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フォルクローレ folklore

翻訳|folklore

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フォルクローレ
folklore

口承や模倣によって伝承された文学,物質文化,習俗の総体およびこれを研究する学問分野 (民俗学 ) をいう。より狭く,口承文芸やアンデス地方の民族音楽をさすこともある。民俗学は 19世紀初頭に興り,農民や近代化に比較的浸食されていない少集団 (ジプシーなど) を専門的に研究していた。その目的は,伝承された古来の習俗や信仰の起源をさかのぼることによって,人類の精神史を探ることにあった。ドイツの J.グリムは,民俗学を通して暗黒時代 (476~1000頃) のゲルマン宗教を解明しようとした。イギリスの E.タイラーや A.ラングらのグループは,人類学と民俗学のデータを総合し先史時代人の信仰や儀礼を再構築しようとした。この種の研究で最も有名なのはフレーザーの『金枝篇』 (1890) である。 1812年にグリム兄弟が最初の童話集を出版すると,これに触発されたヨーロッパ各地の学者たちが,多様なジャンル (童話などの民間説話バラッドなどの歌謡,口伝叙事詩,無言劇,謎々,諺など) の口承文芸を記録し出版するようになった。音楽,舞踊,伝統美術工芸についても同様の研究が進められ,多くの資料館や博物館が設立された。
民俗学の発展に伴い,比較分析のための資料分類法が開発されたことで,さまざまな分類基準が確立され,フィンランド学派は,「歴史地理的方法」と呼ばれる方法を確立した。これは特定の民間説話やバラッド,謎々などについて,その時点で知られているあらゆる変種を,採集された場所や時期ごとに分類して伝播のパターンを探り,「原型」を再構築するやり方である。この方法は,いわゆる人類学派の方法論より統計的で憶測に頼ることが少なかったため,20世紀前半の民俗学界を席巻することとなった。
第2次世界大戦後,アメリカを中心に新しい潮流が生れた。研究対象は農村共同体にかぎられなくなり,独特の芸術,習俗,価値観によってきわだったアイデンティティを示す明確な集団が,都市にも存在することが認識されるようになった。フォルクローレは階級だけでなく,教育程度によっても限定されないものとされた。すなわち,職業,言語,居住地,年齢,宗教,民族的出自など,互いを結びつけている要因が何であれ,同一の伝統を共有することで連帯意識を保っている集団は,すべて民衆とみなされた。同時に,研究の力点も過去から現在へ,起源の探索から現在における意味や機能の分析へと移っていった。伝統の変質や応用も,必ずしも伝統の堕落とはみなされなくなった。 20世紀後半には「コンテクスト」や「パフォーマンス」を中心とする分析が興り,特定の説話・歌謡・演劇・習俗すなわちフォルクローレは,単に記録して,同一カテゴリーの他の事例と比較すべき対象とはみなされなくなった。むしろ個々の現象は,個人と社会集団の相互作用によって起ったイベント (出来事) とみなされる。こうしたイベントは特定の機能を果し,演者と聴衆双方の欲求を満たす。この機能主義的,社会学的見地からすれば,そうしたイベントは全体的コンテクストのなかでしか理解できないことになる。すなわち,演者の生活史と人格,共同体内での役割,演目と技能,聴衆の役割,そして開催時期などのすべてが,パフォーマンスの民俗学的意味を生み出しているのである。

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百科事典マイペディアの解説

フォルクローレ

元来,民俗音楽を意味するスペイン語。日本では,ラテン・アメリカ,アンデス地帯および南方(ペルー,ボリビア,エクアドル,チリ,アルゼンチン,パラグアイ,ウルグアイ)の民俗音楽や民衆音楽を指して用いられる。
→関連項目ユパンキ

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世界大百科事典 第2版の解説

フォルクローレ【folklore】

もとは英語のフォークロア,すなわち〈民俗〉〈民間伝承〉〈民俗学〉などを意味する言葉だが,これが同じ綴りのままスペイン語に入り,20世紀に入ってのちしだいに〈民謡〉〈民俗音楽〉を指すようになった。さらに現代では,大衆音楽でも民俗的な要素を多少とももつものならフォルクローレと呼ぶように意味が拡大されている。すなわちスペインおよび中南米諸国では,今日この言葉を本来の学問的で狭い意味合いと,慣用の一般的で広い意味合いの双方に用いている。

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大辞林 第三版の解説

フォルクローレ【folklore】

民謡。民俗音楽。日本では、特に南米の民俗音楽をいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フォルクローレ
ふぉるくろーれ
folkloreスペイン語

英語のフォークロアをスペイン語読みしたもので、元来は民間伝承を意味していたが、やがてとくに民謡・民俗音楽をさすようになった。また今日の日本では、南米のスペイン語圏(とくにアンデス山地やアルゼンチン、チリ)の音楽に限定して使われている。しかしその実体は、生活のなかではぐくまれた民謡・民俗音楽というよりは、それらに根ざしながら専門家によって作詞・作曲(あるいは編曲)されたポピュラー音楽である場合が多い。日本でフォルクローレの曲としてよく知られている『コンドルは飛んで行く』『花祭り』などもそうした種類のものである。[田井竜一]

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世界大百科事典内のフォルクローレの言及

【ユパンキ】より

…1929年に処女作の歌曲《インディオの道Camino del indio》を書く。30~40年代を通じ,詩人・音楽家としてしだいに認められ,1950年前後,《トゥクマンの月Luna tucumana》《牛車にゆられてLos ejes de mi carreta》ほかを発表し,また左ききに構えるギターの演奏,渋く奥深い語り口をもつ歌とにより,フォルクローレ(民謡に基づく民衆音楽)界の第一人者となった。かたわら《インディオの道Cerro Bayo》(1946),《インディオのしらべ》(1947),自伝風な《風の歌》(1965)など優れた著作や詩集も発表,映画の製作にも手を染めるなど,多方面からアルゼンチンの郷土精神,土に生きる自然児の魂を称揚してきた。…

※「フォルクローレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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