マイトマイシン(その他表記)mitomycin

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改訂新版 世界大百科事典 「マイトマイシン」の意味・わかりやすい解説

マイトマイシン
mitomycin

抗腫瘍抗生物質。1956年秦藤樹らにより,東京都渋谷区の土壌から分離された放線菌Streptomyces caespitosus培養液中からマイトマイシンAおよびBが見いだされ,その後,若木重敏らによってマイトマイシンCが見いだされた。

マイトマイシンCは現在広く臨床的に制癌薬として用いられている。濃紫色の結晶で分子量334,水溶液はpH7~9で比較的安定である。強い抗菌作用を示すとともに,広スペクトルの抗腫瘍活性を示し,癌腫,肉腫,白血病,ホジキン病などに主として静脈内注射で用いられている。癌縮小の効果も強いが,副作用もあり,とくに白血球減少,血小板減少が強いため使用量が限られる。マイトマイシンCの誘導体で優れた抗腫瘍効果をもつものも開発されつつある。細胞内に入り活性化を受けてDNAグアニンに結合し,架橋切断を起こし,DNA合成を阻害することが,その作用機構である。
抗生物質
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百科事典マイペディア 「マイトマイシン」の意味・わかりやすい解説

マイトマイシン

制癌(がん)性抗生物質放線菌の一種(ストレプトミセス・カエスピトスス)が産生。A,B,C等の種類があり,特にマイトマイシンC(紫色結晶)はDNA崩壊・DNA合成阻害を作用機序とする制癌剤として各種悪性腫瘍(しゅよう)に用いられる。副作用として白血球減少などがある。(図)
→関連項目制癌薬

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイトマイシン」の意味・わかりやすい解説

マイトマイシン
mitomycin

1956年に北里研究所の秦藤樹と協和発酵工業の若木重敏らの協同研究によって,放線菌 Streptomyces caespitosusの培養液から得られた抗癌性の抗生物質。A,B,Cなどの種類があるが,Cが抗癌性,安定性の点で最もすぐれている。水溶性で青紫色の結晶。抗癌性抗生物質のうち最も広範囲に有効といわれる。核酸の生合成を阻害し,癌細胞分裂増殖を抑制するものとみられる。副作用としては,顕著な白血球や血小板減少などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のマイトマイシンの言及

【抗生物質】より

…日本では,世界にさきがけて実験動物腫瘍を用いて制癌抗生物質の探索を始め,この分野では世界の水準の先端にあるといえる。日本で発見され臨床的に用いられているものに,秦藤樹のカルチノフィリン(1954),マイトマイシン(1956),梅沢浜夫のブレオマイシン(1966),ペプロマイシン(1977),アクラシノマイシンA(商品名アクラルビシン,1977),立岡末雄のクロモマイシンA3(1955),石田名香雄のネオカルチノスタチン(1965)があり,とくにブレオマイシン,マイトマイシンは外国でもよく用いられている。外国で発見されたもので治療に用いられているものに,アクチノマイシンD,ダウノルビシン(商品名ダウノマイシン),ドキソルビシン(商品名アドリアシン)がある。…

※「マイトマイシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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