フタリシズカ(読み)ふたりしずか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタリシズカ」の意味・わかりやすい解説

フタリシズカ
ふたりしずか / 二人静
[学] Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult.

センリョウ科(APG分類:センリョウ科)の多年草。葉は単葉で対生し、多くは2対。小さな托葉(たくよう)がある。5月、2本または3本の花穂を頂生し、白色の両性花を開く。花被(かひ)はない。雄しべは3本、太くて短く白色、下部は合生し、基部は子房の背面に合着する。雌しべは雄しべに包まれる。夏、閉鎖花をつける。果実球形で淡緑色。湿った林床に生え、日本、朝鮮半島および中国南部に分布する。

[大森雄治 2018年7月20日]

文化史

『広益地錦抄(こうえきちきんしょう)』(1719)の及已(ぎゅうい)(図によればヒトリシズカ)の項に、「又一種あり形状同し事して高さ二尺程にのび立なり」と記載があるのは、フタリシズカと考えられる。『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(1713)には、ヒトリシズカの別名吉野静(よしのしず)と対照させて二人静(ふたりしずか)の名があげられ、2本の花穂が相並び艶美なので、謡歌にある静女(しずめ)(源義経(よしつね)の妾(しょう)、静御前(しずかごぜん))の幽霊が2人となって舞い遊ぶ姿に例えて、二人静と名づけられたと記述されている。

[湯浅浩史 2018年7月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フタリシズカ」の意味・わかりやすい解説

フタリシズカ(二人静)
フタリシズカ
Chloranthus serratus

センリョウ科の多年草。日本各地に広く分布し,普通,低山地の林床や林縁に生える。地下の短い根茎より数本の茎を出す。茎は直立し分枝せず,高さ 30~60cmになる。茎の上部では節間がせばまり,2~3対の大きな葉を対生し,下部には小さな鱗片葉がつく。上部の葉は楕円形で長さ5~16cm,幅2~8cm,縁に鋭い鋸歯を多数もつ。5月頃開花し,茎の先に1~2個の穂状花序をつくる。花には花被がなく,3本のおしべ花糸が合着してめしべを包む。花糸は白色で目立ち,内側 (やく) を付着する。果実は核果で,長さ 3mmほどになる。

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百科事典マイペディア 「フタリシズカ」の意味・わかりやすい解説

フタリシズカ

センリョウ科の多年草。日本全土,東アジア山野林中にはえる。茎は直立し,高さ30cm内外,上部に接近して4枚の楕円形の葉を対生する。4〜5月,茎頂にふつう2本の花穂を直立し,白色で花被のない花を開く。花糸は線形ではなく,合着してめしべを包む。

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改訂新版 世界大百科事典 「フタリシズカ」の意味・わかりやすい解説

フタリシズカ

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世界大百科事典(旧版)内のフタリシズカの言及

【ヒトリシズカ】より

…日本には,中国原産で常緑低木のチャランが栽培される。低山地林床に多いフタリシズカC.serratus (Thunb.) Roem.et Schult.(イラスト)は上部の2対の葉の節間がやや開き,花糸の先は糸状に伸びない。普通は2本の穂状花序をもつ。…

※「フタリシズカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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