第266代ローマ教皇。本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオJorge Mario Bergoglio。1936年にアルゼンチンの首都ブエノス・アイレスで、イタリア系移民の子として生まれる。大学で化学を学んだ後、1958年にイエズス会に入会。日本への宣教を志すが、幼少期に肺の一部を摘出したため、健康上の理由で断念。1969年司祭に叙階され、1972~1973年修練長、神学院長、1973~1979年管区長、1980~1986年ふたたび神学院長に就任するなど、アルゼンチン管区の重職を担う。1987年(昭和62)には、日本への派遣に自らがかかわったアルゼンチン出身の神学生と会うため来日した。1992年ヨハネ・パウロ2世によりブエノス・アイレスの補佐司教、1998年同大司教、さらに2001年には枢機卿(すうききょう)に任命された。
枢機卿時代には、小さなアパートに居住し、公共交通を利用するなど、つつましい生活と社会正義の推進に熱心な司牧者として知られるようになった。
2013年2月28日にベネディクト16世が高齢を理由に教皇職を辞任。その後実施された教皇選出会議(コンクラーベ)でベルゴリオが選ばれ、新教皇フランシスコとなった。フランシスコは、史上初のアメリカ大陸出身かつイエズス会出身では初めての教皇である。それ以来、教皇名の由来するアッシジの聖フランシスコの福音的精神にならって、貧しい人々との素朴な一体感を旨とする教会刷新に取り組んでいる。
フランシスコは、世界最大のカトリック信者を有し、貧困や格差、大国との国際関係などの問題を抱える中南米での豊富な司牧経験と霊的深さを生かして、経済的不平等、女性と青年の役割、児童虐待と人身売買、死刑廃止、そして環境問題などについて積極的に発言している。とくに平和に関しては、バチカン市国として2017年9月20日に核兵器廃止条約に真っ先に署名・批准し、2019年(令和1)に教皇として来日したおりにも、被爆地長崎・広島を訪れ、戦争のない世界と核兵器廃止を強く訴えた。
2023年4月までに、41か国を司牧訪問し、また他宗教やキリスト教他教派との対話にも積極的に取り組んでいる。
[光延一郎 2023年8月18日]
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