皮膚ポルフィリン症

内科学 第10版 「皮膚ポルフィリン症」の解説

皮膚ポルフィリン症(ポルフィリン症)

(2)皮膚ポルフィリン症(cutaneous porphyria)
臨床症状
日光被曝を受けた露出部皮膚に紅斑水泡,さらに紫斑などの急性期皮疹を認める.急性期皮疹が消退を繰り返すうちに慢性期皮疹が加味される点が視診上重要な所見となる.皮膚症状を主体とするCEPPCT,HEPおよびEPPの4型の臨床症状および検査値の特徴を表13-6-1にまとめた.
診断
ヘム経路の基質や代謝産物を測定する.まず赤血球ポルフィリンを測定し骨髄型の有無を判断し,次に尿中ポルフィリンの増加を調べるというフローチャート(図13-6-3)に従って診断できる.
各病型の特徴(診断,検査および治療)
1)先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP)
最も早く記載されたポルフィリン症で骨髄型(赤血球UPおよびCP増加).過剰に産生されたヒドロキシメチルビランは非酵素的にI型のポルフィリンへと代謝されるので(I型ポルフィリンの蓄積),急性症状の病因と考えられているALAの蓄積を伴うことはない.生後まもなくから発症する高度な光線過敏性皮膚炎が主症状で,紅斑や浮腫にとどまらず水疱瘢痕潰瘍などに進展し,鼻,耳介の脱落手指の拘縮を呈することも多い.また,角膜混濁,赤血球の変形,溶血と著明な脾腫が起き,歯牙は太陽光線下でワイン色を呈する(赤色歯).特に有効な治療はない.対症療法(遮光,感染合併皮膚病変に抗生物質,など)が行われる.
2)晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)および肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP)
PCTは散発性のs-PCT(タイプⅠ)と家族性のf-PCT(タイプⅡ)とに分けられるが,多くの症例はs-PCTである.URODの基質であるUPgen-Ⅲが蓄積し(尿中UP過剰排泄),光線過敏性皮膚炎や肝障害をもたらす.f-PCTの発症にはアルコール,エストロゲンおよび鉄の過剰摂取などの誘因の関係が考えられている.日光被曝後,露出部に紅斑や水疱形成などが生じるが,これらに引き続く慢性期皮疹として,びまん性褐色調色素沈着,瘢痕,多毛,皮膚脆弱性などが混在する皮膚所見を呈する.また,羞明結膜炎などの眼症状,不眠症などの神経症状,筋炎,消化器症状などの合併もある.誘発因子となるアルコールをさけ,皮疹の悪化を防ぐため遮光を勧める.血清鉄濃度の減少とUPの除去を目的として瀉血療法が有用な治療法として広く行われている.また,鉄キレート剤投与も行われる.HEPはUROD遺伝子のホモ異常が病因(酵素活性は7~8%と低下)で起こるまれな疾患で,その障害は骨髄にもおよび,CEPと類似の臨床像を示す.
3)プロトポルフィリン症(EPP)
FECH活性低下のため,その基質であるPPが赤血球中に蓄積し(赤血球PP上昇)皮膚症状を引き起こす.過剰に産生されたPPは尿中に排泄されないが,胆汁中には排泄され,しばしば胆石,肝機能障害の原因となる(糞便中PP上昇).光線過敏症がおもな症状.急性期には紫斑が特徴的であり,また,色素沈着,多毛,皮膚脆弱性による線状瘢痕などの皮疹がみられる.光線過敏症の程度が非常に軽い場合もあり,また発症も小児期(5歳以下)の場合が多いが,高齢にて発症する場合もある.ときに肝機能障害,胆石の合併がみられ,中年期以降には肝硬変や肝癌の合併をみる.βカロチンは皮膚におけるラジカルを中和するとして治療に用いられる.コレスチラミン樹脂内服,ヘマチン静注,血漿交換などもときに用いられる.
4)光線過敏性皮膚炎の予防:
ポルフィリン症でみられる光線過敏性皮膚炎は,ポルフィリン体の吸収スペクトラムである405 nmをピークとしてUVA(320~400 nm)の長波長側から可視光線領域にまたがる波長の光が原因で生じる.したがって,市販のサンスクリーン剤(UVBの遮断力は強いが,UVAの遮断力は十分ではなく,可視光線の遮断はまったくできない)はあまり有効ではない.ファンデーション(塗ると皮膚が白くなるので見た目が問題),あるいは,帽子,衣類(長袖・長ズボン),手袋などによる物理的遮光が有効である.[大門 真]
■文献
大門 真:ポルフィリン症. Year note 2010 Selected Articles, pp719-729, メディックメディア,東京,2009
厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班:ホームページ(医療関係者向け). http://www.med.kindai.ac.jp/derma/index2.html

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 「皮膚ポルフィリン症」の解説

ひふぽるふぃりんしょう【皮膚ポルフィリン症 Porphyria】

[どんな病気か]
 ポルフィリン体の代謝異常(たいしゃいじょう)による病気で、いろいろなタイプがあります。程度の差はありますが、日光過敏症(にっこうかびんしょう)になるのが特徴で、陽光にさらされたところに紅斑(こうはん)、水疱(すいほう)、びらんが生じ、色素沈着、皮膚硬化がおこり、顔面が多毛になります。もっとも多い晩発性皮膚(ばんぱつせいひふ)ポルフィリン症(しょう)は、飲酒、C型肝炎ウイルス感染、薬物が原因です。
[治療]
 飲酒などの誘因を絶つことがもっともたいせつです。瀉血(しゃけつ)も有効です。皮膚症状をおこさぬため、日光に当たらないようにします。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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