日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイス・バロットの法則」の意味・わかりやすい解説
ボイス・バロットの法則
ぼいすばろっとのほうそく
オランダの物理学者、気象学者ボイス・バロットが1857年に発表した、風向きと低気圧・高気圧の中心が存在する方向との関係を示す法則。風を背にして立つとき、低気圧の中心は、北半球では左手のやや前方、南半球では右手のやや前方にあり、高気圧の中心は、北半球では右手のやや後方、南半球では左手のやや後方にある。これは、地衡風(ちこうふう)が、北半球では高気圧を右(南半球では左)、低気圧を左(南半球では右)にみる方向で等圧線に並行して吹くことを言い表したものといえる。実際の風は地表面近くでは摩擦のため等圧線を斜めに横切って低気圧側に吹き込むため、「やや前方」「やや後方」の条件が加わっている。1857年(安政4)に蘭学者(らんがくしゃ)伊藤慎蔵(しんぞう)が訳した海上気象学の教科書『颶風新話(ぐふうしんわ)』には、暴風の中心を知る方法として「背を風に北では左、南では右の手を出せ、そこが中心」という表現で紹介されている。この和歌で北は北半球、南は南半球をさす。この法則は、大気の運動に対する摩擦力が小さく、地形の影響が少ない海上で、よく当てはまる。
[倉嶋 厚]
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