ポルフィリン症(読み)ポルフィリンしょう(英語表記)porphyria

  • (皮膚の病気)
  • (脳・神経・筋の病気)
  • ポルフィリンしょう ‥シャウ
  • ポルフィリンしょう〔シヤウ〕
  • ポルフィリン症(その他の代謝異常)
  • ポルフィリン症(代謝性疾患)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

血色素の構成物質であるヘムの前駆物質のポルフィリンやその前駆物質が過剰に生産され排出される,主として遺伝性の代謝異常。病理学的には2つの型があり,1つは骨髄中でヘモグロビンがつくられるときに起るもの,もう1つは肝臓の障害による。臨床的には急性ポルフィリン症皮膚ポルフィリン症に分けられる。急性ポルフィリン症は若い女性に多発し,腹痛,神経症状を伴い,尿は赤色となる。皮膚ポルフィリン症は皮膚の光線過敏症が主症状で,直射日光を避ける必要がある。

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デジタル大辞泉の解説

赤血球に含まれるヘムを合成するために必要な酵素が欠損しているため、中間代謝物のポルフィリンが骨髄・肝臓・血液・皮膚などに蓄積し、光過敏症や精神症状を引き起こす病気。欠損する酵素の種類によって症状が異なり、主に皮膚に障害を起こす皮膚型ポルフィリン症と、腹痛などの腹部症状や手足のしびれ・麻痺などの神経症状を起こす急性ポルフィリン症に大きく分けられる。光力学的作用をもつポルフィリンが蓄積すると日光の紫外線などで皮膚が損傷を受けるため、患者は黒い頭巾や衣服で全身を覆うなどして、日光を浴びないようにする必要がある。→骨髄性プロトポルフィリン症急性間欠性ポルフィリン症

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栄養・生化学辞典の解説

 ヘムを合成する過程に障害のある疾患の一群.ポルフィリンの前駆体などが肝臓などの組織に蓄積し,また尿やへと排泄される.

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家庭医学館の解説

 ポルフィリンという物質は、12種類の酵素(ヘム合成酵素)によりつぎつぎに反応がおこり、少しずつ形が変化してヘムという物質に合成されていきます。このヘムから、赤血球(せっけっきゅう)が酵素を運搬するのに必要なヘモグロビンや肝臓で異物を解毒するのに必要なシトクロームなど、からだにとって重要な物質が形成されます。
 12のヘム合成酵素のうち、2番目から8番目の酵素のどれか1つに異常がありますと、ポルフィリンが体内に過剰に蓄積してしまいます。こうなると、尿や糞便(ふんべん)中に大量に排泄(はいせつ)されることもあり、さまざまな症状が現われてきます。これらのヘム合成酵素の異常による病気を、まとめてポルフィリン症といいます。
 ヘムは、とくに肝臓の細胞と幼若(ようじゃく)な赤血球(赤芽球(せきがきゅう))によって合成されますので、ポルフィリン症は、ヘムの合成の異常がおこるところによって、肝型(かんがた)と赤芽球型の2つに分けられます。
 肝型は、さらに晩発性皮膚(ばんぱつせいひふ)ポルフィリン症、急性間欠性(きゅうせいかんけつせい)ポルフィリン症、多様性ポルフィリン症などの6タイプに分けられます。
 赤芽球型は、赤芽球性プロトポルフィリン症、先天性赤芽球性ポルフィリン症の2タイプに分かれます。
 ほとんどは遺伝によっておこりますが、一部は薬剤や種々の病気によっておこるものもあります。非常にまれな病気です。今までに、日本で報告された患者さんは、600人ほどしかありません。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ポルフィリンまたはその前駆物質が多量に産生される疾患で、おもに先天性代謝異常による。ポルフィリン体の産生される部位によって肝性と骨髄性に大別されるが、いずれもまれな疾患で、肝性の急性間欠性ポルフィリン症と遅発性皮膚型ポルフィリン症のほかはきわめてまれである。

[高橋善弥太]

急性間欠性ポルフィリン症

常染色体性優性遺伝疾患で、家族性に発現することがきわめて多く、おもに20~30歳代に発症する。腹部の仙痛、嘔吐(おうと)、便秘をはじめ、四肢の疼痛(とうつう)や麻痺(まひ)、錯乱やヒステリー様症状などを主とした急性発作がみられるが、他のポルフィリン症とは異なり皮膚の光線過敏症状は示さない。間欠発作の誘因としては、バルビツール酸系の薬剤などをはじめ、月経、手術、アルコールなどがあげられる。尿中および糞便(ふんべん)中にアミノレプリン酸とポルホビリノーゲンが著増することで診断される。一般に、種々の対症療法が行われる。

[高橋善弥太]

遅発性皮膚型ポルフィリン症

肝臓におけるヘムの代謝異常が原因とみられるが本態は不明で、中年期以降に発症する。症状の発現は徐々であり、遺伝性に現れるのはまれで、多くは後天性にみられる。アルコール摂取との関係が重要視され、いわゆる腹部・神経・精神症状はなく、皮膚の光線過敏を特徴としている。尿中および糞便中にウロポルフィリンとコプロポルフィリンが著増することで診断される。

[高橋善弥太]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (porphyria の訳語) 血液中のヘモグロビンの色素成分であるポルフィリンが多量に増加する病気。主に先天性の代謝異常によるもので、急性では腹部の痛み、四肢の麻痺、神経症状があり、遅発性では皮膚の光線過敏が主な症状である。

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内科学 第10版の解説

定義・概念
 ヘム合成経路の8つの酵素のうち,第1番目のδ-アミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS)以外の酵素の先天異常が病因で生じる疾患の総称.最終産物であるヘムの減少,および,中間代謝物質(ALA,PBG,ポルフィリン体,など)の増加により,種々の症状(ポルフィリン症発作,光線過敏性皮膚炎,など)が生じる.
分類
 ポルフィリン症は,病因論的にはヘム合成経路の異常が肝臓で起こるか骨髄で起こるかにより肝型と骨髄型の2型に大別されるが,臨床的には急性発作(3徴:急性腹症,神経症状,精神症状)を生じる急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症(ADP),急性間欠性ポルフィリン症(AIP),遺伝性コプロポルフィリン症(HCP),多様性ポルフィリン症(VP))と光線過敏性皮膚炎を生じる皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP),晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT),肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP),プロトポルフィリン症(EPP),および,間欠期のHCPとVP)に分けられる.
原因・病因
 ヘムはおもに骨髄と肝臓で合成されている.約70~80%のヘムは骨髄の赤血球系細胞で合成され,グロビンに供給されヘモグロビンを形成する.残りのヘムはおもに肝臓で合成され,チトクロームP450などのヘム蛋白の配合族として利用される.ヘム合成経路は図13-6-1に示したように,グリシンとサクシニルCoAから始まり最終的にヘムを合成する経路であり,8種類の酵素が関与している.この経路の酵素の先天的異常によるヘム合成障害がポルフィリン症の病因で,それぞれの酵素異常に対応する病型がある(図13-6-1).最初の酵素,ALAS(サブタイプの1つ,ALAS-2)の遺伝子異常により起こるX染色体性鉄芽球性貧血(XLSA)以外の疾患をポルフィリン症と総称する.急性ポルフィリン症発作は,酵素遺伝子異常により低下しているヘム合成能力を通常状態では上回っていないヘム合成が(したがって,通常は症状はない),薬物,妊娠,飢餓,ストレスなどの誘因(ヘム需要を増加させる,あるいは,合成系の障害を強める作用)が加わってヘム合成能力を上回ると起こる.
疫学
 1980~84年にかけての全国調査ではポルフィリン症の有病率は人口10万人対0.38人とされているが,その10倍との報告もある.急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで,ついでHCP,VPと続く.ADPはきわめてまれである.皮膚ポルフィリン症ではPCTが大半であり,急性ポルフィリン症すべてを合わせたものより頻度は高いと考えられている.病態生理 急性発作を引き起こす機序として種々報告されているが,中枢神経系での,二次的ヘム欠乏によるミトコンドリア電子伝達系の障害による,灰白質の障害,および,ALA蓄積による直接的な神経毒性の2つの仮説が主要なものとしてあげられる.また,増加したヘム合成系の中間代謝産物(ウロポルフィリン(UP),コプロポルフィリン(CP),プロトポルフィリン(PP),など)は可視光線(400 nm近辺の波長)により励起され,皮膚においては光線過敏性皮膚炎を,肝などの臓器では臓器障害をもたらす.[大門 真]
■文献
大門 真:ポルフィリン症. Year note 2010 Selected Articles, pp719-729, メディックメディア,東京,2009.
厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班:ホームページ(医療関係者向け). http://www.med.kindai.ac.jp/derma/index2.html
病因
 ヘモグロビン,ミオグロビン,カタラーゼペルオキシダーゼ,チトクロームに含まれるヘムの合成経路の障害をきたす遺伝性色素代謝異常症であり【⇨図13-6-1】,7種類の酵素欠損症が発見され,それぞれの遺伝子もクローニングされている【⇨13-6-1)】.神経症状 肝型と造血型に大別されるが,消化器症状,神経・精神症状,皮膚症状が組み合わされる.肝型は思春期前に発症することはまれである.光過敏性皮膚症状,腹痛,嘔吐,便秘などの消化症状,痙攣,意識障害,行動異常,四肢痛,感覚ニューロパチーなどの神経症状発作をきたす.造血型は乳幼児期に発症し,溶血性貧血や日光過敏症などをみるが発作性ではない.[青木継稔]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

 生体内で、ヘム(鉄とポルフィリンの化合物)の70~80%は骨髄(こつずい)で合成され、ヘモグロビンなどを形成します。残りのヘムは肝臓で合成されますが、ヘムの合成経路に関係する酵素の先天異常により起こる疾患の総称がポルフィリン症です。

 臨床的には、①急性ポルフィリン症(急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす)、②皮膚ポルフィリン症(日光や打撲により水疱が生じ、それが破れると混合感染を起こす。慢性化すると皮膚が厚くなる)に分類されます。

 半数以上は①で、遺伝子異常だけでは発症せず、薬物(禁忌(きんき)薬物は数多く、使用する場合はリストでの確認が重要)、妊娠、飢餓(きが)などが誘引となります。①では、(a)四肢の急激に起こる運動麻痺、意識障害、けいれん、てんかん発作、自律神経症状などの神経症状、(b)激しい腹痛や腸閉塞を疑わせる腹部症状、(c)幻覚、妄想、ヒステリーに似た症状などの精神症状の3大症状が知られています。

 腹部症状があっても、X線検査では器質的な異常はみられません。非発作時(間欠期)は無症状で、何らこの病気としての徴候は出現しません。原因不明の3大症状(a・b・c)が次々に現れたら、まず本症を疑うことが大切です。

 ヘムを合成する経路の基質であるδ(デルタ)­アミノレブリン酸、ポルホビリノーゲンや、その代謝産物(ウロポルフィリン、コプロポルフィリン)を測定して診断を確立します。潜在者(キャリア)の診断には遺伝子診断が有用です。

 治療は、グルコースを中心とした補液とインスリンの併用が効果があるとされています。禁忌薬物を絶対使用しないことが重要です。腹痛などの痛みに対しては、クロルプロマジンが使用されます。

どんな病気か

 ヘモグロビンをつくるヘムという物質の合成経路に異常があり、ポルフィリン代謝経路の産生物質が皮膚に沈着し、その光毒性反応による日光誘発性皮膚障害を生じる疾患です。

 先天性ポルフィリン症、骨髄性(こつずいせい)プロトポルフィリン症、晩発性皮膚(ばんはつせいひふ)ポルフィリン症があります。

宇谷 厚志

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内のポルフィリン症の言及

【ポルフィリン】より

… ポルフィリンの生合成と分解の代謝過程の異常に由来する遺伝性疾患が種々知られている。その中でポルフィリンまたはその前駆体のALA,PBGなどが尿中に大量に排出される疾患をポルフィリン症porphyriaと呼ぶ。激しい腹痛,嘔吐,精神神経症状などをひき起こす場合がある。…

※「ポルフィリン症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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