小葵文はこの系統に属する。正倉院織物図案をはじめ,白鳳時代の『橘夫人念持仏厨子』などの工芸品の装飾文様,薬師寺東塔,唐招提寺金堂醍醐寺五重塔などの堂塔の室内装飾,唐式鏡の背文,寺院の堂内具や荘厳 (しょうごん) の装飾文様として用いられた。彩色文様としては大部分繧繝 (うんげん) 彩色技法によって表わされ,独自の美しさを示した。

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百科事典マイペディア「宝相華文」の解説

宝相華文【ほうそうげもん】

中国の唐代,日本では奈良〜平安時代に盛行した文様。8弁の先のとがった花で,インドの花文が東漸につれて複雑華麗になったもの。敦煌莫高窟の天井画や新羅の方【せん】(ほうせん),正倉院宝物の染織品にみられる。
→関連項目パルメット

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日本大百科全書(ニッポニカ)「宝相華文」の解説

宝相華文
ほうそうげもん

中国では唐・宋(そう)代、日本では奈良時代から平安時代にかけて流行した華文である。「ほっそうげもん」ともいう。『花経』『洛陽(らくよう)花木記』『缾史(へいし)月表』あるいは『花史』『草花譜』などの記事を総合すると、宝相華はボタンイバラ(トキンイバラとも)をさすものと考えられる。また宋代の詩人・梅堯臣(ばいぎょうしん)(1002―60)や苑成大(はんせいだい)(1126―93)の詩に宝相華を詠んだものがある。ただこの模様が、元来ボタンイバラをモチーフとした華文であるのか、あるいは、牡丹(ぼたん)、蓮花(れんげ)、葡萄(ぶどう)などから合成された架空の花模様をボタンイバラに見立て、宝相華と名づけられるようになったかは明らかでない。

村元雄]

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世界大百科事典 第2版「宝相華文」の解説

ほうそうげもん【宝相華文】

中国,唐代の唐草文様のうち,あたかも花を思わせるような豊麗な形のものを一般に宝相華文様と呼んでいる。〈ほっそうげもん〉ともいう。しかしどのような形式の唐草を宝相華と名付けるかについては,はっきりと規定されてはいない。またその起源定説はないが,実際に宝相華という花があってそれを文様化したというよりは,唐代の意匠家がパルメット唐草をその時代にふさわしく花のイメージをもって変えたものとみられる。そのイメージの中にはボタン(牡丹)やシャクヤク(芍薬),フヨウ(芙蓉)などがあったと思われる。

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