マインド・コントロール(英語表記)mind control

翻訳|mind control

最新 心理学事典「マインド・コントロール」の解説

マインド・コントロール
マインド・コントロール
mind control

一時的あるいは永続的に,個人の精神過程や行動を操作あるいは支配することをいう。心理操作psychological manipulationともいう。組織がその目的の成就のために,新メンバーの獲得や維持といった人的管理のために用いられるが,広義にはプロパガンダや詐欺的商法など個人の意思決定を欺瞞的に誘導する体系的操作を指す。歴史的にはマインド・コントロールは,監禁,拷問や薬物を用いながら個人の意思や行動を支配しようとした洗脳brainwashingから発展し,その身体的な強制の代わりに,隠ぺいや欺瞞による情報操作を用いて,個人の意思決定過程における自発性を仕組む。さらに強力な操作法では,個人のアイデンティティの根幹にかかわるビリーフ・システムbelief system(信念体系)の変容,すなわち,①自分とはいかなる存在か(自己),②完成された個人や社会の像(理想),③理想へと至る個人の歩むべき道筋(目標),④歴史や出来事の摂理・法則や世界観(因果),⑤だれをモデルとしたり指針としたりするのか(権威),といった変容を導くことで実現する。

 ビリーフ・システムの変容は,一般的に以下のようなステップが用いられる。第1段階:依存性高揚 勧誘者はターゲット(対象となる個人あるいはメンバー)に,解決困難な人生の課題にコミットさせて,不安や恐怖を煽り,依存心を高める。第2段階:魅力付与 その課題を自集団の思想によって一見解決できるように見せて思想や組織への魅力を感じさせる。第3段階:現実性付与 その後,与えた思想に対する整合した論理や実体験,また権威性や合意性の高い情報を巧妙に見せかけて現実感を追加する。第4段階:コミットメント またその後,ターゲットに対して,営んできた従来の生活スタイルの放棄や多額の財産献上といった受容しがたい行動を実行させることで強い認知的不協和を経験させて,組織やリーダーへの態度を変えさせる。第5段階:システム化 最後の段階では,ターゲットの心理を,恐怖感や無力感や切迫感で支配し,全行動においてカリスマ的リーダーへの絶対服従や自己同一化を義務づける。つまり,古いビリーフ・システムによる意思決定は誤った判断とされ,是認された新システムを用いて意思決定しつづけていくと,旧システムは徐々に機能しなくなる。ターゲットは,徹底した従順さで身体的・心理的に過多な集団活動に奉仕させられたり,睡眠,食事,愛着などの基本的欲求の充足に対する自己否定を義務化させられたりする。それによって生理的なストレスが高まって変性意識状態altered state of consciousnessに誘導され,ターゲットの自動的な服従がさらに促進される。

 なお効果性は,個々の影響力の組み合わせ方に依存するが,強力に持続的に行使することで,ターゲットを詐欺,自殺,虐待,殺人やテロリズムなどの反社会的行為に無批判的に従事させてしまうこともある。

 一方,マインド・コントロール状態から離れるには,崇拝していたリーダーやその組織の活動を再評価して全面的に否定する必要がある。離脱するメンバーは,その動機づけを堅固に築き,与えられていたビリーフ・システムには決定的な矛盾があることを深く理解し,そのうえで,個人の旧システムにアクセスし,再機能させなくてはならない。この再機能は,マインド・コントロールが強くまた長期にわたるほど,一般に大きな困難を伴う。つまり社会的再適応には,再びアイデンティティを大きく変容しなくてはならないので,思考,情緒,対人関係においてさまざまな心理的苦悩を伴うことが多いといえよう。また離脱後も,その苦悩が長期に及ぶことがある。 →催眠 →社会的影響
〔西田 公昭〕

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知恵蔵「マインド・コントロール」の解説

マインド・コントロール

洗脳という言葉は、1950年代、朝鮮戦争中に米国人捕虜たちが共産主義者から受けたとされる尋問や教化の方法を指して、米国のジャーナリスト、エドワード・ハンターが作った言葉。「脳を洗う」という意味にとれる中国語から英語に直訳し、ブレイン・ウオッシングとした。洗脳は、長時間にわたる身体的拘束や拷問、薬物の投与などにより、個人の精神構造(信念やアイデンティティー)を強制的に変えるものである。これに対してマインド・コントロールは、物理的・身体的に強制的な方法を用いずに、本人にもまた周囲の人々にも、それとは気づかれないうちに個人の精神構造に影響力を及ぼすような、洗練された社会心理学的テクニックである。しかし、マインド・コントロールという言葉は心理学の用語としては認められておらず、カルトが暗黙のうちに使っているテクニックをそう呼ぶようになった。日本では90年代半ばから一般に普及し、様々な場面で拡大解釈されて使われるようになった。そこで、個人の自主性を著しく阻害し、心身の不調、人間関係の崩壊や犯罪行為への加担など、本人が望まないような結果を生じさせる心理的操作として、マインド・コントロールを限定的にとらえていく必要がある。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア「マインド・コントロール」の解説

マインド・コントロール

巧みな情報操作によって,行動・思想・感情に全人的な変化を,自然にかつ強固に一定の方向に導くこと。1995年頃明るみに出たオウム真理教事件以来,話題になった。同様の操作は,〈自己開発セミナー〉と称する教育事業や軍隊,あるいは極端で大がかりな商業主義活動にも見ることができる。→洗脳

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