マルシャーク(読み)まるしゃーく(その他表記)Самуил Яковлевич Маршак/Samuil Yakovlevich Marshak

精選版 日本国語大辞典 「マルシャーク」の意味・読み・例文・類語

マルシャーク

  1. ( Samuil Jakovljevič Maršak サムイル=ヤコブレビチ━ ) ソ連詩人。スラブ民話を素材としてすぐれた児童文学を書いた。「森は生きている」「子供たちのための詩」など。(一八八七‐一九六四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルシャーク」の意味・わかりやすい解説

マルシャーク
まるしゃーく
Самуил Яковлевич Маршак/Samuil Yakovlevich Marshak
(1887―1964)

ロシアの詩人、劇作家。ソビエト児童文学の創始者の一人。11月3日、ボロネジ市のせっけん工場勤めの化学技術者の家庭に生まれる。年少のころから詩作才能を示し、1902年15歳のとき、文芸評論家スターソフVladimir Vasil'evich Stasov(1824―1906)に認められ、息子のように愛され、レーピン、リムスキー・コルサコフシャリアピンなどペテルブルグの一流の芸術家の知遇を得た。のちゴーリキーに招かれてヤルタの中学に学ぶ。その少年期については自伝『人生のはじめ』(1960)に詳しい。12~14年イギリスに留学。第一次世界大戦中は、避難児童施設に働き、十月革命(1917)後、児童文学に全力を傾けて取り組み、ゴーリキー、チュコフスキーらと新しいソビエトの児童文学をつくり、若い作家を育成した。

 その詩は、けれんみのない美しいことばと、磨きぬかれた文体をもち、暖かくしかも知的で、説得力に富む。詩は『おりの中のこどもたち』(1923)、『郵便』(1925)、『ミスター・トウィスター』(1933)など多数。また児童劇『森は生きている』(原題『十二月(じゅうにつき)』1943)はソビエト児童劇の代表作で、ほかに『魔法の品売ります』(1964)などがある。また一方シェークスピアバイロン、キーツ、ブレイク、ハイネらの翻訳者としても高い評価を受けている。4回ソ連邦国家賞を受け、1963年レーニン賞も受賞。64年7月4日没。

[内田莉莎子]

『村山士郎・北畑静子訳『人生のはじめ』(1968・理論社)』『内田莉莎子訳『しずかなおはなし』(1963・福音館書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「マルシャーク」の意味・わかりやすい解説

マルシャーク
Samuil Yakovlevich Marshak
生没年:1887-1964

ソ連邦の詩人,劇作家。ソ連児童文学の創始者の一人。イギリス詩の翻訳家としても著名。ボロネジ市のセッケン工場技術者の家の生れ。少年時代に詩の才能をゴーリキーに認められ,影響を受ける。1907年から雑誌に詩を発表。12年から14年までロンドン大学に留学。第1次世界大戦中,戦災孤児の救援活動を行う。20年施設〈子どもの町〉を創設し,その劇場のために児童劇を書く。以後,本格的に児童文学と取り組み,最初の詩集《おりの中の子どもたち》(1923)をはじめ,簡潔で温かみのある表現,洗練された文体の詩や戯曲を次々と発表。また,多数の若い児童文学作家を育てる。児童劇《12の月》(1943。邦訳《森は生きている》)や《しずかなおはなし》(1956)などの詩,自伝《人生のはじめ》(1960)など多くの作品が日本でも親しまれている。1942年,46年,49年,51年にソ連邦国家賞を,63年にレーニン賞を受賞した。作家M.イリインの兄である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マルシャーク」の意味・わかりやすい解説

マルシャーク
Marshak, Samuil Yakovlevich

[生]1887.11.3. ボロネジ
[没]1964.7.4. モスクワ
ソ連の詩人。 1907年頃から詩作の発表を始め,その後ロンドン大学に留学。ワーズワス,シェークスピア,バイロンなどの翻訳と研究にも大きな業績がある。 20年代初めから児童文学の分野でめざましい活躍を始め,児童向けの作品を集大成した代表作『お話,歌,謎々』 Skazki,pesni,zagadkiや,児童劇『森は生きている』 (原題『12ヵ月』) Dvenadtsat' mesyatsev (1943) は広く海外にまで知られている。

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百科事典マイペディア 「マルシャーク」の意味・わかりやすい解説

マルシャーク

ロシア(ソ連)の詩人。ロシアのボロネジ生れ。ソビエト児童文学の創始者の一人。M.イリインの兄。下級技師の家に生まれ,ペテルブルグ,ロンドンに学び,革命後,児童・教育問題への関心を深めた。子どものために明快で豊かな詩を多く作り,また民話風な戯曲《森は生きている》等を発表。シェークスピア,ハイネなどの翻訳もある。

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世界大百科事典(旧版)内のマルシャークの言及

【児童文学】より

…F.K.ソログープは暗い影の多い不思議な小説を作り,L.N.トルストイはおおらかな民話と小品を発表した。革命後の新しい児童文学の父はM.ゴーリキーであったが,彼はとくに子どものものを書かずに,V.V.マヤコーフスキーやS.Ya.マルシャークやK.I.チュコフスキーにその実りをゆずった。そのうちでマルシャークは第一人者として,《12の月(森は生きている)》(1943)のような劇やたくさんの童謡を発表している。…

※「マルシャーク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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