フランスの王家。18世紀以降は,姻戚関係によりスペイン,両シチリア(ナポリ)などでも王家となった。もとはブルボネ地方の古い領主の家系であったが,1272年女性相続人がカペー家のフランス国王ルイ9世の第6子クレルモン伯ロベールと結婚,その子ルイが1327年にブルボンBourbon公家を創設した。ブルボン公家は王国の心臓部に広大な所領を有し,強い独立性を保っていたが,シャルル・ド・ブルボンが当主のとき,反逆罪を口実として国王フランソア1世により所領を没収された(1523)。さらにシャルルは1527年に相続者なくして没したので,ブルボン公の称号は傍系のバンドーム伯シャルルに受け継がれた。その子アントアーヌ・ド・ブルボンは,ナバール女王ジャンヌ・ダルブレと結婚し,ナバール国王となった。この2人の子アンリは宗教戦争の渦中に成長したが,バロア王家の断絶に伴い,ブルボン家がカペー朝の傍系であるところから王位の正統相続者の資格を得,1589年アンリ4世として即位し,ここにブルボン家はフランスの王家となった。なお,宗教戦争期に大きな役割を果たしたコンデ家も,アントアーヌの弟ルイに始まっている。ブルボン絶対王政は以後約200年続いたが,この間,大貴族の勢力を抑えて王権を強化する一方,対外的にはハプスブルク家やイギリスに対抗し侵略戦争や植民地獲得をさかんに行い,ルイ14世のとき最盛期を迎えた。しかし,1789年フランス革命が勃発すると,国王ルイ16世は統治能力を失い,92年王政の廃止が議会で決定された。ブルボン家は1814年の王政復古によってルイ16世の弟がルイ18世として即位し,再び王座についたが,それもつかの間,次のシャルル10世の反動政治は七月革命を招き(1830),この結果,やはりブルボン家の傍系であるオルレアン家のルイ・フィリップが新王に迎えられた。ブルボン家の直系は,以後19世紀を通じて正統王党派と呼ばれる政治勢力を結集し,ブルボン王政の復古をめざした。しかし,第2帝政崩壊後の1871年の好機にもシャルル10世の孫シャンボール伯がオルレアン派との連合に失敗し,そのもくろみは果たせなかった。
スペインでは,フェリペ4世の長女マリア・テレジアがルイ14世の妃であったところから,ルイ14世の孫アンジュー公フィリップが王位継承権を得,ハプスブルク家出身の最後のスペイン国王カルロス2世が没すると,フェリペ5世として1700年に即位し,ブルボン朝を開いた。このブルボン王政は,ナポレオンの占領,2次にわたる共和政,フランコ独裁などにより何度か中断されながらも,現在まで続いている。イタリアでは,フェリペ5世の子カルロスが1734年ナポリとシチリアの王となり,イタリア統一運動により王政が廃止される1860年まで,ブルボン王家が支配した。北イタリアのパルマ公国でも,カルロスの弟フェリペに始まるブルボン家の支配が,1748年から1859年まで続いた。
執筆者:林田 伸一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
フランスをはじめヨーロッパの諸国王を出した家族。ルイ9世の第6子ロベールの子ルイが初代ブルボン公となり,その直系は16世紀に断えたが,傍系のアントワーヌが16世紀に結婚によってナヴァール王となり,その子アンリ4世がフランス国王となった。ブルボン朝のフランスは絶対主義の時代で,1792~1814年の断絶の後,再び30年まで復古王政期を迎えた。続くオルレアン家のルイ・フィリップもブルボン家の傍系である。ルイ14世の孫フィリップ5世(在位1700~46)によってスペインのブルボン朝が始まり,1931年まで続いた。その他,両シチリア王国,パルマ公国もイタリア統一前はブルボン家が君臨していた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…スロバキア人の間でもユリ根を刻んで煮たものは陣痛をやわらげるといってよく利用された。 さて,ユリはフランスのブルボン家の紋章になっているが,その由来はこうだ(ただしブルボン家の紋花fleur‐de‐lisをユリではなくアイリスと解する説もある)。フランク王家の開祖クロービス(在位481‐511)がアラマン族と戦い,苦戦したときのことである。…
※「ブルボン家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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