デジタル大辞泉
「ブロッキング」の意味・読み・例文・類語
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ブロッキング
- 〘 名詞 〙 ( [英語] blocking )
- ① アメリカンフットボール、バスケットボールなどで、体で接触することにより相手の走路を妨げたり、攻撃を阻止したりすること。
- ② ボクシングで、肩や腕を用いて相手の攻撃を止めること。
- ③ バレーボールで、前衛の選手が相手側のスパイクをくい止めること。ブロック。
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ブロッキング
blocking
温帯および寒帯では,高・低気圧が通常は西から東へ順調に移動する。しかし,ときにはこの運動がはなはだしく阻害されて移動が非常に遅くなることが10日以上つづく。この現象をブロッキングという。このとき,とくに高気圧が発達し,ブロッキング高気圧と呼ばれる。この現象は,上空の偏西風の南北振動が異常に大きな振幅になるとともに起こる。ブロッキング現象は地域的であるが,鉛直には全対流圏に及ぶ現象である。ブロッキングは冬の終りから早春にかけて最もよく起こる。日本の付近では梅雨期にもオホーツク海に起こりやすい。世界各地にブロッキングの起こりやすい場所がある。北半球では北大西洋から北欧の間と,アラスカを中心にした北太平洋北部,南半球では統計が乏しいがオーストラリア大陸の東部がそうである。このことは大規模な地形や海陸分布が重要な効果をもつことを示す。数値シミュレーションによると,北半球を取り巻いて二つの山と二つの谷があるような波長の長い偏西風波動が山岳の影響を受けて発達して,高緯度地方に角運動量が運ばれるときにブロッキングが起きている。
図はブロッキングのときの大気の状態で,この現象の最初の研究者レックスD.F.Rexの論文によっている。強い上空の西風がアイスランドの南で北と南に分流し,一つはバレンツ海に向かい,それからバルト海に南下している。他の一つはイベリア半島に進み,地中海を経て黒海で南下してきた支流と合流している。グレート・ブリテン島の北に中心をもつ上空のブロッキング高気圧は,あたかも流れを阻止して二つに分けているように見える。この高気圧は停滞または非常にゆっくり西進する。バレンツ海から東ヨーロッパに及ぶ上空の気圧の谷線も停滞する。地表の気圧配置(図の破線)を見ると,巨大な高気圧がヨーロッパ全土を覆い,大陸上では例年より低温度になる。北のノルウェー海からバレンツ海方面は高温度になる。この期間は低気圧経路も二つに分かれ,一つは北にかたより,一つはブロッキング高気圧の南にある強い帯状の上空の流れに沿って東進する。
ブロッキング現象は全地球的な大気循環からみると,運動量,熱,水蒸気の南北輸送に大きな影響をもっている。そしてこの異常な気圧分布は低気圧の動きを変え,降水や地表の気温分布に大きな異常をもたらし,1ヵ月程度の気候の異常の主因になっている。
執筆者:斎藤 直輔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ブロッキング(作業)
ぶろっきんぐ
blocking
連続的で反復的な作業の場合に、作業が一時的に中断したり遅延したりする現象をブロッキングとよんでいる。熟練したタイピストたちの優れた規則的活動でも精密に記録し計測すると、いくつかの反応の束があり、適当な「間」があることがわかる。実験的に色名呼称作業や一桁(けた)の加算作業のようなほぼ等質の作業を行わせて各反応時間を測定すると、比較的短い反応時間が続いて現れるなかに長い反応時間がときどき現れる。
アメリカの心理学者ビルズA. G. Billsは、ブロッキング発生の周期性、休息によって減少することなどから、ブロッキングは周期的におこる神経機能の不応期によるものであり、休息の機能をもつとした(1931)。しかしブロッキング現象のなかにはかならずしも周期性を示さないものもあることが指摘されている。望月享子は、ブロッキングは、作業経過における不可欠な変化として、規則的調節を補うために生じるとともに、課題の効果的達成のために生じるとした(1985)。
内田クレペリン精神作業検査におけるV字型の落ち込みをブロッキングとみることもある。戸川行男らは、内田クレペリン精神作業検査において大きなV字型の落ち込みを示す人はビルズらのブロッキングを多発する傾向があることを指摘している(1973)。産業場面で疲労の測定法として、連続色名呼称法を用いることがあるが、ブロッキングが疲労の指標として用いられている。
[上田雅夫]
『戸川行男監修、清原健司・上田雅夫編『精神作業検査要覧』(1973・実務教育出版)』▽『望月享子著『作業経過の心理学』(1985・東海大学出版会)』
ブロッキング(天気)
ぶろっきんぐ
blocking
天気図解析や天気予報上の用語。中緯度帯では移動性の高気圧や低気圧の運動は、北向きまたは南向きの進行成分をもちながらも、おおむね西から東に向かうのが通常の状態である。これは、これらの気圧系を形成、維持する「仕組み」(主として偏西風波動)が、偏西風の流れの中を東進するためである。ところが、ときおり、広い範囲にわたって、数日間またはそれ以上も、高気圧や低気圧の東向きの運動が停滞したり、逆行したりすることがある。この現象をブロッキングという。英語のブロックには妨害、阻止、行動妨害(スポーツで)などの意味があり、前記のような高気圧や低気圧の正常な進行が妨げられる現象にも、このことばが用いられていて、気象用語になった。ブロッキングがおきているときは、上空の偏西風波動は著しく振幅を増して大きく南北に蛇行し、典型的な場合には北側に切離高気圧、南側に切離低気圧が形成されている。このときにできる停滞性の背の高い高気圧をブロッキング高気圧という。梅雨期などに現れる停滞性のオホーツク(海)高気圧はブロッキング高気圧のことが多い。ブロッキングは偏西風波動の不安定化という、大気大循環の一つの型式であり、これにより高緯度と低緯度の間で大気が熱とともに大きく交換される。これがおこると広範囲に寒波、熱波、干魃(かんばつ)、長雨などの異常天候が現れやすい。
[倉嶋 厚]
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「ブロッキング」の意味・わかりやすい解説
ブロッキング
気象用語。地上天気図でみられる移動性の高気圧,低気圧はふつう偏西風に流されて東進するが,それが中緯度の対流圏を貫いて長期間停滞する優勢な高気圧(ブロッキング高気圧)の西側で阻止され,南北への迂回(うかい),逆行などを示す現象。このとき高層には切離(せつり)高気圧が現れる。
→関連項目指数サイクル
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ブロッキング
blocking
心理学用語。阻止現象。連続加算作業や色名呼称など等質的,連続的な作業において,短時間ではあるが一時的な作業の中断がリズム的に繰返されること。疲労,心的飽和などによる。
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世界大百科事典(旧版)内のブロッキングの言及
【ボクシング】より
… フットワーク足を使って距離をとる動作をいう。 ブロッキング(ブロック)相手のパンチを手,腕,肩で受け止める防御法。 ボクサー(ボクサー・タイプ)距離をとって,ジャブやストレート中心に戦うタイプのボクサー。…
【意欲障害】より
…鬱(うつ)病の一症状である。〈途絶blocking〉 一定の意志傾向とそれに相反する傾向が対立し,そのために行動が停止してしまうこと。分裂病の一症状である。…
※「ブロッキング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」