中国の明(みん)朝末から清(しん)朝初めに活躍したイエズス会士。ベルギー生まれ。漢名は南懐仁(なんかいじん)という。1641年イエズス会に入り、中国での布教のため派遣されて1659年中国に到着。陝西(せんせい)での布教にあたったが、まもなく北京(ペキン)によばれ、アダム・シャール(湯若望(とうじゃくぼう))を助けて欽天監(きんてんかん)(天文台)で活躍、一時、その任を追われたが復職した。アダム・シャール没後も修暦に従事、1673年欽天監監正に任ぜられた。西洋式の各種天文観測機械の製作と解説書『霊台儀象志』や、世界地図『坤輿全図(こんよぜんず)』(1674)と『坤輿図説』(1672)を著したほか、大砲の鋳造も指導するなど幅広く活躍した。宣教面でも中国教区長を務めた。
[宮島一彦 2018年2月16日]
『陳舜臣編『人物中国の歴史8 落日の大帝国』(1982・集英社)』▽『衛藤利夫著『韃靼』(中公文庫)』
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1623~88
ベルギーのイエズス会宣教師。1659年中国に到着。清朝に仕えて天文観測や修暦事業に努め,大砲を鋳造。「永年暦法」「坤輿(こんよ)地図」「坤輿図説」などをつくった。宣教師の中国伝道の基礎を築いた功は大きい。
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…1480年ころレオナルド・ダ・ビンチは,ぜんまい仕掛の自走車やおもりをつり下げた牽引式の自走車のスケッチ画を残している。その後17世紀に入ると,ニュートンも蒸気を噴射してその反動で走る自走車を構想したといわれており,また1668年ころにはベルギー人のイエズス会宣教師F.フェルビーストが,蒸気を羽根車に吹きつけて動力を発生する衝動式蒸気タービンの模型自走車を製作している。もちろんこれらは図面や模型にとどまり,近代の自動車の定義に沿うもので,かつ実際に人が乗って走る車両を対象にすると,18世紀に入ってからの蒸気自動車が自動車の始まりということになる。…
…この征討戦を〈十全の武功〉,みずからを〈十全老人〉と名づけて得意であった。 イエズス会士の中国派遣は,マテオ・リッチの後もアダム・シャール,フェルビースト(1623‐88)と続き,とりわけフェルビーストは康熙帝に〈じいさん〉と愛称されるほど信任され,彼が鋳造した数百門の火砲が三藩の乱の戦闘に大きな効力を発揮した。イエズス会士は北京に教会を与えられ,観象台(天文台)を設け,天文学,暦学はじめ地理学,医学その他自然科学の知識で清朝に貢献したが,最終の目的であった皇帝の教化については結局成功しなかった。…
…17世紀に入ってイエズス会士がヨーロッパ天文学を伝え,簡単な望遠鏡なども輸入した。また清朝の時代になってフェルビースト(漢名,南懐仁)を中心にヨーロッパ中世風の天文器械をつくったが,これらは北京に現存する。彼は《霊台儀象志》を書き,これらの器械の説明を行った。…
…その後,隋,唐,宋の各時代にも,この渾天儀が改良製作され,1260年になって元のフビライが皇位に就き,北京に天文台を建設したときに作られたものは今でも残っている。清朝の康熙13年(1674),ヨーロッパからの宣教師F.フェルビーストは,諸種の新しい観測器械を増設し,この北京天文台を拡充した。 イスラム系の天文学が栄えた中央アジアでは,1258年,イル・ハーン国の創設者フレグが,現在イランの北西境にあるマラーガMarāghaに巨大な天文台を作り,ナシール・アッディーン・アットゥーシーを台長とした。…
…しかし,17世紀末,東洋進出の勢力がポルトガルからフランスに交代し,ルイ14世の支持をうけたパリ外国宣教会が中国に進出するに及んで典礼問題は再燃した。アダム・シャール獄死ののち,フェルビーストが天文官の地位を奪還して名誉回復を果たし,1692年(康熙31)には天主教公認の上諭が出されるまでにいたったのであるが,93年,入国した宣教会のメグロCharles Maigrot(1652‐1730)は典礼を禁止し,イエズス会士2名を解任した。 典礼問題はまたもや教皇に提訴され,(1)中国人の天,上帝はキリスト教の〈神〉〈天主〉と同じであるのか,(2)孔子は神なのか道徳的シンボルなのか,(3)祖先崇拝,鬼神崇拝は宗教性のある習慣かといった点をめぐって論争は激化した。…
※「フェルビースト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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