最新 心理学事典 「マインド・コントロール」の解説
マインド・コントロール
マインド・コントロール
mind control
ビリーフ・システムの変容は,一般的に以下のようなステップが用いられる。第1段階:依存性高揚 勧誘者はターゲット(対象となる個人あるいはメンバー)に,解決困難な人生の課題にコミットさせて,不安や恐怖を煽り,依存心を高める。第2段階:魅力付与 その課題を自集団の思想によって一見解決できるように見せて思想や組織への魅力を感じさせる。第3段階:現実性付与 その後,与えた思想に対する整合した論理や実体験,また権威性や合意性の高い情報を巧妙に見せかけて現実感を追加する。第4段階:コミットメント またその後,ターゲットに対して,営んできた従来の生活スタイルの放棄や多額の財産献上といった受容しがたい行動を実行させることで強い認知的不協和を経験させて,組織やリーダーへの態度を変えさせる。第5段階:システム化 最後の段階では,ターゲットの心理を,恐怖感や無力感や切迫感で支配し,全行動においてカリスマ的リーダーへの絶対服従や自己同一化を義務づける。つまり,古いビリーフ・システムによる意思決定は誤った判断とされ,是認された新システムを用いて意思決定しつづけていくと,旧システムは徐々に機能しなくなる。ターゲットは,徹底した従順さで身体的・心理的に過多な集団活動に奉仕させられたり,睡眠,食事,愛着などの基本的欲求の充足に対する自己否定を義務化させられたりする。それによって生理的なストレスが高まって変性意識状態altered state of consciousnessに誘導され,ターゲットの自動的な服従がさらに促進される。
なお効果性は,個々の影響力の組み合わせ方に依存するが,強力に持続的に行使することで,ターゲットを詐欺,自殺,虐待,殺人やテロリズムなどの反社会的行為に無批判的に従事させてしまうこともある。
一方,マインド・コントロール状態から離れるには,崇拝していたリーダーやその組織の活動を再評価して全面的に否定する必要がある。離脱するメンバーは,その動機づけを堅固に築き,与えられていたビリーフ・システムには決定的な矛盾があることを深く理解し,そのうえで,個人の旧システムにアクセスし,再機能させなくてはならない。この再機能は,マインド・コントロールが強くまた長期にわたるほど,一般に大きな困難を伴う。つまり社会的再適応には,再びアイデンティティを大きく変容しなくてはならないので,思考,情緒,対人関係においてさまざまな心理的苦悩を伴うことが多いといえよう。また離脱後も,その苦悩が長期に及ぶことがある。 →催眠 →社会的影響
〔西田 公昭〕
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