ブラケット(イギリスの物理学者 Patrick Maynard Stuart Blackett)(読み)ぶらけっと(英語表記)Patrick Maynard Stuart Blackett

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ブラケット(イギリスの物理学者 Patrick Maynard Stuart Blackett)
ぶらけっと
Patrick Maynard Stuart Blackett
(1897―1974)

イギリスの物理学者。ロンドンに生まれる。第一次世界大戦に海軍将校として従軍後、マグダレン大学へ入学、1923年に修士号取得。1933年までキングズ・カレッジのフェローとしてキャベンディッシュ研究所ラザフォードの下で研究。1932年オッキャリーニGiuseppe Occhialini(1907―1993)とともに霧箱を改良し、計数管で写真撮影のタイミングをとるようにした。これにより宇宙線シャワー現象を発見、また、シャワーによって生じる正・負荷電粒子の質量がほぼ等しいことを検証し、同年カール・アンダーソンが発見した陽電子の存在を裏づけた。1933年バークベック大学物理学教授となり、γ(ガンマ)線による電子対生成の撮影に成功した。これらの業績により1948年にノーベル物理学賞を受賞した。1937年マンチェスター大学物理学教授となる。第二次世界大戦中は、対Uボート作戦、オペレーションズ・リサーチによる作戦分析に従事。1953年よりインペリアル・カレッジ教授、1963年まで同物理学科長。第二次世界大戦後はイギリス科学労働者協会、世界科学者連盟に加わる。著書の『恐怖・戦争・爆弾』(1948)は日本への原爆投下冷戦とのかかわりでとらえたものとして有名である。

[山崎正勝]

『田中慎次郎訳『恐怖・戦争・爆弾――原子力の軍事的・政治的意義』(1951・法政大学出版局)』『P・M・S・ブラッケット著、岸田純之助・立花昭訳『戦争研究』(1964・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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