ドイツの小説家,劇作家。ミュンヘンのユダヤ系実業家の長男。因習的シオニストの父に反抗して早くから劇評など文筆活動で自立。インド思想の影響であらゆる力に反対の理想主義から出発し,社会批判,民衆の立場の社会変革支持に移る。小説《ユダヤ人ジュース》(1925)は18世紀の宮廷銀行家の運命を描いてベストセラーとなる(1934年イギリスで映画化。1940年ナチスは反ユダヤ主義に歪曲して映画化)。バイエルンの保守性を基盤にしたナチス台頭を美術館副館長の裁判をめぐって描く《成功》(1930)と,ナチス支配への知識層の反応,抵抗を示す《オッペンハイム一家》(1933),《亡命》(1940)が〈待合室三部作〉をなす。1933年亡命,南フランスに住むが,41年からアメリカに移る。《にせのネロ》(1936),《ゴヤ。認識の苦しい道》(1951),《愚者の知。ジャン・ジャック・ルソーの死と変容》(1952)など歴史小説でアクチュアルな問題を扱い,真剣でかつ娯楽性に富むと評されている。
執筆者:長橋 芙美子
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