ヘル(読み)へる(その他表記)Stefan Hell

デジタル大辞泉 「ヘル」の意味・読み・例文・類語

ヘル

《〈ドイツ〉Mohärの略》縦糸に粗質の梳毛糸そもうし、横糸に紡毛糸を用いて織った交織サージ。学生服作業服などに用いられる。ローサージ。

ヘル(〈ドイツ〉Herr)

男性に対する敬称。旦那。殿方。姓または姓名の前に付けても用いる。

ヘル(hell)

地獄。

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精選版 日本国語大辞典 「ヘル」の意味・読み・例文・類語

ヘル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Mohär から ) 毛織物の一つ。経(たていと)に粗剛な梳毛糸、緯(よこいと)に紡毛糸を使用して斜文組織で織ったもの。綿糸を入れたものもある。ローサージ。
    1. [初出の実例]「紺遍縷(ヘル)の外套」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)

ヘル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Herr )
  2. 男性に対する敬称。姓または姓名の前に付けて用いる。英語のミスターにあたる。〔モダン用語辞典(1930)〕
  3. 男の人。紳士。殿方。

ヘル

  1. ( Hel ) ( 「おおう者」の意 ) 北欧神話冥界女王。また、その支配する死者の国。地獄。冥界の女王ヘルは邪神ロキと巨人の女アングルボザとの間に生まれた娘。世界の終末においては魔船に乗って神々と戦うという。

ヘル

  1. 〘 名詞 〙ヘルメット」の略。多く他の語に付けて用いる。「赤ヘル」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘル」の意味・わかりやすい解説

ヘル(Stefan Hell 物理学者)
へる
Stefan Hell
(1962― )

ドイツの物理学者。ルーマニアアラド生まれ。1978年に当時の西ドイツに移住。1981年にハイデルベルク大学入学、1990年に同大学で物理学の博士号を取得した。論文のタイトルは「共焦点顕微鏡による透過微細構造のイメージング」であり、その後の研究実績に結び付いた。その後ヘルは、共焦点顕微鏡の軸方向の解像度について研究を重ねた。

 1991年からハイデルベルクのヨーロッパ分子生物学研究所で研究し、そこで解像度の高い顕微鏡の開発に取り組んだ。1993年からフィンランドのトゥルク大学医学物理部門のリーダーとなり、レーザー光を使って分子を見ることができる超高解像度のSTED(stimulated emission depletion)顕微鏡の原理を発明した。この業績で細胞内部の構造を従来の蛍光顕微鏡よりはるかに高い感度で数十ナノメートルまで観察できるようになり、難病の仕組みの研究に貢献した。2002年から、生物化学マックス・プランク研究所の所長になりナノバイオ化学部門を創設。2003年からハイデルベルク大学物理天文学部の教授となった。2014年「超高解像度の蛍光顕微鏡の開発」の業績で、ウィリアム・モーナー、エリック・ベツィグとともにノーベル化学賞を受賞した。

[馬場錬成 2015年2月17日]


ヘル(Hel 北欧神話の冥府の女王)
へる
Hel

北欧神話の冥府(めいふ)の女王。またその支配する死者の国もヘルとよばれる。ロキとアングルボザの娘で、主神オーディンによって冥界に投げ込まれた。ヘルは、なかば青色でなかば人肌色をした険しく恐ろしい顔つきをしている。一方、死者の国ヘルは、地下の暗い霧に覆われた寒冷の地にあり、そばをギョル川が流れ、大きな門と高い塀とを備えた館(やかた)とされ、病気や老齢で死んだ者を迎える所である。ヘルはゲルマン語で「隠す」を意味する。

[谷口幸男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘル」の意味・わかりやすい解説

ヘル
Hell, Stefan

[生]1962.12.23. アラド
ルーマニア生まれのドイツの化学者。フルネーム Stefan Walter Hell。ハイデルベルク大学で 1987年に学士号を,1990年に博士号を取得。ヨーロッパ分子生物学研究所の博士研究員,1993~96年フィンランドのトゥルク大学主任研究員を経て,1997年にドイツのマックス・プランク生物物理化学研究所に移り,2002年に同研究所ナノバイオフォトニクス部門の所長に就任した。光の波長の半分より小さいものは見分けられない光学顕微鏡(→顕微鏡),生きたままの細胞を見られない電子顕微鏡の限界を破ろうと超高解像度の顕微鏡の開発に着手し,ケイ光物質をレーザー光で励起させ,発する光を観察するケイ光顕微鏡の原理を利用して研究を進めた。1994年に,目的物周辺部分のケイ光を抑える光(誘導放出抑制光〈STED光〉)をドーナツ型にしてあて,中心部分のケイ光のみを検出できるようにする誘導放出抑制顕微鏡を提唱した。この原理によって,これまでの光学顕微鏡の限界をはるかにこえて 10nmという超高解像度の像を得られるケイ光顕微鏡を開発,細胞の微小構造や蛋白質の移動などを生きたままで観察できるようになった。2014年,この功績によりエリック・ベッツィヒ,W.E.モーナーとともにノーベル化学賞を受賞した。

ヘル
Hel

北欧神話の冥界の女王,ロキと女巨人アングルボザを父母として生れた,恐ろしい怪物で,生れつき身体の半分が黒く,半分は白い。オーディンによってニフルヘイムに追放され,そこでニフルヘルともまた単にヘルとも呼ばれる,病気や老齢によって死んだ死者たちの行かねばならない暗黒の冥府を支配することになった。彼女の住む広大な館はエリュズニルと呼ばれ,その入口を守る番犬はガルムである。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘル」の意味・わかりやすい解説

ヘル
Hel

北欧神話の冥府の女王。また彼女の支配する死者の国も同じくヘルと呼ばれる。ヘルはエッダによると,ロキと女巨人アングルボザの3番目の子で,オーディンにより冥府に投げ込まれ,病気や老齢で死んだ者たちにその住居を割り当てることになった。ヘルは体の半分が青色で半分は人肌色をして,けわしく恐ろしい顔をしている。ヘルという語はゲルマン語で〈隠す〉の意で,元来は死者の国を表した。冥府ヘルは霧におおわれた暗い地下の寒冷の地にあり,そばにギョル川が流れ,橋がかかり,橋のたもとに橋の番人がいる。橋を渡ると大きな門と高い塀をもつ館があり,それが女王の住むヘルとされる。館の内部については乏しい描写しか伝えられていないが,現世の館に似ており,貴族の地下の墓室のイメージが反映しているように思われる。オーディンは死んだ巫女から未来のことを聞くため訪れ,女神フリッグの命によって,ヘルモーズもフリッグの子バルドルを取り戻しにこのヘルに赴いている。
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百科事典マイペディア 「ヘル」の意味・わかりやすい解説

ヘル

北欧神話で死者の国を治める女神。ロキと女巨人の間に生まれたが,恐ろしい怪物だったので,オーディンによって地底に投げ込まれ,冥界の女王となったという。冥界そのものもヘルと呼ばれる。
→関連項目地獄

ヘル

毛織物の一種。ローサージとも。ヘルは経(たて)にあらい梳毛(そもう)糸を,緯(よこ)に紡毛糸を用いて織った綾織物。堅牢(けんろう)で実用的なため学童服,作業服などにする。綿,化繊の混紡もある。

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世界大百科事典(旧版)内のヘルの言及

【葬制】より

…〈冥府の靴〉というものをはかせたり,貨幣を一個もたせるという例もある。霧におおわれた暗い地下の寒冷の地にあるとされる冥府ヘルのイメージは土葬の風習から由来していることは明らかである。このヘルは後にキリスト教が入ってきてから〈地獄〉というイメージが強くなっただけで,本来は贖罪(しよくざい)や報復の場所と考えられたわけではない。…

※「ヘル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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