ドイツの比較解剖学者、動物発生学者。エストニア生まれ。ドルパト大学、ウュルツブルク大学に学び、のちケーニヒスベルク大学(現、イマヌエル・カント・バルト連邦大学)教授、ケーニヒスベルク動物博物館長を務めた。この間、哺乳(ほにゅう)動物の卵巣内のグラーフ濾胞(ろほう)内の卵や、脊椎(せきつい)動物の胚(はい)発生過程に現れる脊索の発見など、多くの重要な発見を行い、近代発生学の礎石を置いた。ベーアは胚発生の研究に比較解剖学的研究法を導入し、どの動物でも同種の器官は同じ胚葉から生ずるという胚葉説を提唱し、動物発生の統一的理解への道を開いた。この立場からするベーアの動物発生の考え方は、次の「ベーアの法則」に集約されている。(1)発生の際まず一般的な形態が、ついで特殊な形態が生ずる。(2)発生の初期には、どの動物胚もよく似た形態をとるが、発生の進行とともに差が生じてくる。(3)高等な動物の発生中、胚は、それより下位の動物の胚に似た形をとる。
[竹内重夫]
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ドイツの動物発生学者。エストニア生れ。発生学上の主たる業績はケーニヒスベルク大学時代(1819年に教授)になされているが,後にペテルブルグに赴き各地を旅行して,人類学,人種学,考古学,言語学を研究した。哺乳類の卵や脊索を発見し,胚葉説を確立した。比較発生学上の知見として,(1)動物群に共通の特徴は胚の早期に形成される,(2)形成は一般的なものから特殊なものへ進む,(3)特定の動物系に属する胚は,他の諸型から離れていく,(4)高等動物系の胚は,他の動物系の胚に類似している,の4点を発生法則(フォン・ベーアの法則)として提示した。対称性を基準にして,動物の型を放射型,環節型,等質型,二重対称型(脊椎動物)に分けている。生物の変異に関しては,各型の内部での限定的変異を認めたが,進化論一般は否定した。
執筆者:河本 英夫
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…古代のアリストテレスにはじまり,17世紀のW.ハーベー,18世紀のC.ウォルフをへて,19世紀にいたり近代的な体裁をもつようになる。K.E.vonベーア(1828)は,各種動物の比較研究にもとづき,すべての動物は発生初期には同一の胚葉構造をもち,発生が進行するとともに各動物の個性があらわれてくると説いた。同世紀末にはじまる実験発生学は,後成説の主張に決定的な根拠をあたえた。…
…かれはそれを含め,生命現象を生命力的な概念によって説明した。後成説は19世紀前半になりK.E.vonベーアの動物学的研究で確立された。ついで1860年ころは他の二大問題にとって重大な時期となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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