ファウスト(英語表記)Faust

翻訳|Faust

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ファウスト
Faust

ドイツの詩人,小説家,劇作家ゲーテの詩劇。第1部 1808年,第2部 32年刊。 24歳の頃にファウスト伝説に触発されて筆を起した『初稿ファウスト』 Urfaust (1775) から約 60年にわたって書き進められた畢生の大作。無限の探究精神をもったファウストは,あらゆる学問にも満足せず,悪魔メフィストフェレス契約を結び,宇宙の神秘を探り人生を味わいつくして,「ある瞬間に向って,とどまれ,お前はいかにも美しい」と言いうるなら,魂を引替えにしてもよいとした。第1部は純真な乙女グレートヒェンとの恋と赤子殺しの罪による彼女の刑死をもって終る。第2部では大世界に乗出したファウストがさまざまな苦難を経て現世的な国家経営に満足を得て魂の救済も得る。ゲーテの思想と文学が混然と集約された代表作で,世界文学史上の傑作。

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デジタル大辞泉の解説

ファウスト(Faust)

15世紀末から16世紀にかけて、ドイツに実在したという錬金術師ファウストの事跡をもとに形成された民間伝説の主人公。博学で、悪魔との契約で魔力を得、享楽と冒険の遍歴生活を送るが、神に背いた罰で破滅する。
ゲーテ戯曲二部からなる。第一部は1808年、第二部は32年刊。の伝説に取材。ファウスト博士が、悪魔メフィストフェレスと魂を賭(か)けた契約をし、世界を遍歴する物語。第一部ではグレートヘンとの悲恋、第二部では理想の国家建設への努力と、純粋な愛によって救われた魂の昇天が語られる。
グノー作曲のオペラ。全5幕。1859年パリで初演に基づく。

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百科事典マイペディアの解説

ファウスト

1500年前後のドイツに実在し,自然学的知識を利用して魔術を行ったとされる人物ファウストGeorg Faustの所行を核に,古代以来の種々の魔術師伝説が加わって形成された伝説の主人公。伝承人名としてはヨハネス(ヨハン)・ファウスト。1587年に最初の刊本(民衆本)が出版され,これに続いてC.マーロー,レッシング,ゲーテ,新しくはT.マン,バレリーらの作品が加わって,文芸上の一大モティーフとして発展した。ベルリオーズ,シューマン,グノーらの音楽作品も多数。生の享楽と知的好奇心を追求するあまり,悪魔に魂を売り渡す主人公の破滅と救済の物語は,メフィストフェレス,グレートヒェンといった脇役ともども,〈近代人〉の運命を示すもの。
→関連項目エスプロンセーダファウスト

ファウスト

ゲーテの戯曲。1773年に《ウル(初稿)ファウスト》,1790年に《ファウスト断片》が書かれ,1808年《ファウスト》第1部,1831年《ファウスト》第2部として完成。ファウスト伝説では単なる魔術師であった主人公は,この作品では絶対を探求する学者となり,たゆまぬ努力と社会に善をなそうとする意志と純粋な愛によって,悪魔メフィストフェレスとの契約にもかかわらず,最後にその魂は救われる。第1部は,メフィストフェレスとの出会い,グレートヒェンとの恋とその死など,善と悪をめぐるファウストの人間的な葛藤が描かれ,第2部はより象徴的な,世界観の獲得がテーマで,ギリシア神話の美女ヘレネとの結婚など,ファウストの行為と,その救済によって,人間の生き方を示そうとしている。
→関連項目ドラクロアレーゼドラマ

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デジタル大辞泉プラスの解説

ファウスト

2011年製作のロシア映画。監督:アレクサンドル・ソクーロフ。第68回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。

ファウスト

フランスの作曲家シャルル・グノーのフランス語による全5幕のオペラ(1859)。原題《Faust》。ゲーテの同名の戯曲に基づく。

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世界大百科事典 第2版の解説

ファウスト【Faust】

16世紀初頭のドイツに出現し,やがて伝説上の主人公となった魔術師。伝説の上では,ヨハネス(ヨハン)・ファウストJohannes Faustとして登場するが,実在のファウストのほうの名は,ゲオルクだったといわれる。ゲオルク・ファウストGeorg Faustは,1480年ころに生まれ,ハイデルベルクなどで神学を学び,各地を遍歴,ルネサンス期の自然哲学の知識を身につけ,人文主義者と交わった。彼の人物像は,すでに生前からさまざまな魔術師の伝説と混同されており,さらに彼の突然の死(1536‐40年ころ)が,悪魔が彼の生命を奪ったとする伝説に拍車をかけることとなった。

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大辞林 第三版の解説

ファウスト【Faust】

○ 一五、六世紀頃ドイツに実在したとされる伝説的な魔術師。通俗本や人形劇として後世に伝えられ、イギリスのマーロー初め、ドイツのレッシング・ゲーテ・トーマス=マンなどがこれに取材した作品を書いた。
ゲーテの長編詩劇。二部よりなる。1808~32年刊。の伝説に取材。第一部で、ファウストは悪魔メフィストフェレスと契約を結んで享楽におぼれ、少女グレートヘンを悲劇的な死に追いやる。第二部で、その罪をあがなうために社会奉仕の人となり、ついに救われて昇天する。
フランスの作曲家グノーのオペラ。五幕。1859年初演。に基づく。「宝石の歌」「兵士の合唱」などが有名。

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精選版 日本国語大辞典の解説

ファウスト

[一] (Faust) 一六世紀ドイツの伝説中の人物。一五世紀末から一六世紀にかけて実在した錬金術師ゲオルク=ファウストに、種々の魔術伝説が結びついて形成された人物で、悪魔と契約を結び、その魔力によって、豪奢と快楽を手に入れるが、契約期限が切れると悲惨な最期をとげたといわれる。「ファウスト博士物語」として一六世紀末に集成され、イギリスの劇作家マーローの「フォースタス博士の悲劇」で初めて文学に登場した。後にゲーテ、トーマス=マン、バレリーらの文学作品やグノー、ベルリオーズ、リストらの音楽作品の素材となった。
[二] (原題Faust) 戯曲。ゲーテ作。二部から成り、第一部は一八〇八年刊、第二部は一八三二年刊。ファウスト伝説に取材。究理に絶望した学者ファウストが悪魔メフィストフェレスと賭けをし、欲望と快楽を知り、やがて罪におちるが、少女グレートヘンへの天上の愛によって救われるまでを描く。作者の代表作で、ドイツ近代文学最大の作品とされる。
[三] (原題Faust) 歌劇。グノー作曲。五幕。一八五九年パリで初演。(二)に基づき、バルビエとカレが台本を合作。マルガレーテの「糸紡ぎの歌」や「兵士の合唱」がよく知られている。

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世界大百科事典内のファウストの言及

【トリテミウス】より

…熱狂的なカトリックの信仰に生き,修道院改革,写本の収集などに努めたが,世界を支配する七惑星などについて考える占星術師,魔術師的側面ももっていた。ファウスト伝説のモデルとされる歴史上の人物J.G.ファウストについて興味ある書簡の報告(1507)を残している。パラケルススの初期の教師の一人で,パラケルススの後年の思想にも影響を与えたといわれる。…

【不老不死】より

…また不老ないし不死の獲得が人間にとりいちがいに好ましい状態であるとも断言できず,事実ヨーロッパでは悪魔に魂を売ったり神罰を受けた者は死ぬことができなくなり,永遠にこの世をさすらう。〈さまよえるユダヤ人〉の伝説や,C.R.マチューリンのゴシック・ロマンス《放浪者メルモス》の主人公などがその例で,ファウスト伝説もこれに含まれよう。しかし一般には,不老と不死を同時に獲得することが幸福の永続を意味すると考えられ,古来盛んにその方法が探究された。…

※「ファウスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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