ポルフィリン症(読み)ポルフィリンしょう(英語表記)porphyria

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ポルフィリン症
ポルフィリンしょう
porphyria

血色素の構成物質であるヘム前駆物質ポルフィリンやその前駆物質が過剰に生産され排出される,主として遺伝性の代謝異常。病理学的には2つの型があり,1つは骨髄中でヘモグロビンがつくられるときに起るもの,もう1つは肝臓の障害による。臨床的には急性ポルフィリン症皮膚ポルフィリン症に分けられる。急性ポルフィリン症は若い女性に多発し,腹痛,神経症状を伴い,尿は赤色となる。皮膚ポルフィリン症は皮膚の光線過敏症が主症状で,直射日光を避ける必要がある。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ポルフィリン症

紫外線を吸収すると毒性を持つ化学物質のポルフィリンが体内に異常に蓄積され、様々な症状を引き起こすことがある。日光を浴びて皮膚に炎症などが起きるタイプと、腹痛や手足のしびれなどが出るタイプに大別されるが、発症の仕組みは解明されておらず、根本的な治療法も見つかっていない。

(2009-03-15 朝日新聞 朝刊 鳥取全県 1地方)

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デジタル大辞泉の解説

ポルフィリン‐しょう〔‐シヤウ〕【ポルフィリン症】

赤血球に含まれるヘムを合成するために必要な酵素が欠損しているため、中間代謝物のポルフィリンが骨髄・肝臓・血液・皮膚などに蓄積し、光過敏症や精神症状を引き起こす病気。欠損する酵素の種類によって症状が異なり、主に皮膚に障害を起こす皮膚型ポルフィリン症と、腹痛などの腹部症状や手足のしびれ・麻痺などの神経症状を起こす急性ポルフィリン症に大きく分けられる。光力学的作用をもつポルフィリンが蓄積すると日光の紫外線などで皮膚が損傷を受けるため、患者は黒い頭巾や衣服で全身を覆うなどして、日光を浴びないようにする必要がある。→骨髄性プロトポルフィリン症急性間欠性ポルフィリン症

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家庭医学館の解説

ぽるふぃりんしょう【ポルフィリン症】

 ポルフィリンという物質は、12種類の酵素(ヘム合成酵素)によりつぎつぎに反応がおこり、少しずつ形が変化してヘムという物質に合成されていきます。このヘムから、赤血球(せっけっきゅう)が酵素を運搬するのに必要なヘモグロビンや肝臓で異物を解毒するのに必要なシトクロームなど、からだにとって重要な物質が形成されます。
 12のヘム合成酵素のうち、2番目から8番目の酵素のどれか1つに異常がありますと、ポルフィリンが体内に過剰に蓄積してしまいます。こうなると、尿や糞便(ふんべん)中に大量に排泄(はいせつ)されることもあり、さまざまな症状が現われてきます。これらのヘム合成酵素の異常による病気を、まとめてポルフィリン症といいます。
 ヘムは、とくに肝臓の細胞と幼若(ようじゃく)な赤血球(赤芽球(せきがきゅう))によって合成されますので、ポルフィリン症は、ヘムの合成の異常がおこるところによって、肝型(かんがた)と赤芽球型の2つに分けられます。
 肝型は、さらに晩発性皮膚(ばんぱつせいひふ)ポルフィリン症、急性間欠性(きゅうせいかんけつせい)ポルフィリン症、多様性ポルフィリン症などの6タイプに分けられます。
 赤芽球型は、赤芽球性プロトポルフィリン症、先天性赤芽球性ポルフィリン症の2タイプに分かれます。
 ほとんどは遺伝によっておこりますが、一部は薬剤や種々の病気によっておこるものもあります。非常にまれな病気です。今までに、日本で報告された患者さんは、600人ほどしかありません。

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大辞林 第三版の解説

ポルフィリンしょう【ポルフィリン症】

赤血球のヘモグロビンを構成するプロトヘム(プロトポルフィリン鉄化合物)の合成のしくみに異常をきたす病気。その大部分は遺伝性である。激しい腹痛・下痢などの腹部症状や神経症状、それに皮膚光線過敏症などがみられる。ポルフィリア。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ポルフィリン症
ぽるふぃりんしょう
porphyria

ポルフィリンまたはその前駆物質が多量に産生される疾患で、おもに先天性代謝異常による。ポルフィリン体の産生される部位によって肝性と骨髄性に大別されるが、いずれもまれな疾患で、肝性の急性間欠性ポルフィリン症と遅発性皮膚型ポルフィリン症のほかはきわめてまれである。[高橋善弥太]

急性間欠性ポルフィリン症

常染色体性優性遺伝疾患で、家族性に発現することがきわめて多く、おもに20~30歳代に発症する。腹部の仙痛、嘔吐(おうと)、便秘をはじめ、四肢の疼痛(とうつう)や麻痺(まひ)、錯乱やヒステリー様症状などを主とした急性発作がみられるが、他のポルフィリン症とは異なり皮膚の光線過敏症状は示さない。間欠発作の誘因としては、バルビツール酸系の薬剤などをはじめ、月経、手術、アルコールなどがあげられる。尿中および糞便(ふんべん)中にアミノレプリン酸とポルホビリノーゲンが著増することで診断される。一般に、種々の対症療法が行われる。[高橋善弥太]

遅発性皮膚型ポルフィリン症

肝臓におけるヘムの代謝異常が原因とみられるが本態は不明で、中年期以降に発症する。症状の発現は徐々であり、遺伝性に現れるのはまれで、多くは後天性にみられる。アルコール摂取との関係が重要視され、いわゆる腹部・神経・精神症状はなく、皮膚の光線過敏を特徴としている。尿中および糞便中にウロポルフィリンとコプロポルフィリンが著増することで診断される。[高橋善弥太]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ポルフィリン‐しょう ‥シャウ【ポルフィリン症】

〘名〙 (porphyria訳語) 血液中のヘモグロビンの色素成分であるポルフィリンが多量に増加する病気。主に先天性の代謝異常によるもので、急性では腹部の痛み、四肢の麻痺、神経症状があり、遅発性では皮膚の光線過敏が主な症状である。

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内科学 第10版の解説

ポルフィリン症(その他の代謝異常)

定義・概念
 ヘム合成経路の8つの酵素のうち,第1番目のδ-アミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS)以外の酵素の先天異常が病因で生じる疾患の総称.最終産物であるヘムの減少,および,中間代謝物質(ALA,PBG,ポルフィリン体,など)の増加により,種々の症状(ポルフィリン症発作,光線過敏性皮膚炎,など)が生じる.
分類
 ポルフィリン症は,病因論的にはヘム合成経路の異常が肝臓で起こるか骨髄で起こるかにより肝型と骨髄型の2型に大別されるが,臨床的には急性発作(3徴:急性腹症,神経症状,精神症状)を生じる急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症(ADP),急性間欠性ポルフィリン症(AIP),遺伝性コプロポルフィリン症(HCP),多様性ポルフィリン症(VP))と光線過敏性皮膚炎を生じる皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP),晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT),肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP),プロトポルフィリン症(EPP),および,間欠期のHCPとVP)に分けられる.
原因・病因
 ヘムはおもに骨髄と肝臓で合成されている.約70~80%のヘムは骨髄の赤血球系細胞で合成され,グロビンに供給されヘモグロビンを形成する.残りのヘムはおもに肝臓で合成され,チトクロームP450などのヘム蛋白の配合族として利用される.ヘム合成経路は図13-6-1に示したように,グリシンとサクシニルCoAから始まり最終的にヘムを合成する経路であり,8種類の酵素が関与している.この経路の酵素の先天的異常によるヘム合成障害がポルフィリン症の病因で,それぞれの酵素異常に対応する病型がある(図13-6-1).最初の酵素,ALAS(サブタイプの1つ,ALAS-2)の遺伝子異常により起こるX染色体性鉄芽球性貧血(XLSA)以外の疾患をポルフィリン症と総称する.急性ポルフィリン症発作は,酵素遺伝子異常により低下しているヘム合成能力を通常状態では上回っていないヘム合成が(したがって,通常は症状はない),薬物,妊娠,飢餓,ストレスなどの誘因(ヘム需要を増加させる,あるいは,合成系の障害を強める作用)が加わってヘム合成能力を上回ると起こる.
疫学
 1980~84年にかけての全国調査ではポルフィリン症の有病率は人口10万人対0.38人とされているが,その10倍との報告もある.急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで,ついでHCP,VPと続く.ADPはきわめてまれである.皮膚ポルフィリン症ではPCTが大半であり,急性ポルフィリン症すべてを合わせたものより頻度は高いと考えられている.病態生理 急性発作を引き起こす機序として種々報告されているが,中枢神経系での,二次的ヘム欠乏によるミトコンドリア電子伝達系の障害による,灰白質の障害,および,ALA蓄積による直接的な神経毒性の2つの仮説が主要なものとしてあげられる.また,増加したヘム合成系の中間代謝産物(ウロポルフィリン(UP),コプロポルフィリン(CP),プロトポルフィリン(PP),など)は可視光線(400 nm近辺の波長)により励起され,皮膚においては光線過敏性皮膚炎を,肝などの臓器では臓器障害をもたらす.[大門 真]
■文献
大門 真:ポルフィリン症. Year note 2010 Selected Articles, pp719-729, メディックメディア,東京,2009.
厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班:ホームページ(医療関係者向け). http://www.med.kindai.ac.jp/derma/index2.html

ポルフィリン症(代謝性疾患)

病因
 ヘモグロビン,ミオグロビンカタラーゼペルオキシダーゼ,チトクロームに含まれるヘムの合成経路の障害をきたす遺伝性色素代謝異常症であり【⇨図13-6-1】,7種類の酵素欠損症が発見され,それぞれの遺伝子もクローニングされている【⇨13-6-1)】.神経症状 肝型と造血型に大別されるが,消化器症状,神経・精神症状,皮膚症状が組み合わされる.肝型は思春期前に発症することはまれである.光過敏性皮膚症状,腹痛,嘔吐,便秘などの消化症状,痙攣,意識障害,行動異常,四肢痛,感覚ニューロパチーなどの神経症状発作をきたす.造血型は乳幼児期に発症し,溶血性貧血や日光過敏症などをみるが発作性ではない.[青木継稔]

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世界大百科事典内のポルフィリン症の言及

【ポルフィリン】より

… ポルフィリンの生合成と分解の代謝過程の異常に由来する遺伝性疾患が種々知られている。その中でポルフィリンまたはその前駆体のALA,PBGなどが尿中に大量に排出される疾患をポルフィリン症porphyriaと呼ぶ。激しい腹痛,嘔吐,精神神経症状などをひき起こす場合がある。…

※「ポルフィリン症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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