ヒメネス(英語表記)Juan Ramón Jiménez

精選版 日本国語大辞典 「ヒメネス」の意味・読み・例文・類語

ヒメネス

(Juan Ramón Jiménez フアン=ラモン━) スペイン詩人。スペイン近代派の創始者一人。音楽性と色彩感に富んだ作風から、次第に純粋詩的傾向を強めた。代表作「プラテーロと私」。一九五六年ノーベル文学賞受賞。(一八八一‐一九五八

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デジタル大辞泉 「ヒメネス」の意味・読み・例文・類語

ヒメネス(Juan Ramón Jiménez)

[1881~1958]スペインの詩人。音楽性・色彩感に満ちた叙情詩から出発。のち、装飾性を排した純粋詩を追求した。1956年ノーベル文学賞受賞。代表作「プラテーロとわたし」。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒメネス」の意味・わかりやすい解説

ヒメネス
Juan Ramón Jiménez
生没年:1881-1958

スペインの詩人。アンダルシアのモゲールに生まれる。19歳のときマドリードに出て,R.ダリオバリェ・インクランなどの近代派詩人の知遇を得る。《睡蓮》(1900),《哀調アリア》(1903)などの詩集は彼らとの友情の産物であり,すぐれた音楽性と豊かな色彩感にあふれ,そのうえにアンダルシア人特有の熱っぽい感情が付加されている。1917年に発表した散文詩《プラテーロと私》は各国語に訳され,彼の文名を世界的なものとした。この作品は,終生こよなく愛した故郷モゲールを舞台にしたロバと少年との感動的エレジーであり,作者の最高傑作である。《新婚詩人の日記》(1917)以後,近代主義を脱し,地味で知的な〈純粋詩〉を目ざし,《永遠》(1918),《石と空》(1919)などを発表。《内奥の獣》(1949)にいたり,純粋詩は神性を帯びた精神的直感の境地に到達している。その作風はガルシア・ロルカをはじめ,スペインやラテン・アメリカの詩人たちに大きな影響を与えた。内戦勃発とともに,キューバ,アメリカへ渡り,ノーベル文学賞受賞(1956)の2年後,プエルト・リコで死去
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメネス」の意味・わかりやすい解説

ヒメネス
ひめねす
Juan Ramón Jiménez
(1881―1958)

スペインの詩人。アンダルシア地方のモゲールに生まれる。19歳のとき学業を捨てマドリードに出る。1900年の『すみれの心』、それに続く『哀調のアリア』(1903)などの一連の作品は、ロマン主義的な沈潜した叙情と近代主義(モダニズム)の音楽と色彩に満ちている。10年前後の『孤独のひびき』などの感覚的で同時に内密的な詩風は、16年の生涯の伴侶(はんりょ)セノビアとの結婚、その後のアメリカ旅行で一変する。『新婚詩人の日記』(1917)はその結晶である。いっさいの装飾を捨てた裸の詩、しかも内省的、知的な詩を標榜(ひょうぼう)、『石と空』(1919)はその延長上にある。この詩的探求の道程は『すべての季節』(1936)、『内奥の獣』(1949)と進むにつれ完成の域に達する。詩人の意識は自然と神秘的な融合を遂げ、唯一の表現、詩人のいう神を得る。39年、内乱を避けてアメリカ、プエルト・リコに住む。56年ノーベル文学賞受賞。散文詩の珠玉の作品『プラテーロと私(わたし)』(1917)がある。

[有本紀明]

『荒井正道訳『石と空』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』

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百科事典マイペディア 「ヒメネス」の意味・わかりやすい解説

ヒメネス

スペインの詩人。アンダルシアの生れ。〈人間であるより前にまず詩人であった〉といわれるほど,その生が詩に直結していた彼は,ダリオを中心とする〈モデルニスモ〉の影響下に詩作を始めた。この期の代表作に《哀調のアリア》や《プラテーロと私》がある。しかし,1916年ごろからあらゆる装飾を捨て詩の精髄をとらえようとする純粋詩の理論を唱え,これは《永遠》,《石と空》などに結晶した。1936年内乱をのがれてキューバ,アメリカに移住し,プエルト・リコで死去。1956年ノーベル文学賞。
→関連項目カステルヌオーボ・テデスコ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒメネス」の意味・わかりやすい解説

ヒメネス
Jiménez, Juan Ramón

[生]1881.12.24. モゲール
[没]1958.5.29. サンフアン
スペインの詩人。 1956年ノーベル文学賞受賞。日本では散文詩『プラテロと私』 Platero y yo (1917) の作者として知られる。象徴派や近代派の影響のもとに,色彩と音楽性の豊かな詩人として出発,『新婚詩人の日記』 Diario de un poeta recién casado (17) 以後は,『永遠』 Eternidades (18) や『石と空』 Piedra y cielo (19) などの詩集で,透明な言語の結晶ともいうべき「純粋詩」に向った。 39年亡命,おもにプエルトリコに住んだ。ほかに『内奥の獣』 Animal de fondo (49) など。

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世界大百科事典(旧版)内のヒメネスの言及

【スペイン文学】より

… 19世紀後半のリアリズムの時代になると,主として社会的テーマを身近なもの,地方的なものに即して描く,風俗描写的な〈郷土小説〉が数々の佳作を生むことになる。このジャンルの嚆矢となったフェルナン・カバリェロFernán Caballero(1796‐1877)の《かもめ》,P.A.deアラルコンの《三角帽子》,そしてアンダルシアを舞台に,恋と宗教的使命の板ばさみとなった神学生の心の葛藤を描いたJ.バレーラの《ペピータ・ヒメネス》などである。この傾向に属するものの,はるかにスケールが大きく,セルバンテスに次ぐ小説家と見なされているのがB.ペレス・ガルドスである。…

※「ヒメネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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