ヒメジャノメ(英語表記)Mycalesis gotama

改訂新版 世界大百科事典 「ヒメジャノメ」の意味・わかりやすい解説

ヒメジャノメ (姫蛇の目)
Mycalesis gotama

鱗翅目ジャノメチョウ科の昆虫。コジャノメに似るがより淡色で,裏面中央の明色帯は黄白色となり,コジャノメのように紫色を帯びることがない。開張4.5~5.7cm。アッサムミャンマーから中国,台湾,朝鮮半島から日本にかけて分布し,日本では北海道南端部から本州,四国,九州を経て屋久島に及ぶ。南西諸島には分布せず,かわりに同属のリュウキュウヒメジャノメがいる。雑木林の周辺,川沿いの草むらなどにふつうに見られ,水田に発生することも多い。本州中部の暖地では年3~4回発生し,成虫は5月中旬~10月中旬にかけて見られる。ほとんど花を訪れることがなく,腐敗した果実によく集まる。幼虫の食草はおもにイネ科のススキ,ジュズダマ,カヤツリグサ科のシラスゲ,カサスゲなど。幼虫には緑色型のほか褐色型があり,4齢幼虫で越冬する。リュウキュウヒメジャノメM.madjicosaは南西諸島の固有種。幼虫は褐色のみで,頭部の突起が長い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメジャノメ」の意味・わかりやすい解説

ヒメジャノメ
ひめじゃのめ / 姫蛇目蝶
Chinese bushbrown
[学] Mycalesis gotama

昆虫綱鱗翅(りんし)目ジャノメチョウ科に属するチョウ。北海道南西部より九州の屋久(やく)島に至る各地に広く分布し、本州中部以南の暖地ではジャノメチョウ科中の最普通種の一つである。奄美(あまみ)大島より八重山(やえやま)列島に産するものは、近年リュウキュウヒメジャノメという別種として扱われるようになった。はねの開張53ミリメートル内外。分布の北限に近い青森県あたりでは年2回の発生(第1化は6月中旬から7月上旬、第2化は8月中旬から9月上旬)で、本州中部の平地(たとえば愛知県)では年3回の発生(5月下旬から7月上旬、7月中旬から9月上旬、9月上旬から10月下旬)。幼虫の状態で冬を越す。幼虫の食草はイネを含むイネ科の雑草である。

白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒメジャノメ」の意味・わかりやすい解説

ヒメジャノメ
Mycalesis gotama

鱗翅目ジャノメチョウ科。前翅長 24mm内外。翅表は暗黄褐色。裏面は灰褐色で,前後翅とも中央に灰白色の横帯が1本ずつあり,前翅に2~3個,後翅に6個の眼状紋がある。翅表では前翅の大小2紋以外は不明瞭である。雄は後翅前縁に毛束をもつが雌では欠く。幼虫はイネ科植物を食べ,成虫は年2~4回出現する。日本全土,台湾,朝鮮,中国,インドシナ半島,ミャンマーなどに分布する。多くの亜種に分けられ,北海道,本州,四国,九州に産するものを亜種 M.g.fulginia,先島諸島 (宮古・八重山諸島) 産を M.g.madjicosaという。

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