ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マトゥーテ」の意味・わかりやすい解説
マトゥーテ
Matute, Ana María
[没]2014.6.25. バルセロナ
スペインの作家。幼少時に病弱だったことや,1936~39年のスペイン内乱などのため,満足な教育を受けたとはいえない。10代で短編小説集を出版し,プロの音楽家になった。作家として,神話やおとぎ話,超自然現象,ファンタジーなどの要素を織り込みながら,人生の通過儀礼,若者特有の裏切りや孤立感を追求した。また,聖書を暗示させる引用を多用し,スペイン内乱による家族分裂の象徴として,しばしばカインとアベルの物語を流用した。第一作の "Los Abel"(1948)に続いて,『小劇場』Pequeño teatro(1954,プラネタ賞)などを執筆。1958年に発表した『死んだ子供たち』Los hijos muertosが国民文学賞を受賞。その後,スペイン内乱によって大人の世界に追い立てられていく子供たちを描いた "Primera memoria"(1959),戦争小説 "Los soldados lloran de noche"(1964),"La trampa"(1969)からなる三部作を発表した。1996年に出版された "Olvidado Rey Gudú"は,架空の中世の王国を舞台に,4世代にわたって繰り広げられる壮大な寓話からなる民話的叙事詩。短編集や児童向け作品も発表した。1959年ナダル賞,2010年セルバンテス賞を受賞。(→スペイン文学)
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